インフレを回避する手段とされる物価連動国債などを組み込んだ「インフレ防御ETF(上場投資信託)」の資金流入額と純資産額が2021年10月に過去最高となる見通しです。
物価上昇に伴う資産の目減りを警戒し、年金基金などの機関投資家に加えて、足元では個人投資家の資金も目立ってきました。
各国中銀は利上げ前倒しで抑え込みにかかっていますが、投資家は供給制約に伴うインフレ圧力は続きかねないと警戒しているます。
資金流入額は過去最高
インフレ防御ETFは、米国の物価連動国債を組み入れている銘柄が多いです。
米国の物価連動国債は消費者物価指数(CPI)から算出される物価上昇率が上昇すると元本が大きくなり、利息も増える仕組みです。
一般の国債は元本が変わらないため、インフレ時には保有し続けると価値が目減りします。
QUICK・ファクトセットによると、純資産が大きい世界で主要な5本のインフレ防御ETFの合計の資金流入額は、2021年10月22日までで49・7億ドル(約5600億円)と、単月ベースでこれまでの過去最高の7月(39・6億ドル)を上回りました。
純資産額も850億ドルと、前年同月末比7割増と急増しています。
インフレが長期化する見通し
米国を中心に高い水準の物価上昇が続いています。
9月の米CPIは前年同月比の上昇率が5・4%と、5カ月連続で5%以上に高止まりしています。
インフレが長期化するとの見方が広がっています。
足元では個人投資家がインフレ防御ETFに買いを入れ始めています。
インフレが一時的ではないとみて、現預金などの目減りを警戒した米国の個人投資家がインフレ防御ETFを購入しているのです。
当初の中古車から家賃、ガソリンなどにも価格上昇が広がり、家計の不安心理が高まっているようです。
機関投資家も物価連動国債に乗り換え
米国の中長期目線の年金基金や運用会社は、ETFを買うことで固定金利の国債から物価連動国債に乗り換えているようです。
短期目線の米国のヘッジファンド、銀行や保険会社の自己勘定部門も、インフレのリスクを回避するためETFに積極的な買いを入れています。
年金基金などの機関投資家にとって、複数の物価連動国債を組み合わせているインフレ防御ETFは手軽に分散投資できるため魅力的なようです。
10年債といった物価連動国債の単体への投資に比べ、ETFに投資すれば5年債や10年債などに投資する効果が得られます。
たとえば純資産額で首位の米ブラックロックの「iシェアーズ米国物価連動国債ETF」は、米国の物価連動国債の約50銘柄を組み入れています。
1口あたりの価格は22日時点で128・76ドルと、日本円に換算すると1万5千円程度で取引所で誰でも買えます。
現状のインフレは株価にマイナスの可能性も
物価連動債以外にもインフレに強いとされる資産はありますが、課題もあります。
たとえば、原油など商品への投資だけでは、資源高以外の物価上昇要因には対応しづらいです。
景気回復の局面であれば株式も投資妙味があるりますが、原材料高や賃金の上昇につながるため、業種によっては企業業績や株価に逆風が吹く場合があります。
足元のインフレは新型コロナウイルス禍による供給制約や労働力不足、資源高などの複合要因で引き起こされています。
要因を問わずにCPIの上昇にリンクした物価連動債を組み入れたETFは特に有利となります。
投資家は景気が下向くのを警戒している
市場が警戒する物価上昇について米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「一時的」との見方を崩していない中、供給制約によるインフレは長引くとの見方も根強く残っています。
FRBによる早期の利上げ観測が浮上するものの、供給制約による物価上昇圧力を抑え込めるのか懸念されています。
インフレ防御ETFへのマネー流入は、インフレ高進が景気回復を腰折れさせかねないとの投資家の警戒感を映し出しています。
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