中国主導で建設が進むインドネシアの高速鉄道が新たな難題に直面しています。
2024年の首都移転に伴う利用客の減少で黒字化が従来想定よりもかなり遠のくという見通しが浮上したためです。
高速鉄道、首都移転というジョコ大統領の2つの肝煎り事業が競合し、同年の退任に向けたレガシー(政治的遺産)づくりに計算違いが生じてきました。
インドネシアの高速鉄道、利益が出るまでに40年
「損益分岐点に達するまで40年ほどかかると見込まれている」。事業主体のコンソーシアム、インドネシア中国高速鉄道社のリヤディ社長は2月上旬、首都ジャカルタと西ジャワ州の中心都市バンドンの間の142キロメートルを走る高速鉄道計画に関する国会証言で語りました。
17年の事業化調査では、開業から26年で損益分岐点に至るという試算でした。
リヤディ氏は、複数の新たな要因が影響したと説明。注目を集めたのは24年に計画される東カリマンタン州の新都市「ヌサンタラ」への首都移転です。
これに新型コロナウイルスによる打撃なども勘案して需要予測が調整され、黒字化までの期間が延びたと同氏は説明しました。
高速鉄道の利用者は当初予想していた約半数
従来は1日あたりの乗客数を6万1000人と想定していたが、新たな試算ではほぼ半数の3万1000人に減らしました。
リヤディ氏によると、高速鉄道の建設は8割が完了し、23年6月の運行開始を目指しています。
24年に首都移転が実現すれば、数年間で約150万人の公務員がヌサンタラに移住すると予想されています。
家族らも含めれば、さらに多くの人たちがジャカルタから離れるとみられています。
日本と中国で争ったインドネシアの高速鉄道
高速鉄道計画を巡っては当初、日本の政府開発援助(ODA)による新幹線方式の提案が有力視されていました。
しかし、インドネシアは15年、パートナーに中国を選びました。
中国の高速鉄道技術を使い、いまは在来線で3時間半かかるジャカルタ―バンドン間を45分に大きく短縮する計画です。
契約時には建設が18年までに終わるはずでしたが、土地取得を巡る権利、環境、新型コロナの感染拡大などのトラブルが相次ぎ、大幅に遅れています。
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コスト超過も深刻です。
インドネシア政府は当初、総工費を55億ドル(約6300億円)と見積もっていましたが、21年1月の段階では60億7000万ドルに膨らむと試算。
その後、KCICが改めて精査し、79億7000万ドルに達する可能性があるとわかりました。
インドネシアの公的資金を投入することに
中国側は契約時、インドネシア政府に資金面の保証を求めないと説明していました。
しかし、ジョコ氏は21年、高速鉄道計画に公的資金の投入を承認する大統領令に署名しました。
まとめ
インドネシア中国高速鉄道社のリヤディ社長は2022年2月上旬に、「損益分岐点に達するまで40年ほどかかると見込まれている」と語りました。
17年の事業化調査では、開業から26年で損益分岐点に至るという試算でした。
東カリマンタン州の新都市「ヌサンタラ」への首都移転と新型コロナウイルスによる打撃なども勘案して需要予測が調整され、黒字化までの期間が延びたと同氏は説明しました。
従来は1日あたりの乗客数を6万1000人と想定していたが、新たな試算ではほぼ半数の3万1000人に減らしました。
バンドン工科大のハルン・アル・ラシッド・ルビス教授は、高速鉄道が開業後に十分な顧客を確保するため、首都移転後はジャカルタ―バンドン間の有料道路の交通量を規制してはどうかと提案する。「そうすればバンドンへ行く人は高速鉄道の利用を検討するようになり、自動車の通行による有料道路へのダメージを緩和できる」といっています。
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