海外マネーが国内スタートアップの買い手として急浮上しています。
2021年1~9月の国内スタートアップに対するM&A(合併・買収)金額は前年同期比22倍の4000億円強と国内勢による買収額を初めて上回りました。
個人マネー主体の株式公開(IPO)に依存していたスタートアップにとって資金を調達しやすくなり、成長投資を加速できるようになります。
M&A金額、国外勢が国内勢を上回る
M&A助言のレコフ(東京・千代田)が新興企業を対象としたM&Aを集計しました。
海外の企業・投資家によるM&A金額(出資を含む)は1~9月に4066億円と急増し、00年の調査開始以来、国内勢によるM&A金額(51%増の3621億円)を初めて上回りました。
通年でも海外勢のM&A金額はピークだった15年の529億円をすでに上回り、過去最高となります。
今回の集計対象外ですが、最近では英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが非上場で「家庭教師のトライ」を展開するトライグループ(東京・千代田)を1100億円程度で買収すると決めました。
海外勢の積極投資が続いています。
海外勢によるM&Aは98件と6割増
1~9月を件数で見ると海外勢によるM&Aは98件と6割増え、通年で過去最高だった19年(111件)を上回るペースです。
国内勢によるM&A(943件)より少ないですが、1件あたりの金額は41億円と国内勢(3・8億円)より大きく、全体を押し上げています。
1件あたり100億円を超える例も出てきました。
海外勢増加の原因は2つ
背景にはまず、デジタル化の進展でその担い手となる有力スタートアップが増えたことがあります。
大企業で経験を積んだ人材が起業して創業から数年で企業価値を数百億~1000億円超に高める例が相次ぎ、投資家の成長期待を集めています。
2つ目は海外マネーの流れが変わったことです。
海外のベンチャーキャピタル(VC)や機関投資家が将来の大型IPOを見据え、スタートアップの「青田買い」に動いています。
米中対立を背景に中国リスクが意識されるなか、日本に資金が流れている面もあります。
早期の成長を狙い、外国企業の傘下に入る
米決済大手ペイパル・ホールディングスは後払い決済のペイディ(東京・港)を3000億円で買収しました。
人工知能(AI)を活用し、消費者がネット通販サイトでクレジットカードを使わずに買い物ができるサービスを手がけます。
日本で数少ないユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)でしたが、早期の成長を狙い米大手への傘下入りを選んだのです。
米グーグルはスマートフォン決済のプリン(東京・港)を買収した。取得総額は200億円程度とみられています。
グーグルは買収を通じ日本でキャッシュレス決済市場に本格参入する。一定の事業モデルや顧客基盤を確立した新興企業を買収することで、日本市場参入の時間を買う効果があります。
外国資本を入れることで、海外に進出しやすくする
海外投資家を株主に呼び込むことでグローバル展開がしやすくなるメリットがあります。
「有機EL」の新材料を開発するキューラックス(福岡市)は中国のVC、上海浦東科技投資から資金に加えて社外取締役を受け入れ、中国市場を開拓します。
外資系のコンサルティング会社などの出身者がスタートアップ経営者に転身し、海外投資家と直接交渉する例も増えています。
国内マネーがスタートアップ投資に向かうようにすべき
スタートアップはこれまでまとまった資金の調達のハードルが高かったです。
投資に慎重な国内の投資家や大手企業が多く、KPMGなどの調査によると20年のスタートアップ1社あたりの平均調達額は5億円と米国の3分の1にとどまります。
GCAテクノベーションの久保田朋彦代表は「国内IPOの公開価格に対する不満もあり、今後は海外企業の傘下入りを選ぶ例が増えるのではないか」と予想します。
未上場でも大規模に資金調達できれば、上場を急がずにじっくり事業を育てやすくなります。
もっとも、国内マネーがスタートアップ投資に向かうようにすべきだとの声は多いです。
海外マネー頼みでは外部環境の影響を受けやすく、資金調達の安定につながりにくい側面があります。
国内年金マネーを未公開株市場に流れやすくしたり、大企業が新興企業に投資しやすくしたりするよう、規制緩和や税制整備が求められます。
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