財務省は長期金利がこれまでの想定より1%上がった場合、2033年度の国債の利払い費がさらに8.7兆円増えるとの試算を発表しました。
日銀がマイナス金利政策を解除し、長期的に金利には上昇圧力がかかることになります。
税収の増加も見込まれていますが、金利のある世界を前に予算の膨張を防ぐ取り組みが求められます。
詳しく解説していきます。
2024年度の利払い費は9.6兆円
財務相の諮問機関の財政制度等審議会が4日に分科会を開き、財務省が新たな試算を提示しました。
同省は政府の2024年度予算をもとにこの先3年の収入と支出の状況を示す試算をすでに公表しており、今回はその試算より金利が跳ね上がった場合を想定した試算しました。
国債費については元本の返済とともに、利息の支払い分を毎年度の予算に計上しています。
2024年度は予算総額112.5兆円に対し、利払い費は9.6兆円でした。
想定している金利は1.9%です。
金利は足元で0.7%台で推移しており、高めの設定となっています。
2033年度の利払い費は24.8兆円の予測
財務省のもともとの試算では金利の想定を2025年度に2.1%、26年度に2.3%、27年度に2.4%としていました。
2033年度の利払いにあてる金額は事務経費などを含めて24.8兆円と予測しています。
新たな試算はこの想定より金利が1%上振れすれば、追加で8.7兆円が必要になることを示しています。
8.7兆円という額は2024年度予算の主要な支出項目と比べると、防衛費の7.9兆円や公共事業費の6兆円を上回る規模です。
利上げ局面がくれば金利は上昇する
日銀の金融緩和によって金利はこれまで低く抑えられていました。
マイナス金利政策を解除しても、国債の買い入れをこれまでとおおむね同程度の金額で続ける方針を示しており、今のところは金利の上昇が抑えられています。
ただ、利上げ局面に移れば、長期金利への上昇圧力は高まります。
金利ある世界に戻ったとしても、利払いのための費用が一気に膨らむわけではないとみられています。
金利が上がっても、償還期限が到来した一定程度の金利がある国債との置き換えを進めるためです。
歳入不足はいったん減少する予測
財務省の新たな試算は名目の経済成長率を3%と高めに設定しており、税収の増加も見込んでいます。
財務省の過去の試算では、政府予算の支出総額から税収と臨時収入を差し引いた「歳入不足」が2024年度の35.4兆円から2025年度の32.4兆円にいったん減少すると予測しています。
その後は2027年度にかけて34.8兆円まで増える想定となっています。
金利のある世界では財政再建がより重要になる
高齢化や技術の高度化で医療・介護などにかかる社会保障費は大きく膨らむことが予想されています。
自然災害や戦乱により、想定以上の支出になる可能性もあります。
金利上昇による利払い費の上振れも加われば、政府の予算はより自由度が失われてしまいます。
歳入不足が高水準で続けば、国債発行という借金をしながら借金を返していく悪循環を温存することになり、債務の膨張に歯止めがかからなくなります。
財政再建はこれまでのような金利がない世界でも遅れていました。
これからは再建により注力するべきでしょう。