イーロン・マスクによるTwitterなどを使った発言によって、暗号資産の市場が揺らいでいます。
これによって多くの投資家が損害を受けることになりました。
マスク氏の発言に法的責任はないのでしょうか?
その他、マスク氏が会社情報をTwitterで発言するための条件なども解説しています。
ビットコインを乱高下させるイーロン・マスク
米国の電気自動車(EV)メーカー大手テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏の発言によって暗号資産(仮想通貨)市場を揺らいでいます。
ツイッターへの投稿が市場に影響を与え、ビットコインの価格が乱高下する一因となりました。
直近では仮想通貨の支持を訴えても価格が下がる場面がありました。
不規則な発言への信頼が低下し、市場参加者との溝が深まってきています。
テスラが購入代金決済を停止、12時間で7%安
マスク氏は2021年5月12日に突如、テスラがビットコインによる購入代金決済を停止するとツイッター上で公表しました。
その結果、ビットコイン価格は投稿後12時間で約7%安となりました。
テスラは2月、米証券取引委員会(SEC)への提出資料でビットコインを15億ドル(約1600億円)分購入したと公表し、決済通貨としての受け入れも表明していました。
マスク氏の投稿がテスラによるビットコイン売却を示唆したと受け取られ、価格は一時急落したのです。
「仮想通貨『専門家』の皆さん・・・」と挑発
マスク氏は2021年5月16日、ツイッター上でこう挑発しました。
「仮想通貨『専門家』の皆さん、ペイパルを知ってるかい。通貨について君たちが思っている以上に私は理解しているよ」。
マスク氏は米決済大手ペイパル・ホールディングス共同創業者の一人でもあります。
仮想通貨の将来性を訴えたのですが、ビットコイン価格は4月につけた史上最高値の半値まで下がってしましました。
ドージコインについても発言し、乱高下
マスク氏はジョークで作られた仮想通貨「ドージコイン」でも発言し、価格の乱高下を招きました。
それでも「マスク氏が公の発言前に秘密の売買をしていない限り、憲法で守られる言論の自由の範囲内」との見方が多いです。
マスク氏の影響力に陰り?
マスク氏は2021年5月22日「真の戦いは法定紙幣と仮想通貨の間だ。後者を支持する」とツイートしました。
しかし、ビットコインの価格は反転しませんでした。
不規則発言が生んだ相場変動で、長期投資家は仮想通貨市場を敬遠しているのです。
マスク氏の影響力に陰りが出てきたのかもしれません。
ツイート前に弁護士の確認が必要に
マスク氏は、ツイッター発言によってトラブルを招いた過去があります。
2018年8月にテスラ株の非公開化の計画を表明した際には投稿内容が証券詐欺にあたるとしてSECから訴訟を起こされました。
2019年には和解に違反したとして、再び訴えられました。
2度目の和解で経営に関わる内容はツイート前に弁護士の確認が必要になりました。
米国はツイッターなどを使った会社の情報開示を認めている
米国はツイッターなどSNS(交流サイト)を使った会社の重要情報開示を認めています。
テスラは2013年、SECへの提出資料でマスク氏のツイッターを重要情報の公表手段にすると発言しました。
同氏のフォロワーは現在、5500万人を超え、発言はネット掲示板「レディット」などを通じて瞬く間に広がります。
米当局が制限するのは困難
米法律事務所ケリー・クローネンバーグのティモシー・シールズ弁護士はマスク氏のツイートについて「テスラ社としての情報発信と、個人的な投稿の線引きが難しく、当局が制限するのは困難」とみています。
米当局はSNSの監視を強めている
米当局は投資家保護の一環でSNSの監視を強めています。
SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は2021年5月6日、米下院公聴会向けの声明で、SNSは「不正者が特定銘柄を宣伝したり、市場を操作したりしようとする可能性がある」と述べました。
仮想通貨への監視網も強まる
仮想通貨への監視網も強まっています。
米政府は5月20日、1万ドルを超える仮想通貨の送金について内国歳入庁への報告を義務付けると発表しました。
中国政府による規制強化の方針も明らかにしました。
個人投資家の55%がSNSの情報を投資判断に使用
情報サイト「インベスティング・ドット・コム」の調査によって、個人投資家の55%がSNSの情報を投資判断に使ってることが明らかになりました。
レディットとツイッターを情報収集の場として利用すると答えた比率は共に20%を超えました。