金融機関が老後の資産形成を後押しする個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)に力を入れています。
りそな銀行は4月から管理手数料を無料にした新プランを始めます。
みずほ銀行は無料にする条件を下げて対象を広げました。
政府はイデコを貯蓄から投資の柱に据え、制度拡充や手続きの簡素化をする予定です。
イデコ加入者は2022年11月の単月で見ると前年比4割増の勢いで伸びており、戦略上の重要性は高まっています。
iDeCoの手数料無料化が相次ぐ
りそな銀行は運営管理手数料をなくした新プラン
イデコを軸に家計との金融取引を深めようと、りそな銀行は運営管理手数料をなくした新プランを始めます。
イデコ加入者はどの金融機関を選んでも国民年金基金連合会などに支払う手数料が一律でかかるほか、銀行に毎月数百円の運営管理手数料を支払います。
これまでは無料期間を当初2年としていましたが、無期限になります。
運用商品のラインアップも見直し、ESG(環境・社会・企業統治)商品を追加します。
りそな銀行の担当者は「制度の仕組みがわからずネットだけでは不安な人に対面の支援ができるのも銀行の強み」と話しています。
みずほ銀行は運営管理手数料の無料範囲を広げる
みずほ銀行も2022年10月、運営管理手数料の無料範囲を広げました。
従来は残高50万円以上、または、掛金が毎月1万円以上等の条件を満たすことで運営管理機関手数料を無料にしていましたが、掛け金にかかわらず無料にしました。
三井住友銀行は管理手数料が無料
三井住友銀行は2019年から運営管理手数料が無料で、加入者数に応じて寄付をするコースを用意しています。
イデコだけでみると銀行収益は減るものの、取引機会を増やす利点を狙っています。
将来受け取る年金を原資に別の金融商品を買ってもらえれば顧客の囲い込みにつながるとみています。
2024年12月から、iDeCoの加入手続きが簡素化
政府も段階的にイデコの加入を後押ししています。
2022年10月には企業型確定拠出年金(DC)との併用がしやすくなり、企業年金利用者の加入が増えた。
2024年12月から加入手続きも簡素化されます。
現行の制度では書面でのやり取りが多く煩雑な作業がイデコ普及の妨げになっています。
加入時や転職時に必要な事業主証明書が廃止されます。
これまで企業年金の加入状況を確認するために勤務先が発行して加入者経由で国基連に提出する必要があり、事務負担が大きかったです。
元本確保型商品ではインフレ負けする
イデコは加入者が自ら運用商品を選んで運用することになります。
商品の中には、預貯金などの元本確保型商品の割合が一定程度あり、2022年3月時点でその割合は38%もあります。
前年同月比で6ポイント下がっているもののシェアは大きい。
物価上昇の中でほとんど金利のつかない預貯金で運用していては、年金資産はインフレ負けしかねません。
イデコを通した資産形成を本格化していくには運用商品の預貯金からの移行を促していく必要があります。
米国の確定拠出年金は98万円まで拠出できる
イデコの手本になった米国の確定拠出年金(401k)は、50歳以上の加入者に年7500ドル(約98万円)まで追加の掛け金の拠出を認めるキャッチアップ制度があります。
ミドル世代になって掛け金を多く払う余裕ができた人らの需要に対応するためです。
イデコをより身近で使いやすくしていくには、世代によって異なる家計収支にも配慮した制度設計が求められます。
2024年、拠出限度額や受給開始年齢の上限引き上げ
政府はイデコを資産所得倍増プランの柱のひとつに掲げ、2024年の公的年金の財政検証を踏まえて制度を拡充する予定です。
65歳未満としている加入可能な年齢を70歳未満に引き上げ、拠出限度額や受給開始年齢の上限引き上げも検討しています。
イデコ加入者は273万人と年間で見ると2割増えました。
直近の2022年11月は5万人の新規加入があり、前年同月比で4割弱増えました。
増加の要因は、2022年10月の制度改正で企業年金の利用者は年金規約を変更せずにイデコに加入できるようになったことです。
9月までは横ばいでした。