2022年度のふるさと納税は、苦戦の続く大都市で二極化が鮮明になりそうです。
「日経グローカル」が実施した全国815市区予算調査で寄付受け入れ額の見込みを聞いたところ、全体では前年度比で21%増えることが分かりました。
京都市は47%増の92億円と過去最高となり、ふるさと納税による流出額を初めて上回りました。
一方で川崎市など流出が拡大した自治体も目立ち、制度への不満が高まっています。
詳しく解説していきます。
ふるさと納税額は年々増加している
全国の寄付額は2021年度まで2年連続で過去最高で、2022年度も更新する可能性が高いです。
寄付が拡大する背景に、は制度の普及のほか、各自治体の返礼品拡充が大きいです。
見込み額が最も多いのは北海道紋別市の200億円でした。
ホタテなどの海産物をそろえ、2021年度に最多だった受け入れ額をさらに31%増やしました。
2位は北海道根室市の180億円、3位は宮崎県都城市の177億円でした。
大都市は寄付獲得に本腰を入れ始めている
ふるさと納税は寄付額に応じて居住自治体に納められる住民税を控除する仕組みがあります。
制度利用者が多く税収流出に悩まされてきた政令市や東京23区といった大都市は、寄付獲得に本腰を入れ始めています。
成果が最も出ているのが京都市です。
2019年度に拡充を始めた返礼品は2022年末には約2800品目となり、市内料亭のおせちや旅行クーポンが人気を集めています。
2022年度の受け入れ額は同時期の寄付実績を基にした控除額見込み(82億円、23年度当初予算ベース)を上回り、ふるさと納税が普及し始めた2015年度以降で初めて「流入超過」となりました。
名古屋市も2021年秋から返礼品の強化に取り組み、受け入れ額は62億円と2.9倍になりました。
これまで大都市の多くは制度に批判的だった
これまで大都市の多くは「受益者負担の税の原則をゆがめている」などと制度に批判的でした。
税収流出が止まらず、2019年の地方税法改正で返礼品が地場産品に限定されたことで「返礼品を通じて市内事業者を支援する」と、積極姿勢に転じ始めています。
赤字が拡大する大都市もある
赤字が拡大する大都市もあります。
工場の夜景ツアーなど返礼品強化に取り組む川崎市の受け入れ額は8.3億円で前年度比10%減りました。
控除額は124億円と2割増え、受け入れ額から控除額を差し引いた赤字は拡大する見通しです。
横浜市も控除額が269億円と2割増えました。
有効回答があった政令市・東京23区のうち、88%の市区で受け入れ額見込みが増えた一方、86%で赤字が拡大しました。
「ブランドが強い京都など寄付を多く集められる都市は限られる」との意見も出ています。
税収流出で行政サービスに影響が出る恐れ
川崎市などは税収流出で「行政サービスに影響が出る恐れがある」と問題提起しています。
担当者は「ふるさとに貢献するという制度の理想と現実が違いすぎる」と返礼品競争に不満の声が挙げています。
紋別市はふるさと納税で得た財源のうち60億円以上を2023年度の事業に充てます。
一般会計歳出の16%ほどにもなります。
自治体や返礼品事業者にとって制度の存在感は年々高まっています。
ふるさと納税の弊害への対応も求められます。