マクマスター元米大統領補佐官(国家安全保障担当)は2021年9月24日、米中の対立は長期にわたり、数十年続くこともあり得るとの予測を示しました。
中国による環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟は阻むべきだと主張。日本の安全保障政策では、自衛隊が敵地への反撃能力を持つことが日本の防衛に有用との見解も示しました。
米中対立が長期化する理由として「中国の共産党政権は権力の独占に執着し、支配力を失うことを恐れている」と指摘。
共産党が強権体質を改めない限り、米側が融和政策に転じることはないとの姿勢をにじませました。
そのうえで「中国共産党が競争に勝てば、世界の自由、繁栄、そして安全は後退してしまう」と警告。米国と他の友好国が結束し、中国が政治、経済の影響力を拡大するのを阻止すべきだと訴えました。
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中国の加盟に反対、台湾の加盟に賛成
中国のTPP加入問題を巡っては「当然ながら、中国を除外することが極めて重要だ」と力説。中国を迎え入れたら、透明で公正なルールを掲げるTPPの体制が変質してしまうとの懸念を示しました。
一方で、台湾の加盟は「各国は台湾と通商関係がある。私たちは台湾の半導体などにも依存しており、参加は適切だと思う」と支持した。
米国のTPP復帰の可能性は低い
ただ、米国自身のTPP復帰については「可能性は高くない」と明言しました。
自由貿易へのアレルギーが米国内になお強いためで、米政府としては日米や米・オーストラリアといった2国間の貿易協定を広げることで、インド太平洋への経済関与を深められると語っています。
自衛隊が敵基地への反撃能力を持つべき
中国や北朝鮮の核・ミサイルによって日本の安全保障が脅かされていることには「日本人は米国との同盟に自信を持つべきだ」として、米国による日本の防衛への関与は揺るがないと強調しました。
自衛隊が敵基地への反撃能力を持つべきだという議論が日本国内で出ていることには「日本の防衛上、重要な能力だ」と保有に賛成した。その根拠に挙げたのが、現行のミサイル防衛システムの限界です。
マクマスター氏は「ミサイル防衛は相手の矢を自分の矢で撃ち落とすようなものだ。最終的には、弓を放ってくる(敵の)射手をたたけるようにしておくことが大切だ」と説明しました。
具体的には長射程のミサイル保有が選択肢になると述べ、そうした兵器は必ずしも攻撃的ではなく、防御目的にも必要だとの認識を示しました。
米英豪の新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS」
米英豪は今月、新たな安全保障協力の枠組みである「AUKUS」の創設を決めました。
この動きについて「排他的なクラブではなく、日本は事実上のメンバーだ」と述べ、これを機に米英豪と日本がさらに安保協力を深めるべきだと訴えました。