2024年1月から始まる少額投資非課税制度(NISA)の刷新によって非課税枠が大幅に拡大するとともに、非課税期間が無期限になります。
生涯非課税で投資をすることが可能になり、高齢期も投資信託や上場株式などで一定の運用を続ける人が増えそうです。
NISAで投資していた親などが亡くなると、資産をどう引き継げばいいのでしょうか。
詳しく解説していきます。
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資産運用をしていた親が亡くなったら証券保管振替機構に連絡
NISAで運用している親が亡くなったら、口座のある金融機関に連絡し、相続に向けた手続きを始める必要があります。
どの金融機関で取引をしていたか分からない場合は、上場株式や上場投資信託(ETF)なら証券保管振替機構(ほふり)を通じて照会することができます。
証券保管振替機構は上場している商品が対象のため、非上場の一般の投信のみを保有している場合は証券会社などからの郵便物で確認できそうです。
非上場の投信と上場商品の両方を同じ口座で持っているケースでは、証券保管振替機構で金融機関を把握することができます。
金融機関が分かったら、亡くなった日の残高証明書を発行
口座のある金融機関が分かったら、故人(被相続人)が亡くなった日の残高証明書の発行を依頼しましょう。
残高証明書には亡くなった日の株式や投信の価格、保有していた株式数や投信口数といった情報が記載されています。
相続税は相続人が引き継ぐ財産ごとに課税上の評価額を出し、相続財産の総額から基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引くなどして課税対象額があれば発生します。
上場株式・上場投信の評価額はどのように決まるのか
株価が公開されている上場株式の場合、基本的に相続発生日の「終値」が相続税評価額になります。
ただし、相続発生日に株価が高騰する可能性もゼロではなく、相続人にとって相続税が高額になることも考えられます。
そこで上場株式の相続税評価額は、次に挙げる4つから一番低いものを選んでよいとされています。
(1)死亡日の終値(2)死亡月の終値平均(3)死亡前月の終値平均(4)死亡前々月の終値平均
適用価格に株式数や投信口数を掛けた額が評価額となります。
一般的な非上場公募投信は、死亡日の1口当たり基準価格に保有口数を掛け、信託財産留保額や解約手数料を差し引くことでわかります。
配当金も死亡日によって相続での扱いが変わってきます。
NISA、課税口座とも株式を保有して配当を受け取る権利が確定する「配当基準日」に被相続人が生きていれば、相続財産に含まれます。
配当支払日までに亡くなっても、すでに権利が発生しているため相続財産の対象となります。
基準日前に死亡している場合は相続財産には含まれません。
NISA口座の資産は相続人のNISA口座に移すことはできない
相続する投信や株式の評価額などを把握し、相続人のうち誰が、どれを、どれくらい相続するかが決まったら金融機関に必要書類を送り、資産の移管を依頼しましょう。
抑えておきたいのがNISA口座の資産は相続人のNISA口座に移すことができず、移管先は課税口座になることです。
「被相続人が死亡した時点でNISAは終了し、資産を払い出した扱いになる」ためです。
相続人の課税口座は故人と同じ金融機関であることも条件になっています。
同じ金融機関に口座がなければ、新たに開設する必要があります。
NISA口座か課税口座かによって相続時の取得価格は異なる
相続人が故人の運用資産を相続する際は、取得価格を気にすることも大切です。
運用資産がNISA口座か課税口座かによって取得価格が異なり、移管後に売却した場合に利益が出れば所得税と住民税の対象になるからです。
NISA口座から資産を引き継ぐ場合の取得価格
NISA口座から資産を引き継ぐ場合は、故人が死亡した日の終値が相続人の取得価格になります。
例えば故人が1株10万円で購入した銘柄が死亡日に4万円に下落していれば、4万円が取得価格となります。
相続人の口座への移管後に株価が上昇し、5万円で売却すると利益が発生したとみなされ課税対象となります。
課税口座から資産を引き継ぐ場合の取得価格
一方、故人の課税口座から資産を相続するケースでは、故人の購入価格が相続人の取得価格になります。
1株10万円で購入していれば、10万円が取得価格です。
相続人が5万円で売却すると損失が発生し、課税されません。
損失をほかの課税口座で得た利益と通算することもできます。
NISA口座から資産を相続する場合でも、取得価格を下回る価格で売れば損失が発生するため課税対象になりません。損益通算も可能です。