
フリーランスとして働き始めた瞬間から、あなたは“自分の税金を自分で守る”世界に足を踏み入れます。
しかし、多くの人が最初につまずくのが確定申告です。
何を準備すればいいのか、どこまでが経費になるのか、青色申告と白色申告の違いは何なのか──調べれば調べるほど情報が散らばり、むしろ混乱してしまうことも少なくありません。
そんな不安を解きほぐし、確定申告の全体像から実務の細部まで“ひとつの流れ”として理解できるようにしたのが『フリーランス&個人事業主のための確定申告 改訂第20版』です。
20年以上読み継がれてきた定番書であり、インボイス制度・電子帳簿保存法・収受日付印廃止など、最新の税務環境にもしっかり対応しています。
はじめて確定申告を迎える人はもちろん、もっと正確に・もっとスムーズに申告したい経験者にとっても、一冊で本質がつかめる内容になっています。
本書が優れているのは、単なる“申告方法の説明書”ではない点です。
青色申告の準備から帳簿付け、必要経費の判断、控除の理解、申告書の作成、法人化の判断まで、フリーランスが直面するすべてを体系的に解説。
読むほどに「なぜそうするのか」が分かるため、手順に振り回されるのではなく、根拠をもって判断できる力が身につきます。
確定申告に不安を抱えるすべての人にとって、心強い“実務の教科書”となる一冊です。
合わせて読みたい記事
-
-
確定申告の書き方が分からない人におすすめの本 10選!人気ランキング【2026年:令和8年】
確定申告の季節になると、「どこから手をつければいいの?」「毎年なんとなく済ませているけれど、本当にこれで合っているのかな?」と不安になる方は多いものです。 特に初めての人にとっては、専門用語や計算が多 ...
続きを見る
本書『フリーランス&個人事業主のための確定申告 改訂第20版』の書評

フリーランスや個人事業主にとって、確定申告は“避けて通れないもの”でありながら、“仕事の本質とは関係ない複雑な作業”でもあります。本書は、そんな悩みを抱える人のために、20年以上にわたり改訂を重ねてきた超・定番シリーズの最新版(2026年対応版)です。
このセクションでは、次のような観点から本書の価値を立体的に掘り下げます。
- 著者:税理士法人Bricks&UKのプロフィール
- 監修:梶浦 潮のプロフィール
- 本書の要約
- 本書の目的
- 人気の理由と魅力
この5つを深く理解することで、「なぜこの本が長く愛され続けているのか」「他の確定申告本と何が違うのか」が自然と見えてきます。
著者:税理士法人Bricks&UKのプロフィール
税理士法人Bricks&UKは、2006年の創業以来、税務・会計を軸としながらも、事業経営に必要な幅広い専門領域を包含する“総合型の士業グループ”として成長してきました。一般的な税理士事務所は、主に確定申告や決算書作成といった税務処理が中心ですが、Bricks&UKはその範囲を大きく超えて、人事労務・法務・経理アウトソーシング・経営コンサルティング・さらにはWebマーケティング支援までカバーする点が非常に特徴的です。この横断的な専門性があるからこそ、フリーランスや個人事業主が日常的に抱える「税金」「売上」「経費」「働き方」「今後の事業展開」といった多面的な相談にワンストップで対応できる体制が整っています。
とくにフリーランスの支援において強みを持つ理由のひとつは、Bricks&UKが扱ってきた相談件数の多さにあります。個人事業主の悩みは、紙に書けば似たように見えても、業種・収入規模・働き方によって細かい判断が異なることが多く、型通りの説明では不十分です。例えば「これは経費になりますか?」という質問ひとつをとっても、どのような仕事をしているか、自宅の使い方、実際の支出の背景などによって最適な回答は変わります。Bricks&UKはこうした具体的な状況を丁寧に見極めながら、実務に即した判断基準を積み上げてきたため、机上の理論ではなく「現実に使えるノウハウ」が豊富に蓄積されています。
また、グループ全体には税理士・社労士・司法書士・公認会計士・コンサルタント・ITエンジニアなど多様な専門家が在籍しており、企業内で課題が発生したときに別の専門家への引き継ぎや連携がスムーズに行える点も大きな特徴です。たとえば、フリーランスが売上拡大により法人化を検討するときには、税務だけでなく、社会保険の加入、法人設立手続き、会計システムの導入、雇用契約の整備など複数の領域が一度に動きます。Bricks&UKはその一連の流れを一つの組織の中で完結できるため、フリーランスと事業者の「成長段階」をよく理解したサポートが可能です。
大規模な税理士法人の強みは、さまざまなケースを大量に見ている点にあります。
つまり、“失敗例と成功例の蓄積”が圧倒的です。
本書のわかりやすさは、こうした実務の裏付けがあってこそ生まれるものといえます。
監修:梶浦 潮のプロフィール
監修者の梶浦潮氏は、Bricks&UKグループの創業者であり代表税理士です。そのキャリアの根底には、税務の専門家であるだけでなく、経営者・経営コンサルタント・組織リーダーとしての多面的な視点が存在しています。この複合的な経験が本書にも深く影響しており、単なる制度の紹介にとどまらず、フリーランスが「事業としての税務」を理解できる構成になっています。
梶浦氏は大学卒業後、アーサーアンダーセンという世界的な会計コンサルティングファームでキャリアをスタートさせました。この時代に携わったプロジェクトは、大企業の予算管理制度の再構築、業務プロセスの改善、決算早期化の支援など、企業の根幹を支える経営管理に関わるものが中心であり、数字をどのように扱えば企業が健全に運営できるかを高いレベルで学んだといえます。この経験を持つ税理士は実は多くなく、税務と経営を両面から語れる稀有な存在です。
その後、独立して中小企業や個人事業主の支援に携わるようになった梶浦氏は、フリーランス特有の“数字に対する不安”を理解しやすい立場にあります。大企業とは違い、個人事業主には管理部門がありません。経理も総務も人事もすべて自分でこなす必要があり、その負担の大きさは想像以上です。梶浦氏は大企業支援の経験を持ちながら、フリーランスの現場に寄り添い、その実務を分解し「誰にでもできる形」に落とし込む力があります。
さらに、自身も事務所を起業し、100名規模の法人から1,000名規模のプラットフォームへと組織を発展させてきた経営者でもあります。この経験は、単に税務の専門家という枠を超え、事業を育てていくための長期的視点を持つうえで大きな意味を持ちます。本書の最終章に「法人化」が含まれているのも、梶浦氏が“税金の先の未来”まで視野に入れた思考を持っているからです。
税理士の中でも“経営のプロセスまで理解している人”は多くありません。
表面上の数字ではなく、数字の奥の“事業構造”まで見通せる監修者の存在が、本書の質を圧倒的に高めています。
本書の要約
本書は、「確定申告を初めて行う人」から「毎年申告しているがもっと効率化したい人」まで、あらゆるレベルに対応した“総合パッケージ”です。特徴的なのは、一つのテーマだけを掘り下げるのではなく、確定申告に必要な概念・法律・実務・書類・計算・制度・手続きのすべてを、STEP形式で整理していることです。これにより、初心者でも“どの順番で理解すれば迷わないか”が分かり、上級者でも“知識を体系的に再整理できる”構成になっています。
まず冒頭のSTEP1と2では、税金の基本構造、所得区分、青色申告制度、電子帳簿保存法、インボイス制度など、現代のフリーランスが必ず知っておくべき前提を押さえます。特に、電子帳簿保存法やインボイスは誤解が多いテーマであり、このステップでは「最低限守るべき部分」と「実務でどこまで対応するべきか」が丁寧に解説されています。
続くSTEP3と4は、いわば“日常業務の基礎体力づくり”のステップです。帳簿付けの考え方、仕訳のルール、勘定科目の選び方、領収書・レシートの扱い、減価償却の判断、自宅の家事按分など、「こう処理すると間違えにくい」「こう考えると経費判断がぶれない」という、実務者が必ず押さえている判断基準が明確に示されます。ここを理解すると、確定申告だけでなく1年間の“経営の見える化”にも大きく役立つという点が本書の強みです。
さらにSTEP5と6では、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済、ふるさと納税、生命保険料控除など、個人事業主が使える控除について体系的に整理し、最終的な税額計算方法を分かりやすく説明しています。「控除は種類が多すぎて混乱する」という人が多い領域ですが、本書では“いつ・誰が・どう使えるか”を具体例とともに理解できるように設計されています。
STEP7と8では、いよいよ決算書と確定申告書の作成に入ります。青色申告決算書と白色申告の収支内訳書の違い、書き方、数字の流れ、e-Taxの操作、必要書類の添付、そして消費税申告までフォローするため、初めての人でも迷わず提出まで完走できます。特に、消費税の「簡易課税」「みなし仕入率」やインボイス制度との関連は、フリーランスが今もっとも混乱しやすい箇所ですが、本書では“しくみ”と“判断基準”を丁寧に整理しています。
最後のSTEP9と10では、提出後の流れや税務調査への備え、そして法人化の判断基準に触れます。「申告後の流れを知らない」「法人化のタイミングがわからない」という人にとって、このステップは非常に役立ちます。確定申告本でありながら、将来の事業計画まで踏まえて読める点は、本書の大きな魅力です。
税務を理解するには“順番”が非常に重要です。
本書はその順番が正しく設計されているため、学習効率が高く、初心者でも挫折しにくい構造になっています。
本書の目的
この本の目的は、単に「申告書が作れるようになる」ことではありません。もっと本質的で、フリーランスにとって価値のあるゴールが明確に設定されています。それは「自分の事業のお金の流れを主体的に理解し、適切に判断できるようになること」です。
確定申告は、単なる税金の計算ではなく、1年間の働き方や事業の成績表でもあります。売上がどれだけ成長したか、何にお金を使いすぎているか、改善できるポイントはどこかといった“経営的な気づき”が必ず存在します。本書は、そうした気づきを得ながら申告作業を行えるよう、手順と考え方の両面を提供しています。
また、税務は年々複雑化しており、インボイスや電子帳簿保存法のように、知らなければ不利になってしまう制度も増えています。本書は、こうした最新制度を“初心者でも理解できる形”にかみ砕いて説明しており、法律の文面だけ読んでも理解できない部分を明快に整理しています。
さらに、本書は“自力で申告できるようになる”ことを重要なテーマとしています。他人任せではなく、自分で判断できるようになるための思考や視点が随所に盛り込まれており、単なる手続き書ではなく「フリーランス税務の教科書」として機能します。
税務の本当の価値は“判断力を育てること”にあります。
本書は単に作業手順を示すのではなく、なぜその処理をするのか、どんな選択肢があるのかまで示しているため、知識が実務に転換される構造になっています。
人気の理由と魅力
本書が20年以上にわたり読み継がれている理由は、その“普遍性”と“実用性”にあります。まず、フリーランスが必要とする税務知識は、単に制度を知るだけでは不十分であり、実務でどのように判断するかという経験知が欠かせません。本書は現場で積み上げられたノウハウをベースとしており、抽象的な説明ではなく、具体的で判断に使える情報が詰まっています。
また、本書が支持される大きな理由の一つに、「初級〜上級」を一冊でカバーしている点があります。税金の仕組みを全く知らない初心者でも理解できる導入部分から、青色申告や減価償却、控除の活用といった中級の内容、そして消費税やインボイス、法人化のような上級テーマまで、一冊の中に“フリーランスの成長ステージごとの必要知識”が自然と並んでいます。このため、開業したばかりの人が読んで役に立つのはもちろん、数年後に売上が伸びてきたタイミングで読み返しても、新たな発見がある構成になっています。
さらに、本書は最新制度への対応が非常に早く、インボイス制度や電子帳簿保存法、収受日付印廃止の実務対応など、今のフリーランスが必ず直面するテーマが網羅されています。制度が変わるたびに不安になりがちな領域を、最新情報でアップデートした解説でフォローしてくれる点は、実務書として大きな価値があります。
そして、文章と図解のバランスが優れていることも魅力です。税務の説明は難しくなりがちですが、本書は図表やフローチャートが豊富で、複雑な制度を“目で見て理解”できるように編集されています。税金の本にありがちな圧迫感がなく、初心者でもスムーズに読み進められる点が高く評価されています。
最後に、本書の魅力として見逃せないのは“未来志向”の構成です。確定申告だけでなく、その先のステップである法人化まで含めて説明しており、フリーランスがどのように事業を成長させていくかという視点で税務を捉え直すことができます。この“長期的視点の有無”は専門書として非常に重要であり、本書が多くの読者に “手元に置いておきたい一冊” として選ばれる理由につながっています。
良い税務書は“制度の説明”で終わらず“事業の未来”までつながる設計になっています。
本書が20年以上愛されているのは、まさにこの“現在と未来をつなぐ視点”を持っているからです。
本の内容(目次)

本書は、確定申告に必要な知識を「概念 → 実務 → 書類作成 → 申告後 → 将来設計」という流れで体系化し、読み進めるだけで自然と理解が深まる構成になっています。とくに、はじめて確定申告に挑戦するフリーランスが迷いやすい部分を先回りして解説している点が特徴です。章の流れは一見専門的に見えますが、実際には「この順番で理解すれば挫折しない」というロジックに基づいており、一冊を通して読むことで“申告の全体像”がスムーズにつながっていく作りになっています。
内容は以下のようなステップで構成されています。
- STEP1 確定申告の基本
- STEP2 青色申告に必要な準備をしよう
- STEP3 帳簿付けの基本
- STEP4 必要経費の計算
- STEP5 「所得から控除できる金額」を把握する
- STEP6 所得税額を確定する
- STEP7 青色申告決算書/白色の収支内訳書の作成
- STEP8 確定申告書を作成しよう
- STEP9 申告後の手続き
- STEP10 個人事業主から法人に
- APPENDIX 必要経費・勘定科目の早見表
各STEPは単独で読んでも理解できるように作られており、「読みながら実務を進められる」という親切さがあります。
それでは、ここからひとつずつ詳しく解説していきます。
STEP1 確定申告の基本
確定申告の最初のステップでは、「なぜ自分で税金の計算を行う必要があるのか」という根本的な仕組みを理解します。会社員の場合、税金は会社が計算し、年末調整で調整されます。しかしフリーランスや個人事業主は、自分で所得を申告する必要があります。この章では、そうした背景を踏まえながら、確定申告の目的と役割をわかりやすく整理しています。また、所得税の計算の土台になる「所得とは何か」という考え方にも触れ、税金の基礎構造を理解できるように導いてくれます。
さらに、「所得税の仕組み」や「税金の種類」についても、この章でしっかり整理されます。所得税の累進課税制度、住民税や個人事業税などの関係性、そしてフリーランスが特に意識すべき源泉徴収の仕組みまで、基本的な部分を丁寧に説明しているため、税金に苦手意識がある人でも“全体像から理解する”感覚がつかめます。「なぜ一部の報酬はあらかじめ税金が引かれて振り込まれるのか」という疑問も、この段階で解消できます。
また、この章では申告を行うために必要な書類についても紹介されており、準備段階で何を揃えればよいのかが明確になります。1年間で受け取った支払調書、レシートや領収書、保険料控除証明書など、後のステップで必要となる書類の種類や用途を確認できるため、“どこに何を保管しておくべきか”が分かり、申告直前になって慌てることを防ぐことができます。
STEP1は“税金の地図を手に入れる段階”です。
ここを理解しておくと、後の作業は単なる書類作成ではなく、意味のある処理として捉えられるようになります。
STEP2 青色申告に必要な準備をしよう
このステップでは、フリーランスにとって最も重要といってもいい制度である「青色申告」の準備について学びます。青色申告は65万円控除などの大きなメリットがあり、適切に活用すれば税負担を抑えつつ事業の管理レベルも高めることができます。この章では、開業前後に必要な手続きや、申請書を提出するタイミングなど、つまずきやすいポイントを整理しながら解説しています。とくに開業初年度は提出期限を逃すと控除が使えないため、早い段階で理解しておくことが重要です。
また、青色申告の根幹にある「帳簿を正しくつける」という前提条件も、この段階で説明されます。帳簿付けが苦手な初心者でも取り組みやすいよう、何を記録するか、どのように整理すればよいかが丁寧に書かれています。そして最新の制度として重要な「電子帳簿保存制度」にも触れ、紙の保管だけでなくデジタルでの保存がどのように認められているのか、どんな準備が必要なのかが紹介されています。これにより、今後の税務環境の変化にも対応できる基盤が整います。
さらに、家族への給与支払いについても解説されており、青色事業専従者給与の扱いによって節税につながる仕組みが理解できます。事業にかかわる家族がいる場合、正しく届出を行うことで経費として認められる可能性があるため、この章の知識は大きな差を生みます。従業員を雇った場合の特例にも触れられており、今後事業が広がる可能性のある読者にとっても有益です。
青色申告の本質は“管理レベルの向上”です。
帳簿が整えば、節税だけでなく事業の見通しまで明確になります。
STEP3 帳簿付けの基本
この章では、事業のすべての土台となる帳簿付けの基本を学びます。帳簿とは単なる記録ではなく、お金の動きを整理し、事業活動を理解するための重要なツールです。ここでは「取引とは何か」という根本から始まり、売上や支出をどのように仕訳として記録するのか、その意味が丁寧に解説されています。また、仕訳という言葉に抵抗がある初心者でも理解できるよう、例を使いながら“どのような情報を記録すべきか”が明確になります。
帳簿付けで特に悩むのが「どの勘定科目を使えばよいのか」という点ですが、本書では科目の考え方が分かりやすく整理されています。たとえば、仕事で使った通信費や交通費をどの分類に入れるか、備品の購入が経費になるのか資産になるのか、といった疑問は、多くのフリーランスが共通して抱えるものです。この章では、そうした判断の基準を理解しやすく説明しているため、後の申告処理で迷う場面が減ります。
さらに、帳簿と書類の整理方法についても補足されており、領収書や請求書をどのように保管するか、税務署に確認を求められた際に不足がないようにするにはどうすればよいかなど、実務的な視点も含まれています。帳簿の入力そのものだけでなく、“間違いなく管理する方法”を学べる点がこの章の大きな特徴です。
帳簿付けは“分類の技術”です。
意味を理解して仕訳を行えるようになると、勘定科目選びに迷う時間が劇的に減ります。
STEP4 必要経費の計算
必要経費は、フリーランスが最も迷いやすい領域です。この章では、経費とは何か、どこまで認められるのかを丁寧に解説しています。経費とは、簡単に言えば「仕事をするために必要なお金」ですが、その判断は支出の種類や使った場面によって異なります。そのため、曖昧なまま記録すると、後で否認されるリスクが生まれます。ここでは、経費の基本的な考え方を理解し、誤解しがちなポイントを減らすための土台が整理されています。
また、領収書の扱い方や、どのように保管すべきかもこの章で学ぶことができます。実際の税務調査では「何を買ったか」だけでなく「なぜ必要だったか」が問われるため、領収書やメモを適切に残すことが大切です。さらに、パソコンやカメラのように価格が高い物は減価償却というルールで処理する必要があるなど、高額の備品に関する税務上の扱いも丁寧に説明されています。これにより、設備投資をする際に適切な判断ができるようになります。
自宅兼事務所で仕事をする場合の「按分」についても解説されており、自宅の家賃や光熱費をどの程度経費にできるのか、その根拠を理解することができます。按分は独学では誤りやすい領域ですが、本書では日常生活と事業利用のバランスをどのように判断すべきかが整理されているため、適切な線引きができるようになります。
経費の判断は“説明できるかどうか”が鍵です。
業務との関連性を言語化できる人ほど、税務上のトラブルを避けられます。
STEP5 「所得から控除できる金額」を把握する
この章では、所得控除について詳しく学びます。所得控除とは、課税される所得を減らすための制度であり、適切に活用することで税負担が大きく変わります。医療費控除や社会保険料控除、扶養控除、地震保険料控除、寄附金控除など、生活の中で自然に発生する支出が控除につながる場合も多く、その種類と要件を理解することは非常に重要です。多くの人が見落としがちな制度も多いため、この章の知識が税額を左右します。
医療費が一定額を超えた場合の取り扱いや、セルフメディケーション税制の仕組みなど、細かいルールも分かりやすく整理されています。また、年金や健康保険の支払いは、額の大きさから考えても控除の効果が大きい領域です。そのため、ここで正確な制度理解を得ることで、自分が利用できる控除を見逃さないようにすることができます。さらに、小規模企業共済や生命保険料控除といった、将来のための備えが節税につながる仕組みも解説されており、家計管理と事業管理を一体で考えられるようになります。
扶養に関する制度や、災害や盗難で被害を受けた際の控除など、状況によって利用できる制度にも触れられています。特に家族の状況や収入によって控除額が変わる部分は、誤解されやすいテーマです。本書では具体例を交えながら説明しているため、自分の状況に照らし合わせて理解しやすい構成になっています。
控除は“知らなければ損をする仕組み”です。
必要経費と同じくらい、所得控除の理解が節税に直結します。
STEP6 所得税額を確定する
この章では、いよいよ「どれだけ税金を支払うか」を決めるための計算を行います。ここまでで必要経費と各種控除を整理してきたため、そのすべてを反映した“最終的な課税対象額”が算出できるようになります。所得税は累進課税方式で、所得が増えるほど税率が高くなるため、自分がどの区分に該当するかを理解することが第一歩です。本書では税率のしくみを図表によって示しており、複雑な計算も視覚的に整理できるよう工夫されています。
次に、納税額からさらに差し引くことができる「税額控除」についても詳しく説明されています。これは、所得控除とは異なり、計算された税額から直接引かれるため、効果が非常に大きい特徴があります。特に住宅ローン控除は大きな節税効果が期待できる制度であり、適用要件や計算の流れが丁寧にまとめられています。この章を読むことで、自分が利用できる控除の全体像がつかめ、納税額を正しく調整できるようになります。
そして、計算結果として導き出された税額をどのように申告書へ反映するかも解説されており、「計算の理解」から「実際の記入」へとつながる導線が整理されています。ただ数字を計算するだけでなく、「なぜその金額になるのか」を理解したうえで進められる構成になっているため、その後の申告書作成がスムーズに感じられるようになります。
所得税の計算は“税負担の最終形”を理解する重要な局面です。
控除と税額控除の違いを理解すると、節税の選択肢が広がります。
STEP7 青色申告決算書/白色の収支内訳書の作成
この章では、確定申告の中で最も重要な提出書類の一つである「青色申告決算書」と「収支内訳書」の作成方法が詳しく説明されています。これらの書類は、1年間の売上・経費・資産の状況をまとめた“事業の成績表”であり、税務署が最も注目する書類でもあります。まずは書類の構成や、どこにどの情報を書き込むのかを理解することで、大きな流れが見えてきます。
青色申告決算書は4ページ構成で、売上・仕入・経費・固定資産の各項目を細かく記載していく必要があります。本書では、数字のつながりやページごとの意味を丁寧に解説しているため、初めての人でも全体を見渡しながら進められるようになっています。特に固定資産や減価償却の扱いは難しい部分ですが、計算方法が分かりやすく示されているため、実務につながる理解が得られます。
白色申告の収支内訳書についても説明されており、青色申告とは異なる書き方や注意点が整理されています。どちらの形式にも共通するのは「帳簿の内容が反映される」という点であり、日頃から記録を正しく残すことの重要性がこの章で改めて実感できます。書類そのものの書き方だけでなく、事業の実態を正確に反映する姿勢が大切であることが伝わる構成になっています。
決算書は“事業の客観的な評価表”です。
正確に作成することで、税務署だけでなく、自分自身が事業の実態を客観視できるようになります。
STEP8 確定申告書を作成しよう
この章では、すべての情報を集約した「確定申告書」を実際に作成していきます。まず、フリーランスにとって重要な「支払調書」の読み方から始まり、どの項目を申告書に転記すべきか、必要な書類がどこで参照できるのかが詳しく説明されています。支払調書は報酬の一部が源泉徴収されている場合に重要で、この段階でその数字を正しく扱うことが正確な税額につながります。
申告書の作成方法については、紙での提出方法とe-Taxの両方が紹介されています。特にe-Taxは操作に不安を感じる人が多いものですが、本書では提出までの手順が順を追って整理されているため、画面を見ながら作業すれば初めてでも問題なく進められます。また、添付書類の扱いについても細かく説明されており、どの書類が必要か、どのタイミングで提出するかが明確になる構成です。
さらに、この章では消費税に関する基礎知識や簡易課税の仕組みにも触れられています。売上規模が大きくなると消費税の納税義務が発生するため、今後事業が拡大する可能性のあるフリーランスにとって重要な知識です。とくにみなし仕入率の考え方は難しさがありますが、図表で理解できるよう工夫されているため、消費税の基礎理解として最適です。
申告書作成は“情報整理の最終段階”です。
書類と数字の関係を理解していれば、提出作業は驚くほどスムーズになります。
STEP9 申告後の手続き
申告が終わっても、フリーランスにはまだ重要な作業が残されています。この章では、申告後に必要となる行動を丁寧に整理しています。まず、納付が必要な場合にどのような方法で支払うのか、期日はいつなのかが明確に説明されており、支払い漏れや遅延を防ぐことができます。また、還付金が発生した場合にはどのように振り込まれるのか、どれくらいの期間で入金されるのかなど、初心者が不安を抱きやすい部分にもしっかり触れています。
さらに、税務行政のデジタル化に伴って「収受日付印」が廃止された背景や、廃止後はどのように“提出した証拠”を示すのかについても記載されています。郵送での提出や書類の控えの扱いなど、制度の変化に合わせた実務的な対策が紹介されているため、最新情報にも対応できる内容です。
また、税務調査に備えた書類の保管についても重要なポイントとして説明されています。税務調査は決して特別なものではなく、日頃から適切な記録をしていれば落ち着いて対応できます。本書では、どの書類をどのように保管すべきかが“実務目線”で解説されており、安心して事業を続けられるような知識が身につきます。
申告後の管理が整っている人ほど、翌年の申告は格段にラクになります。
税務は“事後処理の質”でトラブルを避けられます。
STEP10 個人事業主から法人に
事業が軌道に乗ってくると、「法人化」という選択肢が現実味を帯びてきます。この章では、個人から法人へ移行する際に考えるべきポイントが丁寧に説明されています。まず、法人化にはメリットとデメリットがあり、そのどちらも正しく理解することが大切です。節税効果が期待できる場面は確かにありますが、社会保険の負担増や事務作業の増加など、慎重に検討すべき点も多くあります。
法人化の判断基準としては、売上規模、経費の構造、家族への給与の扱い、今後の事業計画など、複合的な視点が必要です。本書では、こうした判断材料を具体的に整理し、“感覚”ではなく“根拠”にもとづいて判断できるよう導いています。また、法人には株式会社や合同会社など複数の種類があり、どの形式が自分の事業に合うのかを理解するための基礎知識もまとめられています。
さらに、法人化後の税金のしくみや、代表者や家族への給与の扱いについても整理されており、個人事業主時代とは異なるポイントが明確になります。これらを理解しておくことで、法人化が単なる節税テクニックではなく、長期的な事業戦略における重要な選択肢であることが分かります。
法人化は“節税イベント”ではなく“成長戦略の一部”です。
事業の将来像と税務のバランスを見て判断することが成功の鍵となります。
APPENDIX 確定申告用勘定科目
巻末には、必要経費や勘定科目の判断を助ける早見表がまとめられています。多くのフリーランスが悩む「これはどの科目に分類すべきか?」という疑問に答える構成になっており、迷ったときにすぐ参照できる辞書的な使いやすさがあります。日常の記帳の中で生じる細かな判断も、この一覧を確認すれば方向性が明確になります。
また、控除に関する早見表も収録されており、適用できる制度をひと目で確認することができます。控除は種類が多く、要件も複雑ですが、この表を活用することで抜け漏れを防ぎ、効率よく申告作業を進めることができるようになります。特に年末に一気に準備をする場合、この巻末資料が大きな支えになります。
このAPPENDIXは、初めての確定申告だけでなく、2年目以降も長く使える実務ツールです。日頃の記帳から確定申告直前まで、迷ったときに支えてくれる“手元に置きたい資料”としての価値が高い構成になっています。
巻末資料は“実務の現場で使う武器”です。
迷ったときにすぐ方向性を確認できるため、経験者にも必須のツールとなります。
対象読者

フリーランスとして事業を運営するうえで、税務の知識は避けて通れません。しかし、実際には「何から学べばよいのか」という迷いがつきまとうものです。本書はその不安を整理し、立場や目的の異なる読者が自分に合ったポイントから理解できるよう構成されています。
特に以下のような視点で読み進めたい人にとって、大きな助けとなる内容です。
- はじめて確定申告をするフリーランス
- 経費の考え方・勘定科目を体系的に学びたい人
- インボイスや電子帳簿保存制度に不安がある人
- 税理士に頼らず自分で申告したいコスト意識の高い人
- 将来の法人化を検討している事業者
それぞれ詳しく見ていきましょう。
はじめて確定申告をするフリーランス
独立したばかりの人にとって、確定申告は仕組みそのものが未知の領域です。税金の種類、必要書類、申告書の構造など、基本概念をどこから学んでよいかすら分からないという状態が一般的です。本書は、STEP1で「なぜ申告が必要なのか」「所得税とは何か」を丁寧に説明し、税務の全体像を最初に提示するため、不安を抱える初学者でも迷わず読み進められます。税務署に提出すべき書類や、青色・白色の違いなど、最初の判断でつまずきやすいポイントが体系的に整理されている点も、大きな安心材料になります。
また、初年度は売上・経費の記録方法が分からず、帳簿付けに苦手意識を持つ人も多いですが、STEP3〜4では実際の記帳の流れが具体的に解説されています。仕訳の基本、経費判断、領収書管理、自宅兼事務所の按分の考え方など、初心者が最初に戸惑いやすい実務がやさしく理解できます。さらに、提出直前のSTEP8や申告後のSTEP9も含まれているため、一冊読み終えるだけで「申告の始まりから終わりまで」が自然に把握できる構成です。
初年度の理解不足は翌年以降に大きな負担を残します。
体系的に学べる構成は、税務のつまずきを防ぐ最良の方法です。
経費の考え方・勘定科目を体系的に学びたい人
フリーランスは経費の判断で悩む場面が非常に多く、「これは経費になる?」「どの科目で処理すべき?」という疑問が日常的に発生します。本書はSTEP3・STEP4で取引の仕訳や勘定科目の役割を整理し、経費として認められる支出の種類や正しい記録方法を体系的に学べる構成です。特に、減価償却や按分といった税務の基本概念も具体例とともに解説されているため、専門知識がなくても理解しやすい内容になっています。
さらに、本書のAPPENDIXでは勘定科目と控除を一覧で確認できるため、実務中に迷ったときにすぐ調べられる“辞書的な機能”を果たします。帳簿付けは日々積み重ねる作業であり、正確な知識を持っているかどうかで作業効率が大きく変わります。体系的に整理された知識が欲しい人にとって、本書は基礎から応用まで幅広く網羅した実用的な教材となります。
経費と科目の理解は“事業の採算管理”の土台です。
体系的に身につけると、数字に対する判断精度が大きく向上します。
インボイスや電子帳簿保存制度に不安がある人
制度改正が続く中、特にインボイス制度と電子帳簿保存法は、多くのフリーランスにとって“正しく理解しないと困るテーマ”になっています。本書はSTEP2で適格簡易請求書(インボイス)の基礎を押さえ、どのような状況で登録が必要になるか、登録後どのような義務が発生するかを整理しています。制度の目的や実務で求められる内容が理解しやすくまとめられているため、制度に不安を持つ人にとって大きな助けになります。
電子帳簿保存制度についても、対象書類や保存ルールが細かく決められており、理解しないまま運用すると知らぬ間に“非対応”となるリスクがあります。本書では、必要な準備や保存方法のポイントがわかりやすく示されているため、どの書類をどの形式で保存すべきかが明確になります。制度の複雑さゆえに不安を抱える人が、実務レベルで必要な行動まで落とし込んで学べる構成です。
制度対応の遅れは“信用リスク”にもつながります。
正確な情報を理解することは、事業継続の必須条件です。
税理士に頼らず自分で申告したいコスト意識の高い人
毎年の申告を税理士に依頼すると、規模によっては大きな費用負担になります。自分で申告できるようになればコスト削減だけでなく、事業の数字を自分で把握できるというメリットも得られます。本書はSTEP1〜STEP10まで申告の全工程を順番に学べる構成で、「この順番で進めれば申告が完成する」という流れが明確です。専門的な内容でも初学者向けに噛み砕かれているため、自力で進めたい人にとって非常に扱いやすい一冊です。
さらに、控除・税額計算・消費税・帳簿付け・申告後の対応など、必要な知識が体系的に網羅されているため、知識の抜け漏れなく作業を進めることができます。自分で申告する場合に最も悩む「どこまで理解すればよいのか」という疑問にも、本書の構成が明確な答えを示しています。実務に直結する情報が豊富で、自己完結型の申告を目指す人に適しています。
将来の法人化を検討している事業者
売上や事業規模が拡大してくると、法人化が選択肢に入りますが、判断には専門知識が必要になります。本書のSTEP10では、メリット・デメリット、税金の違い、給与の扱い、法人の種類などが整理され、判断材料を揃えることができます。特に「どのタイミングで法人化すると有利か」という視点が重要ですが、そのための基礎知識をわかりやすく学べる構成です。
法人化は節税効果だけでなく、社会保険負担や管理業務の増加など、考慮すべき要素が多々あります。本書では、個人と法人の違いを具体的に比較し、制度の全体像を理解したうえで意思決定できるように導いてくれます。将来を見据えて事業を成長させたい人にとって、長期的な視点を養える内容となっています。
人化は節税のためではなく、“事業の発展段階に合わせた構造設計”として行うべき選択です。
判断基準を持つことが成功の鍵となります。
本の感想・レビュー

確定申告の全体像が一気につかめた
確定申告に苦手意識が強かった私にとって、この本は“最初の壁”を一気に越えさせてくれる存在でした。これまで、税金の仕組みや必要書類がどのように結びついているのか理解できず、毎年手探りで進めていましたが、この本では基本の考え方が最初にまとまっており、読みはじめた瞬間から頭の中が整理されていく感覚がありました。
特に助かったのは、税金が発生する理由、源泉徴収の意味、還付申告のタイミングといった“自分が何をしているのか”を理解するための核の部分が順序良く説明されていたところです。専門的な要素でも、順を追って説明されていたため、理解が積み重なる心地よさがありました。
全体として、確定申告に必要な知識を俯瞰できる構造が非常にありがたく、読み進めるごとに「全体の地図が頭に入った」という実感が自然と生まれました。今まで見えなかった“申告の流れ”が、急に立体的に感じられるようになったのです。
はじめてでも迷わない“やさしい導線”が魅力
私は毎年「どこから始めればいいのか」で止まってしまうタイプなのですが、この本を読み進めるうちに、その迷いがどんどん解消されていきました。章の並びがとても丁寧で、理解すべき順番そのままにページが進んでいくため、初めてでも自然と次の行動が見えるようになっていました。
読みやすさを支えているのは、手続きの前に必要な準備が明確に書かれている点です。必要書類や制度の概要が最初の段階で整理されており、「まず何を集めるべきか」「どんな基礎知識があると後が楽か」が、読み手に寄り添う形で説明されていました。この細かい段取りの案内が、初心者にとってどれほど心強いか身をもって感じました。
さらに、ページレイアウトや解説の挟み方に工夫があり、「この順番で理解すれば混乱しない」という構成が徹底されているのが印象的でした。最後まで読み終えた時、「はじめてでも道に迷わないように導かれていたんだ」と気づかされる、温度のある本だと感じました。
青色申告の流れが明確で行動に移しやすい
青色申告に憧れつつも、手続きの複雑さや事前準備の多さに気圧されて、いつも白色申告で済ませていました。この本を読んで初めて、青色申告が“難しい手続き”ではなく、“順番に進めれば誰でも活用できる制度”であることがわかり、気持ちが大きく変わりました。
この本では、青色申告を始める前に必要な手続きから記帳のやり方まで、途切れなく理解できるように整理されています。退職前後の流れや開業後の申請タイミングが明快に示されていたことで、自分がいつ何をすればいいのかがはっきりと見えました。また、青色申告の特典を受けるための条件も噛み砕いて説明されているため、「仕組みを理解したうえで判断する」という安心感が生まれました。
さらに、電子帳簿保存制度やインボイスとの関係性が同じ章で確認できるため、制度が複雑化している現状でも迷わずに済むのがありがたかったです。読み終わったときには、青色申告が自分の事業にとって必ずしもハードルの高いものではなく、むしろ積極的に取り入れるべき選択肢なのだと前向きに受け止めることができました。
経費の線引きがクリアになった
経費の判断は、フリーランスになってからずっと不安の種でした。どこまでが必要経費で、どこからが私的な支出なのか、迷う場面が多かったからです。この本では、必要経費を整理する章が非常に充実していて、経費の考え方がようやくスッキリと理解できました。
特に役立ったのは、減価償却の考え方と、自宅兼事務所を使う場合の「按分」についての説明が、制度の基本から丁寧に書かれていたことです。単に「そういうルールがある」と書かれているのではなく、その制度が存在する理由や、どのようなケースで適用されるのかが確認できたことで、自分のケースでも迷いなく判断できるようになりました。
また、青色申告決算書と経費の種類がセットで紹介されていたのも非常に助かりました。経費の理解と実際の書類作成が自然につながり、知識が点ではなく線で結びついた実感があります。経費に関するモヤモヤが解消されると、確定申告全体への苦手意識も少しずつ薄れていくものだと気づかされました。
控除一覧が実生活と結びついて理解しやすい
控除は種類が多く、読み比べても全体像をつかみづらい分野ですが、この本ではそれぞれの控除が目的ごとに整理されていて、自分の生活にどう関係してくるのかが理解しやすく感じました。読み進めるうちに、「これも控除の対象になるのか」「自分にも当てはまるものがあるかもしれない」と自然と思い当たる場面が増えたのが印象的です。
医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済、保険料控除、地震保険など、フリーランスが日常的に関わる支出についても丁寧に説明されています。特に、自分の状況と比較しながら該当する控除を探すページは、整理され方が分かりやすく、確認作業が非常にしやすかったです。
申告書の書き方が視覚的に分かりやすい
申告書づくりが苦手な私でも、「こういう作業なら進められそうだ」と感じられたのは、この本の図解の丁寧さのおかげでした。文章を読むだけでは理解しづらい部分も、実際の様式や記入例が並んでいることで、どの欄に何を書くべきかが具体的に見えるようになりました。これまでの「書式が難しくて嫌になる」という気持ちが、読んでいくうちに不思議と軽くなっていきました。
特に、支払調書の整理や確定申告書の作成手順が視覚的に説明されているのは非常に助かりました。ページ全体が整理されており、どこを見れば必要な情報が得られるのかが分かりやすいため、順番に作業を進めるだけで自然と申告書が完成していくような構成です。迷いやすい箇所が事前に説明されているため、頭の中で混乱する時間がほとんどありませんでした。
さらに、e-Taxでの提出手順が整理されているため、紙提出とオンライン提出のどちらでも不安なく取り組める点が心強かったです。作業そのものが見える化されていることで、申告書づくりに対する心理的な負担も軽減され、初めての人にも優しい構成だと感じました。
最新制度を網羅した安心の一冊
制度が変わるたびに情報を追いかけるのが負担になりがちですが、この本は2026年版として必要なポイントが整理されているため、読みながら「最新のルールにそって作業できる」という安心感が大きくありました。基礎控除の見直しや収受日付印廃止への対応など、実務で混乱しやすい部分もわかりやすく書かれており、安心して作業の流れを理解することができました。
特に、インボイス制度や電子帳簿保存制度の情報がまとまっているのがありがたかったです。検索しても断片的な情報しか見つからないことが多い中、本書では一つの流れとしてまとまっているため、自分が対応すべき内容が整理しやすく、混乱せずに読み進められました。制度が複雑化している今、本書のように「必要な部分を体系化してくれる解説」は非常に助かります。
職種を問わず役立つフリーランスの実務書
フリーランスの働き方は多様で、それぞれ仕事内容も収入形態も違うため、税務知識を共通化して学ぶのが難しいと感じていました。しかし本書は、特定の業種に偏らず、すべてのフリーランスに必要な知識が整理されているため、どんな職種でも活かしやすいと感じました。章ごとの情報が普遍的で、業種を選ばないところが非常にありがたいです。
特に、帳簿付けの基本や必要経費の考え方などは、どんな仕事でも共通する部分であり、基礎をしっかり固めるのに最適な内容でした。学んだ内容がそのまま実務に直結するため、独立したばかりの人でも経験のある人でも自分のスタイルに反映しやすい構成になっています。どの章からでも必要な情報にアクセスしやすい点も使いやすさにつながっていました。
さらに、消費税や控除、申告後の流れ、法人化の判断など、職種に関係なく長期的に必要となる知識もしっかり網羅されています。一冊を通して、フリーランスとして事業を続けていくために必要な情報がバランスよくまとまっていると感じ、手元に置いて何度も読み返したくなる内容でした。
まとめ

今回紹介した一冊は、確定申告を不安に感じるフリーランスや個人事業主にとって、実務の流れを自力で整理できるようになる非常に頼もしいガイドです。基礎から応用、そして制度改正まで幅広くカバーされているため、必要な情報を探し回る負担が一気に減り、毎年の申告がよりスムーズになります。読み終わったときには、「自分でもできる」という手応えがしっかり残り、明日からの実務へ自信を持って向かえるはずです。
この記事の最終セクションとして、これから本書を活用するうえで押さえておきたい要点を、以下の3つに整理しています。
- この本を読んで得られるメリット
- 読後の次のステップ
- 総括
これらを踏まえることで、学んだ内容を実務に落とし込みやすくなり、確定申告を“苦手な作業”から“事業を整える時間”へと変えていけるようになります。
フリーランスとしての働き方をより良くしていきたい人にとって、本書は長く役立つ一冊になるでしょう。
この本を読んで得られるメリット
ここでは、読了後にどのような変化が得られるのかを、特に大きな効果が実感できるポイントに絞って紹介します。
申告作業全体の流れがつかめる
確定申告が難しく感じられる大きな理由は、「どの順番で何をすればよいのか」が見えないまま作業に入ってしまうことです。本書はSTEP1〜STEP10まで一貫した構成で、必要な作業が順序立てて説明されているため、全体像が自然と理解できるようになります。とくに、はじめて申告に挑戦する人にとって、作業の全体像を把握できることは大きな安心につながります。申告の起点から提出後の流れまでひとつのストーリーとして理解できるようになるのが特徴です。
経費・控除・税額計算の判断が正確になる
フリーランスの税務で最も差がつく要素は、経費の扱いと控除の正しい理解です。どこからどこまでが経費として認められるのか、どの控除が自分に適用できるのかを把握することで、税負担は大きく変わります。本書では、必要経費の基準、自宅兼事務所の按分、減価償却の考え方、医療費や保険料の控除など、判断の基礎となる知識が整理されています。制度の目的から具体的な計算例まで示されているため、「何となくの判断」ではなく「根拠のある判断」ができるようになります。
青色申告を最大限に活用できるようになる
青色申告には、最大65万円控除をはじめとする多くの優遇制度がありますが、その恩恵を受けるには正確な記帳や届出が欠かせません。本書は、事前手続きから帳簿付けの基本、決算書の作り方までを一つの流れとして解説しているため、青色申告の基準をきちんと理解し、制度を効果的に使いこなせるようになります。複式簿記が苦手な人でも、ステップを追いながら必要な作業を進められる構成になっている点が大きな価値です。
最新制度(インボイス・電子帳簿保存法など)に対応できる
税務は常にアップデートされる分野であり、インボイス制度や電子帳簿保存法のように対応が必須となるケースも増えています。これらの制度は理解しないまま放置すると、取引停止や罰則といったトラブルにつながる可能性があります。本書では、制度の背景や適用対象、実務上の対応方法がまとめられており、最新ルールに正しく合わせられるようになります。時代に対応した経理・申告ができるようになるため、事業運営のリスク管理にも役立ちます。
申告書類を自分で作成できるようになる
確定申告書や青色申告決算書は、見慣れない言葉や数字が多く、初心者にはとっつきにくいものです。本書は、申告書のどの欄にどの数字を入れるのか、どの資料が必要なのかを実務目線で丁寧に解説しています。支払調書の扱い方、e-Taxの利用方法、提出前のチェックポイントなど、仕上げの段階で迷いやすい部分もしっかり補強されています。自分の力だけで書類を完成させたい人にとって非常に実用的な内容です。
税務の知識は“身につけた瞬間から事業の武器になる”分野です。
本書の内容はその入口として最適で、理解した分だけ成果に直結します。
読後の次のステップ
本書を読み終えると、確定申告の全体像がクリアに整理され、税務への苦手意識が一段と小さくなっているはずです。しかし、知識は身につけて終わりではなく、日々の実務に落とし込み、翌年・翌々年へと継続的に活かすことによって、本当の力になります。
ここでは、本書を読んだ後にどの方向へ進むべきか、フリーランスとして成長するための具体的な道筋を紹介します。
step
1日常の記帳と証憑管理を習慣化する
確定申告をスムーズに進めるには、日々の記録を整えておくことが最も大きな効果を生みます。本書のSTEP3・STEP4で示されたように、仕訳の考え方や経費分類、領収書の扱い方を日常業務の中で実践することで、申告期に大きな負担がかかる状況を避けられます。月単位で帳簿を整理するだけでも、年度末に慌てずに済み、必要経費や控除の見落としも防ぎやすくなります。記帳は「ため込むほど苦しくなる」性質があるため、小さな習慣の積み重ねが翌年の自分を助けてくれます。
step
2控除・経費・消費税などの知識を深める
本書を一通り読み終えると、控除や経費の基本概念は理解できています。しかし、税務は“知るほど節税余地が増える”分野であり、日頃から情報をアップデートしておくことが将来の税額にも大きく影響します。たとえば、小規模企業共済やiDeCo、ふるさと納税の活用は、毎年状況が変わるため見直す価値が高いテーマです。また、事業が成長すると消費税の課税事業者になる可能性が高まり、簡易課税の選択やインボイスの影響も重要になります。知識の更新は、税負担の最適化とリスク回避の両方に役立ちます。
step
3電子申告(e-Tax)やデジタル管理に移行する
本書のSTEP8で紹介されているように、e-Taxは今後ますます主流になります。送信が短時間で完了するだけでなく、控除が上乗せされるケースがあり、実務的なメリットも大きいのが特徴です。電子帳簿保存制度への対応も必要になるため、デジタル管理を少しずつ取り入れておくと、制度変更があっても慌てずに済みます。紙の書類管理よりも検索が容易になり、紛失リスクも減るため、業務効率も大きく向上します。
step
4事業の数字を使った振り返りを行う
確定申告は、課税所得や経費、利益など、一年分の数字が明確に整理されるタイミングでもあります。申告後こそ、その数字を使って事業の振り返りを行う絶好のチャンスです。どの費用が大きかったか、利益率がどう推移したかなど、経営判断に必要な指標が揃っているため、次年度の改善点が見えやすくなります。税務と経営を結びつける意識を持つことで、「ただ申告するだけ」から「事業を成長させるための情報に変える」プロセスへと進化します。
step
5必要に応じて法人化や事業計画の見直しを検討する
売上が増え、取引が複雑になると、STEP10で解説されている“法人化”が現実的な選択肢として浮上します。個人と法人では税金・社会保険・経費の扱いが大きく異なるため、一定のラインを超えると個人事業主より有利になるケースも出てきます。本書を通して基礎知識を得た後は、自分の事業規模や今後の成長計画に応じて、法人化を含めた中長期の戦略を考えるステージへ進むことができます。税務の基礎が理解できているからこそ、より高度な判断がしやすくなります。
税務知識は“学んで終わり”ではなく、“活かしてこそ価値が出る”領域です。
本書の理解を実務に結びつけることで、毎年の申告と事業運営が確実に強くなります。
総括
本書は、フリーランスや個人事業主が抱えやすい「確定申告への不安」を取り除くために、税務の基礎から実務の流れ、さらに制度改正への対応まで、綿密に整理された構成でまとめられています。申告作業を初めて行う人でも理解しやすいよう、STEP形式で一連のプロセスを視覚的にイメージできるよう工夫されており、複雑に見える税務の世界を体系的に捉えられるようになります。そのため、年に一度の申告作業を“苦手なイベント”から“事業の状況を確認する重要な時間”へと捉え直すきっかけを生み出してくれます。
また、経費の判断基準や控除の種類、消費税の仕組みなど、フリーランスに直結するテーマを深掘りし、誤りやすいポイントを正確に理解できるようになっている点も大きな特徴です。ただ手順を説明するだけでなく、「なぜこうするのか」という理由にまで踏み込んでいるため、単なる作業手順書とは異なり、税務の本質をつかむことができます。知識が増えることで、やるべきことが明確になり、結果として申告作業そのものが効率化されるのが実感できるでしょう。
さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法など、最新の法改正に対応した内容が含まれている点は、フリーランスにとって非常に心強い要素です。日々変化する環境の中で、必要な対応を逃さず、事業を継続するうえで不利益を被らないための知識は欠かせません。本書はそのための“現在地”を正しく示してくれる存在であり、制度変更に振り回されないための基盤を提供してくれます。
総じて、この一冊は「確定申告をこなすための本」であると同時に、「自分の事業を自力で守り、育てていくための教科書」といえる内容になっています。
税金への理解が深まるほど、事業運営における判断の精度も上がり、フリーランスとしての将来がより明るくなるはずです。
本書は、その第一歩を確かな形で支えてくれる実務書として、大きな価値を持つ存在だといえます。
