経済産業省は創薬スタートアップの育成に乗り出します。
実用化できるか定かではない初期の臨床試験(治験)段階であっても数十億円規模で補助をします。
日本は海外に比べて医薬品の初期の開発を担う企業への資金供給が乏しく、新型コロナウイルスワクチンの開発の遅れにつながりました。
国費を投じ、投資マネーを呼び込みたい考えです。
日本では新薬開発初期の投資が少ない
医薬品の開発には、一般に10年以上の時間と数百億円以上の資金が必要だといわれています。
基礎研究などの後に、ヒトを対象に第1~3相までの3段階で治験をして有効性や安全性を示し、厚生労働省から承認を得なければ販売できません。
新薬が実用化の可能性が高まる第2相の後半の治験段階になると、大手の製薬や投資家が参画することが多いです。
第1相や第2相段階の薬の開発を進めているスタートアップへの支援は官民ともに手薄でした。
第1、2相でも50億~100億円規模の開発費が必要になるります。
一方、この時点では実用化に至る確率は15~25%程度とされています。
新薬開発初期の領域を国費で補助
経産省は投資マネーから敬遠されてきたこの初期の領域を国費で補助します。
2021年度補正予算に500億円を計上しました。
日本医療研究開発機構(AMED)に基金を設け、創薬に特化したベンチャーキャピタル(VC)を認定してVCが出資する創薬スタートアップの開発費を補助します。
補助額は出資額の2倍までで調整しており、数十億円を見込む。現在は2億円程度までにとどまります。
遺伝情報となるmRNA(メッセンジャーRNA)という物質を用いたワクチンや、ウイルスの遺伝子の一部を運び役となる物質に組み込むDNAワクチンの開発などへの支援が念頭にあります。
新型コロナ以外の医薬品の開発も支援先として検討します。
新型コロナによって日本の創薬力が低いことが鮮明に
新型コロナ禍は、日本の薬を生み出す力が米欧よりずっと弱いことをあらわにしました。
米マサチューセッツ工科大学の研究者らが創業したモデルナは先頭集団でワクチンを開発しました。
米生物医学先端研究開発局(BARDA)は20年4月時点で500億円規模の支援を決めていました。
米ファイザーも独のバイオ医薬スタートアップ、ビオンテックとコロナワクチンを共同開発しました。
薬の開発の中心は創薬スタートアップにシフトしている
新たな薬の開発の中心は創薬スタートアップにシフトしています。
日本の厚生労働省はこの流れに対応しきれませんでした。
経産省によると、日本の創薬スタートアップはVCから数億円規模までの出資を集めるのが精いっぱいという状況です。
創薬系VCの規模自体も、日本が100億~200億円程度なのに対し、米国は1000億円を超えています。
米国でもかつては資金の出し手が限られていたものの、この20年ほどで層が厚くなりました。
日本も5~10年の時間をかけて成功事例を重ねる必要があります。
日本政府は国産ワクチンの開発に向け基礎研究への支援も急いでいます。
AMEDにスタートアップ支援とは別に1500億円の基金を設けます。
先進的研究開発戦略センター「SCARDA」を設置してワクチンの新規技術などの研究を進める研究機関や製薬企業に補助金を配分します。
さらに国内大学に世界トップレベルの研究開発拠点を設けるため515億円を用意します。
まとめ
経済産業省は創薬スタートアップの育成に乗り出します。
日本では新薬開発初期の投資が少ないです。
基礎研究などの後に、ヒトを対象に第1~3相までの3段階で治験をして有効性や安全性を示し、厚生労働省から承認を得なければ販売できません。
新薬が実用化の可能性が高まる第2相の後半の治験段階になると、大手の製薬や投資家が参画することが多いです。
第1相や第2相段階の薬の開発を進めているスタートアップへの支援は官民ともに手薄でした。
経産省は投資マネーから敬遠されてきたこの初期の領域を国費で補助します。
2021年度補正予算に500億円を計上しました。