暗号資産(仮想通貨)の利用者がアフリカで急増しています。
個人や企業の間での送金や決済などで使われ、1月までの1年間にビットコインを含む仮想通貨の利用者数は25倍になりました。
衝突が続くロシア、ウクライナなどでも利用が増え、価格急落が起きにくくなっています。
金融アセットの一つとして立ち位置を固めつつあります。
アフリカで仮想通貨の利用が15倍に増加
シンガポールに拠点を置く交換所クーコインの調査によると、アフリカで1月までの1年間にビットコインを含む仮想通貨の取引件数は約15倍、利用者数も25倍に急増しています。
物品の売買などの1万ドル未満の取引が9割近くを占めています。
特に増えているのが取引所や金融機関を介さず個人や企業の間で直接やりとりするピア・ツー・ピア(P2P)取引です。
調査会社ユースフルチューリップによると3月、P2Pの取引量ではサハラ砂漠以南のアフリカが7800万ドルと、北米の7400万ドルを超えました。
取引所を介した取引が世界で1日10億ドル前後に対し、P2Pの割合は数%程度です。
5年ほど前はほぼゼロだったP2Pの成長余地は大きい。増加が目立つのがケニアやナイジェリアです。
仮想通貨による貿易決済サービスを手掛けるスタンデージ(東京・港)の足立彰紀社長は「ナイジェリアはドル送金が制限されることがあり、仮想通貨はドルより使い勝手がいいという声すらある」と話します。
ドル建ての銀行口座を持てない人も多く、代替手段として広がりつつあります。
ブロックチェーン(分散型台帳)を使っているため、交換所などの破綻の影響を受けずに利用を続けられる点も評価されています。
ケニアやエジプトなどでも仮想通貨での決済が増えています。
中南米やアジアでも仮想通貨の利用が広がる
中南米やアジアでも仮想通貨の利用が広がります。
ビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルでは納税や飲食店などでの決済に使われています。
ブラジルのリオデジャネイロ市は2023年からビットコインでの不動産関連の税金の支払いを許可すると発表しました。
仮想通貨は寄付の手段として選ばれている
米調査会社TRMによるとロシアの侵攻を受けたウクライナでは、世界から同国政府や非政府組織(NGO)などに3月末までに1億3600万ドル相当の仮想通貨が集まりました。
食料や防弾チョッキの購入に利用されています。
銀行機能が停止しても、インターネットが稼働していれば仮想通貨は使えるため寄付の手段として選ばれています。
交換所ディーカレット(東京・千代田)の前田慶次ディレクターは「(親会社のシンガポールのアンバー・グループ全体で)侵攻後、ロシアからのビットコインの買い注文が多い状態が続いた」と話します。
証拠は見つかっていませんが、ロシアが制裁逃れに使うとの懸念は強いです。
世界に根付きつつある仮想通貨
「投機だけでなく送金・決済などの実需が価格を支えている」とビットフライヤー(東京・港)の金光碧マーケットアナリストはみています。
ビットコイン価格は4万ドル前後で推移しています。
米金融引き締めやウクライナ情勢などで市場に悲観的な見方が広がる中、21年末比の下落率は12%程度にとどまっています。
同じく金融緩和マネーの受け皿となったハイテク株の指標の一つフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落率20%と比べても小さいです。
ただ仮想通貨の送金は把握しにくいため、ケニアなどの政府・中央銀行は警戒しています。
「合法性の担保が重要になる。そのうえで需要が増えるなら、仮想通貨の評価が変わる可能性がある」とマネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは指摘しています。
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