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水道代が各地で値上げ 30年後に販売単価が3倍

水道代が各地で値上げ 30年後に販売単価が3倍

水道の値上げ実施や検討が相次いでいます。

人口減に伴う料金収入の減少と老朽施設の改修費用増加で財務状況が悪化しています。

現状の経営が続いた場合、30年後に利用者への販売単価が3倍になると試算した地域もあります。

抜本的な経営改善には値上げ以外の効率化や改善策も欠かせなさそうです。


詳しく解説していきます。


岡山市は水道料金を平均20.6%引き上げる

岡山市は水道料金を平均20.6%引き上げる

岡山市は2024年度、水道料金を平均20.6%引き上げる方針です。

市の試算では2031年度の料金収入が2023年度比で5%減る一方、資材価格の上昇で投資額は当初想定より1割程度増えます。

2031年度までに生じる281億円の資金不足を値上げで補います。

早ければ11月に料金改定の条例案を市議会に提出されます。


20%を超える大幅な値上げですが、市民負担を考慮し値上げ幅は圧縮されました。

5月には有識者らでつくる市の審議会に25.3%の値上げ案を提示しましたが、施設改修などの費用の一部を企業債でまかなうよう計画を見直しました。


その他の市町村でも値上げが始まる

浜松市も値上げの検討をしています。

人口減などに加え、電力値上げで送水などの電気料金の負担が増え経営を圧迫しています。

静岡県御前崎市は2023~2029年度の間に複数回に分け2021年度比で平均約46%引き上げる方針です。


人口が1万人未満の市町村の23%が赤字

人口が1万人未満の市町村の23%が赤字

水道事業は市町村などが運営し、料金収入で経費をまかなう独立採算が原則です。

施設にかかる固定費が多く、給水人口が減れば赤字に陥りやすいです。

給水人口30万人以上の場合は最終赤字の市町村などの割合は1%ですが、1万人未満では23%と経営は厳しくなります。


施設の老朽化も経営を圧迫している

施設の老朽化も経営を圧迫している

施設の老朽化も経営を圧迫しています。

水道施設への全国の投資額は2021年度で1.3兆円と10年前から3割増加しています。

神奈川県は今後30年間で改修に約1兆円の投資が必要とみています。

いったん料金を引き上げても、人口がさらに減る中で経営体質が変わらなければ一層の値上げが将来必要になりそうです。


水道料金が7倍になる

水道料金が7倍になる

各都道府県は3月末までにまとめた「水道広域化推進プラン」に、水道水の販売単価を示す供給単価や給水原価の将来予測を盛り込みました。

何も対策を取らず毎年の赤字を料金収入で補おうとする場合、山梨県内の2042年度の供給単価は2022年度の1.5倍になります。


地域によって試算方法は異なりますが、青森県の十和田市などを含む上十三地区は30年後に現在の3倍、大分県の佐伯市などを含む南部地区では50年後に7倍強に膨らみます。


水道事業の民営化に舵を切る動き

水道事業の民営化に舵を切る動き

抜本的な経営効率化を目指す動きも出ています。

宮城県は2022年度、所有権を持ったまま上水道と下水道、工業用水道の計9事業の運営を民間に委託するコンセッションに乗り出しました。


浄水場の運転管理や薬品の調達、設備の修繕といった業務を20年間一括で委託します。

民間のノウハウを生かして事業の効率化に取り組み、20年で337億円の経費削減を見込んでいます。


厚生労働省によると、水道のコンセッション導入は宮城県のみにとどまっています。

導入ノウハウがまだ乏しいほか、生活に不可欠な水道の「民営化」への住民の抵抗感を懸念する声もあります。


メモ

コンセッションとは、高速道路、空港、上下水道などの料金徴収を伴う公共施設などについて、施設の所有権を発注者である公的機関に残したまま、運営権を民間事業者に売却することです。



県全域で水道事業を統合する動き

県全域で水道事業を統合する動き

各地で検討が進む効率化策が経営統合を含む事業の広域化です。

香川県は2018年度に全国で初めて実質的に県全域で水道事業を統合しました。

国は運営費の削減などが期待できるとし、都道府県に各地域での検討を働きかけるよう促しています。


ただ県内での広域統合を目指した奈良県と広島県では、奈良市や広島市など中心都市が統合への参加を見送りました。

人口が比較的多い中心都市では統合することで単独経営に比べ料金が上がる懸念があるからです。

水道事業の効率化として有力な広域化ですが、一筋縄ではいきそうにありません。


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