全国で道路や橋などのインフラの老朽化がとまりません。
9人が亡くなった2012年の中央自動車道のトンネル崩落事故から9年が経ちます。
総点検して修繕・更新を進めるはずが、予算や人手の不足で対応は後手に回っています。
トンネルの約4割は早急に手当てしないと危険な状態のままです。
人口減も見据えて優先順位をつけ、ばらまきを排した投資を急ぐ必要があります。
センサーやドローンなど新技術を活用した保守点検の効率化もカギになります。
全国で道路や橋などのインフラの老朽化がとまらない
羽田空港と都心を結ぶ首都高速道路の1号羽田線は、1964年の東京五輪にあわせて整備されてから半世紀以上たち、海水による腐食も進んでいます。
首都高会社は1627億円を投じ、品川区内の約1・9キロの区間を2028年度までにつくり直します。
首都高は開通から50年以上の路線の割合が40年に65%と20年の約3倍に増えています。
1日100万台の交通量を支える東京の屋台骨がきしむ声が聞こえます。
21年末に設置した対策会議で前田信弘社長は「道路機能を維持するには適切な管理と大規模更新・修繕を繰り返す必要がある」と強調しました。
インフラの寿命は50年とされる
インフラは建設後50年が寿命とされています。
国土交通省によると、全国の道路橋は33年に全体の63%、水門など河川管理施設は62%、トンネルは42%がその目安に達っしています。
インフラが劣化するスピードに修繕が追いついていない
実際に損傷も目立ちます。
16~20年度の目視点検では早期に修繕などが必要との判定がトンネル全体の36%に上りました。
橋梁は9%、標識や照明など道路付属物は14%でした。
東洋大の根本祐二教授は「施設が劣化するスピードに修繕が追いついていない。インフラメンテナンスが崩壊する可能性がある」と警鐘を鳴らします。
とりわけ心配なのが自治体です。
総点検で対応が必要とされた橋梁のうち国の管理分は20年度末までに6割が修繕に着手しました。
市区町村分は3割どまっています。
中国地方の自治体の担当者は「次々に補修が必要な施設が出てくるのに予算も人手も足りない」と嘆いています。
インフラの修繕費、30年間の総額は約280兆円
国交省によると20年度の橋梁点検でドローンなどを使った自治体は20%にとどまります。
劣化を自動検知する無線センサーなど作業を効率化できる新技術の普及は今後の課題です。
後手に回ればツケが膨らみます。
不具合が生じてから手当てする従来型の対応だと国・地方の費用は30年後に年約12・3兆円と18年度(約5・2兆円)の倍以上になります。
30年間の総額は約280兆円と国内総生産(GDP)の半分に匹敵します。
損傷が深刻になる前に修繕する「予防保全」を徹底すれば費用を3割ほどは削れる見込みです。
岸田文雄首相は2022年1月20日の衆院本会議で「予防保全型の投資が中長期的に費用負担を抑制する効果も踏まえ、効率的な防災・減災のあり方を検討する」と述べました。
日本はインフラの修繕に財源を充てる余裕はない
政政府が20年末にまとめた対策は5年間で約15兆円を投じる計画です。
より長期の視点で財源をどう確保し、やりくりするかも問われます。
近年の公共投資は国際的には見劣りしています。
19年の投資額を1996年比でみると約4割減と主要7カ国(G7)で唯一落ち込んでいます。
この間に英国は4倍、米国は2・3倍に伸びました。
超高齢化で社会保障費が膨らむ日本は公共事業費をいたずらに積み増す余裕はありません。
まず予算の配分や執行の無駄をなくす必要があります。
財務省によると公共事業の契約率は14~18年度に87%、予算の支出率は70%。20年度の繰越額は4・7兆円に上ります。
財源を適切に使い切れていません。
今後のインフラ対策
東洋大の根本教授は「すべてのインフラを同じように更新するのは限界がある」と指摘しています。
地域の実情に応じてコンパクトシティーの取り組みで必要なインフラを絞り込むなど「賢く縮む」戦略も試されています。
まとめ
全国で道路や橋などのインフラの老朽化がとまりません。
総点検して修繕・更新を進めるはずが、予算や人手の不足で対応は後手に回っています。
インフラは建設後50年が寿命とされています。
国土交通省によると、全国の道路橋は33年に全体の63%、水門など河川管理施設は62%、トンネルは42%がその目安に達っしています。
不具合が生じてから手当てする従来型の対応だと国・地方の費用は30年後に年約12・3兆円と18年度(約5・2兆円)の倍以上になります。
超高齢化で社会保障費が膨らむ日本は公共事業費をいたずらに積み増す余裕はありません。
まず予算の配分や執行の無駄をなくす必要があります。
国土交通省(外部サイト)