新型コロナウイルス対策の入国者数の上限が緩和され、2022年6月10日には観光目的のビザ発給が始まります。
コロナ禍前に年間4兆8000億円に達したインバウンド(訪日外国人)の消費額は今回の緩和で1.1兆円まで回復するとの試算があります。
ただ、外国人観光客は団体ツアーに限定され、入国手続きや国内での行動管理は厳格なままです。
国際観光客が3月に前年同月比3倍となり回復傾向が目立つなか、日本の遅れが際立っています。
コロナ禍前の宿泊者数は全体の約8割が外国人観光客
2018年に日本に年間753万人が訪れた韓国では、日本行きを希望する人が増えています。
大手旅行代理店のハナツアーによると今年5月30日~6月5日の日本旅行の予約件数は前週比3.8倍に伸びました。
日韓関係の悪化で訪日客が減った時期もありましたが、同社の担当者は「コロナ前のようにビザが不要になれば、正常化が最も早く進みそう」と話しています。
日本の観光業界はコロナ禍で落ち込んだ消費の回復に期待を寄せています。
京王プラザホテル(東京・新宿)の足元の稼働率は40~50%程度にとどまっています。
コロナ禍前の宿泊者数は全体の約8割を外国人観光客が占めていました。
京王電鉄の関係者は「(訪日客の受け入れ再開に)大変期待している」と話しています。
年間1.1兆円程度のインバウンド消費が見込める
第一生命経済研究所首席エコノミストは「現在の入国者数上限でコロナ前と同程度の消費が実現すれば、年間1.1兆円程度のインバウンド消費が見込める」と話しています。
円安も追い風となり、コロナ前のインバウンド消費の5分の1は回復すると見込んでいます。
一方で今回、受け入れを再開する訪日客は添乗員付きの団体客に限定されています。
1日あたり9万人近くが日本を訪れていたコロナ前の水準に戻るには2万人の入国者数の上限撤廃や個人観光客の受け入れ再開が欠かせません。
国際観光客到着数、欧米では5割まで回復
国連世界観光機関(UNWTO)によると2022年3月の国際観光客到着数は前年比3倍に増加しました。
欧米はコロナ前5割まで回復。
一方で「アジア・太平洋は一部の国や地域で依然として不要の渡航を禁止した」(UNWTO)ことで、減少幅は9割減のままです。
国別でみると、日本の減少が突出しています。
3月の国際観光客到着数はドイツがコロナ前19年3月比で5割まで回復した一方、日本は98%減でした。
国際航空運送協会(IATA)は5月、厳格な水際対策を続ける日本と中国を名指しで批判しています。
日本政府に対し入国制限の撤廃を求めていました。
日本の規制は厳しすぎて収益性が見込めない
観光振興と感染対策の両立にも課題があります。
今回、観光庁が発表した訪日客向けのガイドラインでは、旅行会社が団体ツアーの参加者にマスク着用や手指消毒といった対策を徹底させ、民間医療保険に加入するよう求めています。
大手旅行会社幹部は「これほどの確認や対応事項があると収益性は低い」と話しています。
5月の世界経済フォーラムの年次総会で発表された観光競争力ランキングで日本は初の首位となり、世界でも人気の観光地だ。
ロンドンにある日本専門旅行会社、ジャパン・ジャーニーズのジェームズ・グリーンフィールドさんは「顧客はさらなる規制緩和を待っている」と指摘しています。
英リーズ大学で働くウォラウィット・ラサさん(25)は「日本にずっと行きたいと思っているがガイド付きのツアーは高すぎる」と話しています。
外国人観光客の受け入れ再開しても、中国人は来ない
日本が水際対策の緩和に動いても、訪日客やインバウンド消費が急回復するかは不透明です。
理由は、コロナ前の訪日客の3割、インバウンド消費の4割を占めた中国が、ゼロコロナ政策を続けているからです。
海外から中国に入国した人は現在、3週間前後の隔離が求められ、中国人の間では「海外旅行は当分無理」との声が漏れます。
国内の大手百貨店各社は中国語など外国語に対応した人員の確保などには慎重な姿勢を続けています。
まとめ
新型コロナウイルス対策の入国者数の上限が緩和され、2022年6月10日には観光目的のビザ発給が始まります。
コロナ禍前に年間4兆8000億円に達したインバウンド(訪日外国人)の消費額は今回の緩和で1.1兆円まで回復するとの試算があります。
今回、観光庁が発表した訪日客向けのガイドラインでは、旅行会社が団体ツアーの参加者にマスク着用や手指消毒といった対策を徹底させ、民間医療保険に加入するよう求めています。
大手旅行会社幹部は「これほどの確認や対応事項があると収益性は低い」と話しています。
日本が水際対策の緩和に動いても、訪日客やインバウンド消費が急回復するかは不透明です。
理由は、コロナ前の訪日客の3割、インバウンド消費の4割を占めた中国が、ゼロコロナ政策を続けているからです。