中国の自動車メーカーが商用の電気自動車(EV)で日本に攻勢をかけています。
東風汽車集団系などが物流大手のSBSホールディングス(HD)に1万台の小型トラックの供給を始め、比亜迪(BYD)は大型EVバスで4割値下げを目指します。
世界的な脱炭素の動きを受け、物流大手はEVシフトに動きますが、日本車メーカーの取り組みが遅れており、価格の安い中国車を選んでいます。
出遅れた日本車メーカーは早期に巻き返さないと国内市場を奪われ、追い上げが難しくなります。
中国が計1万台のEVを日本に輸出
中国自動車大手、東風汽車集団のグループ会社である東風小康汽車は、SBSHDに1トン積載のEVトラックの供給を始めました。
EVスタートアップのフォロフライ(京都市)が設計し、東風小康が生産しています。
SBSHDは2030年までに別の中国メーカーに発注する1・5トン車と合わせて、計1万台のEVの供給を受ける計画です。
1トン車の価格は補助金なしで380万円ほどで同じようなディーゼル車とほぼ同価格です。
22年1月から本格的に輸入することになります。
国の補助金も見込めるため「現行トラックに比べコストは安くなる」と判断したようです。
今後5年で配送の協力会社に使用を促す分も含め国産ディーゼルトラックから順次切り替える予定です。
航続距離は300キロメートルで宅配などに使います。
日本に同タイプのEVがない
東証1部上場のSBSHDは配送時の温暖化ガス排出を減らそうとEV導入を模索しましたが、現状では国産の1トン積載型が市場になく、日本車メーカーに生産依頼をした場合は1000万円ほどかかるとみています。
小型トラックは7月にトヨタ自動車やいすゞ自動車などが設立した商用EV企画会社にスズキやダイハツ工業なども参画すると発表したものの日本勢の出遅れが鮮明です。
20年の小型バンの国内市場は23万台です。
ネット通販の伸びに伴い宅配需要が増え、中国EVが広がる可能性があります。
商用車は決められたルートで事業者が使います。
乗用車に比べ充電インフラの確保や保守メンテナンスが容易で参入しやすい面があります。
EV軽自動車も7200台を受注
SGホールディングス(HD)傘下の佐川急便も中国・広西汽車集団からEV軽自動車、7200台の供給を受けることで今春合意しています。
広西は22年から輸出を始めます。
SGHDは軽車両のすべてをEVにすることで二酸化炭素(CO2)を19年度比で1割削減できるとみています。
大型バスも日本に売り込む予定
BYDは日本で販売する80人乗りの大型EVバス「K8」の価格を4000万円から26年をめどに4割値下げを目指します。
ディーゼルバスと同程度となり国の補助金も活用できます。
BYDは日本で小型を含むEVバスを50台以上販売済みです。
大型を30年までに累計約2000台販売するとしています。
自動車大国を目指す中国
習近平(シー・ジンピン)指導部は市場規模世界一の「自動車大国」から独自ブランドが世界に浸透する「自動車強国」への転換を目指しています。
エンジン車では性能、ブランド力ともに日米欧勢にかないませんでした。
部品点数が少ないEVへの転換が始まり、中国第一汽車集団はノルウェーにEVの多目的スポーツ車(SUV)の輸出を始めています。
-
中国の借金や経済について学べるおすすめの本6選【2024年版】
中国は2027年にGDPが米国を抜き世界一になるとも言われています。とてつもない経済成長をしていますが、その実態はどうなのでしょうか?この記事では、中国の借金や経済について学べるおすすめの本を紹介して ...
続きを見る
-
中国共産党について知ることができるおすすめの本7選
中国と聞くと、勝手に人工島を作って自分の領土と言ったり、返済不可能な貸し付けをして借金のかたに港をおさえたりと、あまり良いイメージがありませんが、そんな中国の首脳部である共産党についてどれだけ理解して ...
続きを見る