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日本の配当収益50兆円 GDP比1割に迫る

日本の配当収益50兆円 GDP比1割に迫る

日本経済が海外で稼ぐお金が拡大しています。

配当や利子などの収益額は7~9月期に年換算で50兆円を超えました。

過去10年間で2.8倍に膨らみ、国内総生産(GDP)比で1割に迫ります。

これまで企業が世界で進めてきた、M&A(合併・買収)などの成果が表れています。


しかし、こうした所得の一部は現地子会社にとどまっています。

国内への還流や家計への分配が進まなければ内需が細り、成長力の底上げにつながらない懸念があります。


詳しく解説していきます。


動画でも解説しています



海外での事業拡大に力を入れる日本企業

海外での事業拡大に力を入れる日本企業

セブン&アイ・ホールディングスの2023年2月期の営業利益の約半分は、海外コンビニ事業が占める見通しです。

2021年に買収した米コンビニのスピードウェイなどが業績を押し上げました。


人口減少などによる国内市場の縮小に対応するため、日本企業はこの20年、海外の拠点と顧客を同時に手に入れるM&Aを活用してきました。

欧州などでM&Aを重ねるアサヒグループホールディングスのように、既に成長の軸足を国外に置く企業は少なくありません。

リクルートホールディングスは米求人検索サイト「インディード」の貢献で2022年4~9月期の純利益が過去最高となりました。


日本経済は国外での投資収益が大きい

日本経済は国外での投資収益が大きい

こうした流れは日本経済全体の統計から見ても明らかです。

国内での生産を積み上げた実質GDPは7~9月期に年換算で546.8兆円でした。

これに海外とのお金のやり取りを加味した国民総所得(GNI)は561.2兆円になります。

資源高や円安によって所得流出が起こっていますが、それを補ってあまりあるほど国外での投資収益が大きいです。

対外純資産は31年連続で世界最大

対外純資産は31年連続で世界最大

財務省・日銀によると日本の対外投資の資産は2021年末に1249.9兆円です。

このうち海外企業への出資など直接投資は228.8兆円と10年間で約3倍に増えました。

負債を差し引いた対外純資産は411.2兆円で31年連続で世界最大です。


第1次所得収支、2021年は26.6兆円の黒字

第1次所得収支、2021年は26.6兆円の黒字

GDP統計のもとになる国際収支統計で、配当や利子などの受け取りと支払いをまとめた第1次所得収支をみると、2021年は26.6兆円の黒字です。

国際通貨基金(IMF)によると日本の黒字額は2020年、2021年と続けて世界最大でした。


こうした状況に懸念がないわけではありません。

海外からの対内投資が少ないために、支払いが少なく済んでいる事情もあるのです。


投資先の成長が鈍れば黒字額が伸び悩む

投資先の成長が鈍れば黒字額が伸び悩む

日本の状況と対照的なのが、第1次所得収支の赤字が続く英国です。

対内投資が増えて海外への支払いが多くなり、投資先だった欧州の成長低迷で受け取りが減りました。


日本も投資先のアジアや米国の成長が鈍れば黒字額が伸び悩む懸念あります。


海外で生まれた富を国内に還流できていない

海外で生まれた富を国内に還流できていない

海外から受け取ったお金は、必ずしも国内に還流していない問題もあります。

2021年の受取額38.0兆円のうち20.8兆円は直接投資分です。

そのうち配当金などとして日本に回っているのは9.1兆円です。

つまり、11兆円あまりは海外子会社の内部留保になっているのです。


海外を含む連結ベースの企業業績の改善は株高や株主還元の拡大につながります。

その恩恵を家計に取り込む体制がまだ十分ではありません。

日銀によると3月末時点で家計の金融資産のうち株や投資信託の割合は14.7%で米国(52.4%)やユーロ圏(29.9%)を下回っています。


一つの解決策は「貯蓄から投資」の促進です。

政府・与党が決めた少額投資非課税制度(NISA)の大幅な拡充はポジティブな影響を与えるかもしれません。


まとめ

まとめ

日本経済が海外で稼ぐお金が拡大しています。

配当や利子などの収益額は7~9月期に年換算で50兆円を超えました。

これまで企業が世界で進めてきた、M&A(合併・買収)などの成果が表れています。


財務省・日銀によると日本の対外投資の資産は2021年末に1249.9兆円です。

このうち海外企業への出資など直接投資は228.8兆円と10年間で約3倍に増えました。


GDP統計のもとになる国際収支統計で、配当や利子などの受け取りと支払いをまとめた第1次所得収支をみると、2021年は26.6兆円の黒字です。


海外事業で順調に資産を増やしていますが、企業が世界で稼ぐだけでは国内で良質な雇用が生まれにくくなる懸念は残ります。

海外で獲得した新技術を国内産業の強化に活用するよう促すことも経済政策の課題になります。



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