韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が2022年1月21日まで歴訪した中東で、防衛協力の強化を打ち出しました。
アラブ首長国連邦(UAE)へは4千億円規模の兵器輸出をまとめました。
同国やサウジアラビアは米国頼みの安全保障を多角化しようとしており、防衛産業を育成する韓国の接近は渡りに船です。
日本の防衛装備品の輸出はどうなっているのでしょうか?
解説していきます。
世界各国に武器を輸出する韓国
UAEに4千億円規模の兵器を輸出
韓国とUAEは2022年1月16日、文氏の訪問に合わせて国防技術協力に関する覚書を交わしました。
UAEアブダビ首長国のムハンマド皇太子と17日に電話した文氏は「次世代戦闘機の開発と生産でも協力を拡大したい」と伝えました。
韓国防衛事業庁によると、文氏の訪問に合わせ、韓国の防衛装備品大手のハンファシステムなどが生産するミサイル迎撃システムの輸出が決定しました。
契約規模は35億ドル(約4千億円)で、単独兵器の契約としては過去最大です。
ミサイルシステムはレーダーや発射台、誘導弾を搭載し、韓国軍が実戦配備しています。
韓国は官民で活用促進に取り組む水素エネルギーを巡っても、UAEとの間で共同研究や金融支援に関する覚書を交わしました。
サウジアラビアに技術移転・現地生産を支援
2022年1月18日に訪れたサウジでムハンマド皇太子と会談した文大統領は兵器輸出に関し「技術移転を通じ、サウジの現地生産を最大限支援する」と伝えました。
皇太子は「サウジは2030年までに防衛産業の国産化を目標にしている。韓国は経験を持つよいパートナーだ」と応じました。
エジプトとは自走砲の輸出契約へ交渉を続ける
続いてエジプト入りした文氏はシシ大統領と会談しました。
共同発表文には自走砲の輸出契約へ交渉を続ける方針が盛り込まれました。
オーストラリアに810億円規模の兵器を輸出
韓国政府は防衛産業の育成に注力しており、積極的な「首脳ビジネス」で海外輸出を推進しています。
文大統領が2021年12月にオーストラリアを訪れた際には、韓国のハンファグループが豪政府と10億豪ドル(約810億円)分の自走砲などの調達契約を交わしました。
米国と中東の関係は変質している
親米のUAEやサウジ、エジプトは防衛協力や兵器輸入でも伝統的に米国と関係が深いですが、米軍は中国との競争を重視し中東への関与を減らしています。
米シェール革命や脱炭素の流れで米国と中東の関係が変質するなか、中東主要国は武器の調達先の分散に動いています。
UAEは昨年12月、フランスのダッソー社の戦闘機ラファール80機を購入すると決めました。
過去最大の約160億ユーロ(約2兆円)の大型商談です。
直後にUAEが米国から最新鋭のステルス戦闘機F35を購入するための交渉と中断したことが明らかになりました。
価格の高い日本の防衛装備品
日本は2014年に「武器輸出三原則」の制約を取り払って以降、国際武器市場での動きを活発化させています。
しかし実際の受注は小規模に止まり、大口受注はまだありません。
日本の国内市場は小さく、量産が難しいため、開発コストが高止まりしています。
特に外国からの受注による競争がなく、開発に要する期間が長くなってしまいます。そんな中では、軍需産業の健全な発展は困難です。
C-2輸送機
C-2輸送機は日本の川崎重工が開発しています。
米GEのCF6-80C2ターボファンエンジンを搭載し、最大離陸重量141トンの中型輸送機です。
1機あたりのコストは約2憶100万ドルで、2016年から配備が始まりました。
防衛省は現役のC-1、C-130輸送機の後継機として元々40機の配備を予定していましたが、計画が遅れ価格も上昇したため、まだ10機程度しか配備が完了していません。
日本は同機の輸出を切望しています。
同機は世界でも先端的なターボファンエンジンを採用していますが、日本国内の限定的な防衛需要のために中型の機体を採用しており、航続距離も積載能力も際立っているわけではありません。
コストパフォーマンスでは米国のC-17輸送機やEUのA400M輸送機に遠く及びません。
まとめ
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が2022年1月21日まで歴訪した中東で、防衛協力の強化を打ち出しました。
韓国とUAEは2022年1月16日、文氏の訪問に合わせて国防技術協力に関する覚書を交わしました。
韓国防衛事業庁によると、文氏の訪問に合わせ、韓国の防衛装備品大手のハンファシステムなどが生産するミサイル迎撃システムの輸出が決定しました。
契約規模は35億ドル(約4千億円)で、単独兵器の契約としては過去最大です。
日本は2014年に「武器輸出三原則」の制約を取り払って以降、国際武器市場での動きを活発化させています。
しかし実際の受注は小規模に止まり、大口受注はまだありません。
日本の国内市場は小さく、量産が難しいため、開発コストが高止まりしています。