米証券取引委員会(SEC)がビットコイン先物に連動した上場投資信託(ETF)を近く承認する見通しとなりました。
投資家は暗号資産(仮想通貨)用のウォレット(電子財布)などを持たずに間接的にビットコインに投資ができるようになります。
ただ、現物ではなく先物に連動するETFとあって利用は限られるとの見方も多いです。
米メディアによると、米ETF大手プロシェアーズが運用するビットコイン先物に連動した商品がSECからの承認を得た上で、2021年10月19日にも取引開始となる見通しです。
先物ETFの承認で仮想通貨への信頼度が増す
ビットコインの価格は日本時間の18日に4月以来の6万2000ドル台に上昇しました。
ETFの承認は仮想通貨へのさらなる投資を呼び込むための大きな原動力となるとの期待があります。
仮想通貨連動のETFを巡っては米国で上場申請が相次いでいたましたが、過去5年以上にわたって却下されていました。
仮想通貨への投資ではウォレットの管理が必要となり、パスワードの紛失などのリスクを警戒し取引を手控える個人投資家もいます。
ETFならウォレットは不要です。暗号資産の方が証券と比べて税負担が重い国も多いです。
ETFの投資対象がシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場する先物などに限られている点も取引の安全性のうえでプラスです。
現物のビットコインには価格操作の疑いや犯罪・詐欺に関する疑いなどが絶えません。
SECの監視下にあるCME上場商品は、決められた監視がされ消費者保護の対策も定められています。
SECはこの点に度々、言及しており、承認の理由になったもようです。
ロールオーバーで損害がでることも
もっとも、先物ならではの難しさもあります。
ETFは保有する先物が期日を迎えれば、限月が遠い先物に乗り換える「ロールオーバー」を行います。
限月が先の先物の価格が高い「コンタンゴ」と呼ばれる状況だとファンドの損失となります。
ビットコイン先物は他の商品先物などと比べてもこのコストが大きいです。
ビットコインに期待される利回りは大きいため、このコストを軽微とみるか、投資家でわかれます。
先物ETFに魅力はあるのか
先物ETFが投資の拡大につながるか疑問視する声も多いです。
既に上場していたCMEでのビットコイン先物の取引量は投機的なもの以外ほとんどなく、新たに機関投資家がETFを投資先に選ぶとも思えないのです。
17年の12月に、ビットコインの先物上場をきっかけに価格が暴落したときのように、ETF上場で期待での買いが終わり、下落に転じるとの見方もあります。
大槻氏は「17年との違いは、次のステップ(現物ETF)への期待が残ること」と言いますが、現物ETFへのハードルは高いです。
米国では、仮想通貨に精通するゲーリー・ゲンスラー氏が21年4月にSECの委員長に就き、適切なプロセスを経たETFの上場承認に対する期待が高まっていました。
先物のETFは承認の見通しだが、現物のETFの扱いは不透明です。
ゲンスラー氏は投資家保護の観点で現在の仮想通貨取引に一貫して厳しい姿勢を示しています。
先物ETFを機関投資家は好意的にみている
機関投資家の間では強気の見方が増えています。
「ビットコインは(投資の)主流になったと思う」。米著名投資家ジョージ・ソロス氏の一族が経営するソロス・ファンド・マネジメントのドーン・フィッツパトリック最高経営責任者(CEO)は10月初旬、投資家向けイベントでこう語り、ビットコインを「多くはないが、いくらか保有している」と明らかにしました。
マイニングによる電力消費の問題
上昇基調のビットコインですが、今後の持続性は不透明です。
オアンダのモヤ氏は「規制上のハードルや、天然ガスや原油価格の上昇に伴って(採掘に必要な)エネルギー消費量に焦点が当たる可能性がある」と指摘。
「20%は容易に下落しうる」と述べ、今後も価格変動の振れ幅が大きくなるとの見方を示します。