中国ゲーム企業が当局の規制強化などによる「三重苦」に直面しています。
新作発売に必要な認可が2021年7月を最後に止まっているほか、子供のゲーム利用の厳しい制限や、アプリ配信会社による排除の動きも広がっています。
網易(ネットイース)など大手は仮想空間といった新事業や海外展開を急いでいるが、中小ゲーム企業の淘汰につながる可能性もあります。
メディア・娯楽分野の監督が強まっている
中国ではゲームの新作を発売する際、当局の審査を受け「版号」と呼ぶライセンスを受ける必要があります。
ここ数年は1カ月に一度、版号を交付するのが慣例でしたが7月を最後に停止しています。
こうした事態はかつて規制が強まった2018年以来です。
今回、当局は認可停止を宣言しておらず理由は明らかになっていません。
ただ足元では当局が8月、芸能界がファンから過剰な手段で資金を集める行為を取り締まる方針を打ち出すなど、メディア・娯楽分野の監督が強まっています。
版号の停止はこうした姿勢の延長にあるとの見方が多いです。
もっとも、企業の業績にすぐに影響するわけではありません。
というのもゲーム企業は版号を得てもすぐに新作を出さず、競合などの状況を見ながら市場へ投入しているためです。
「在庫」の投入周期を延ばし、旧作の利用者拡大などに力を入れてしのぐことは可能ですが、版号の停止は大きな不安材料です。
ゲームは1日1時間のみに限定
9月には未成年者(18歳未満)へのネットゲームサービス提供の時間が週末や祝日の1日1時間のみに限定されました。
ゲーム中毒問題の対策として必要な措置だとしています。
大手ゲーム企業における未成年者の売上高比率は数%にとどまりますが、子供がゲームから離れれば将来の顧客の喪失につながりかねません。
ゲームアプリを配信するプラットフォーマーも及び腰です。
18年に版号が停止した際は、事業者によっては版号が無かったり虚偽だったりするゲームを配信する「グレーゾーン」が存在していました。
ただ米アップルが20年夏に中国市場向けアプリストアからこうした版号不正のゲーム3万本以上を一斉削除するなどルール順守の動きが強まっています。
ゲーム各社は新たな分野の開拓を急いでいる
ゲーム売上高で中国2位のネットイースは巨大な仮想空間を意味する「メタバース」の領域に参入。
10月下旬に、仮想空間で動くバーチャルアイドルなどを制作する北京次世文化伝媒に出資しました。
北京次世文化は3次元CG(コンピューターグラフィックス)などで架空のキャラクターを創出、ネットインフルエンサーなどとして売り込んでいます。
実在の俳優やタレントをモデルとすることもあります。
ゲーム世界最大手、騰訊控股(テンセント)は中国当局の規制の網がかからない海外市場の開拓を加速しています。
傘下でロングヒット作「王者栄耀」を制作した天美工作室群(ティミスタジオグループ)は10月中旬、北米で初の独立開発拠点を米シアトルとロサンゼルスに設置したと発表しました。
中国に次ぐ世界2位の市場である米国のニーズを探ります。
ゲーム企業の海外展開
中国ゲーム産業研究院によると、中国開発ゲームの海外売上高は21年7~9月期に49億ドル(約5500億円)に達し、4~6月期比で13%増えました。
従来は2%前後で緩やかに増加していたが、4~6月以降は伸びが目立ちます。
7月に上海で開かれた業界イベントで共産党中央宣伝部出版局の楊芳・副局長は「国際化の意識を一段と高めなくてはいけない」と発言、ゲーム企業の海外展開を促す姿勢を示しました。
一方、規模の小さい企業にとっては中国市場での逆風が痛手となっています。
ゲーム産業が集積する広東省にある中堅開発企業のエンジニアは、「版号の停止を機に社内のプロジェクトのいくつかが中止された。(新作認可の停止が)長引けば人員削減にまで及ぶのではないか」と不安をのぞかせます。
淘汰で大手寡占が一段と進む可能性もあります。
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