日本政府が2022年度からの在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を年2100億~2200億円規模にする案を米側に打診しました。
共同訓練の費用項目を新設して、現行の水準より100億~200億円ほどの増額になります。
自衛隊と米軍の協力を深め、抑止力を高める経費へと質を転換する狙いがあります。
22年度予算案に反映するため、年内の合意をめざして米側と詰めの協議を進めます。
今回の日米間の特別協定では、22年度から5年ほどの負担額を定めることになります。
思いやり予算は7年連続で増加
駐留経費の日本側負担額は15年度から7年連続で伸びたものの、増加率は前年比3%以内におさめてきました。
5%以上の幅となれば1999年度の8・6%増以来となります。
米国は1年あたり2500億円規模まで増やすよう求めていました。
日本側は米側の要求について一定程度を受け入れる姿勢を示してきました。
増額容認の条件として提示したのが負担の中身の見直しです。
現行の日本の負担額は2000億円余りで、多くは米軍基地の光熱水費や人件費などにあてています。
米軍が駐留しやすい環境を日本側が提供するための経費といえます。
「思いやり予算」という通称もこの発想から出てきた言葉です。
思いやり予算から同盟強化のための予算へ
日本側は今回の交渉で光熱水費などを減らすよう要求しました。
代わりに日米共同訓練や日米で共同使用する施設整備に使うコストを積み増し、全体で100億~200億円の負担増を受け入れる案を提起したのです。
米軍に駐留してもらう目的から自衛隊が米軍との共同対処力を高めるための経費へと性質を変えようとの意図があります。
防衛省幹部は「思いやり予算から同盟強化のための予算へと位置づけを改めるための交渉だ」と強調します。
日本の負担額は他国と比べても突出して高い
米国の財政赤字を背景に70~80年代は日本の負担を増やす圧力が高まりました。
90年の湾岸戦争で日本が人的な貢献に踏み切れなかった経緯もあり、90年代も伸び続けました。
最も多かったのは99年度の2756億円です。
当時は米軍基地のボウリング場やゴルフ場の維持整備費にも日本の税金が使われていました。これには日本国内で批判の的になりました。
米国防総省が2004年に発表した米軍経費の国別負担額で日本は74%でした。
韓国の40%やドイツの32%と比べても突出して高いです。
日本側は負担が重すぎると交渉して2000億円前後まで縮小しました。
17年にトランプ政権が発足すると米側の増額圧力が再び強まりました。
トランプ大統領は日本の負担を4倍以上に増やすよう要求し、20年度末に期限を迎える協定の交渉は難航しました。
20年の米大統領選でバイデン氏が当選しました。米国の政権交代期に入ったため暫定的に協定を1年延長して対応し、21年度から本格的な交渉に入っていました。
協力のための支出を増やすという方向性
日本政府は過去のように光熱水費などを増額する形の増額は国民の理解が得られないとみています。
米側の要求と国内の要請を両立するため、協力のための支出を増やすという方向性を打ち出しました。
東アジアでは中国の軍事的な台頭が進んでいます。
米国もこの地域での抑止力維持に力を注ぎ、日本を対中抑止の重要拠点の一つに位置づけています。
米国防総省によると在日米軍は増加傾向にあり、陸海空軍と海兵隊をあわせ21年9月時点で5・6万人います。
日本が独自の防衛力を高め、米国の抑止力を補完することへの米側の期待は高いです。
駐留経費の質的転換はこうした米側の要求にも沿う格好です。
日米両国の部隊の共同訓練は広がっています。
自衛隊は21年、米陸軍や海軍、海兵隊と離島防衛や対潜水艦戦、対艦戦などの演習を積み重ねています。
中国への対処能力の向上が念頭にあるからです。
まとめ
日本政府が2022年度からの在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を年2100億~2200億円規模にする案を米側に打診しました。
共同訓練の費用項目を新設して、現行の水準より100億~200億円ほどの増額になります。
米国は1年あたり2500億円規模まで増やすよう求めていました。
駐留経費の日本側負担額は15年度から7年連続で伸びています。
現行の日本の負担額は2000億円余りで、多くは米軍基地の光熱水費や人件費などにあてています。
日本側は今回の交渉で光熱水費などを減らすよう要求しました。
代わりに日米共同訓練や日米で共同使用する施設整備に使うコストを積み増し、全体で100億~200億円の負担増を受け入れる案を提起したのです。