投資信託を通じた家計の円売りが膨らんでいる。2024年1~6月の海外の株式・ファンドの買越額は6.1兆円と同期間の貿易赤字額(3兆8307億円)を上回る見通しです。
新NISAによって月1兆円ペースの円安圧力が継続しています。
原因は貯蓄から投資への流れが加速していることです。
日本国内の金融商品の投資妙味を高めることが欠かせません。
詳しく解説していきます。
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新NISAによって月1兆円ペースの円安圧力
1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用した積み立て投資は長期投資が多く、海外への投資マネーの流れは治まりそうにありません。
月1兆円ペースの円安圧力は続くとの見方が強まっています。
財務省が7月8日発表した対外・対内証券売買契約等の状況によると、国内の投信運用会社による海外株・ファンドの買越額は6月単体で1兆5億円でした。
原因は貯蓄から投資への流れが加速していること
2024年1~6月の合計は同期間として過去最高の6兆1639億円で、年明け以降は月1兆円ペースになります。
主体別にみても銀行(2207億円の買い越し)を上回っています。
年金は9兆4380億円の売り越しで、投信経由の投資が存在感を示しています。
背景にはインフレをきっかけに貯蓄から投資への流れが加速していることです。
NISAなど長期投資は円高要因が働きにくい
日本の居住者がドル建ての株式や債券に投資する投信を為替リスクを回避せずに購入すると、円を売ってドルを買う為替取引が発生します。
このため、ドルの需要が増加し、円の需要が相対的に減少します。
需要と供給の法則により、ドルの価値が上がり、円の価値が下がります。
これが円安の一因となります。
利益確定した資金を日本に戻せば将来的な円高要因になりますが、NISAなど長期投資を前提にした場合、この円高要因が働きにくいです。
日本には2%の利回りを得られる金融商品が少ない
国内の消費者物価指数(CPI、生鮮食品・エネルギー除く)の前年同月比の上昇率は2022年秋以降、2%を超えて推移しています。
日銀が目指す「2%の物価上昇目標」を上回っています。
物価上昇に対応をしようにも、国内には2%の利回りを得られる金融商品が少ないです。
大半の銀行の預金金利は定期(1年、300万円以上)と普通ともに0.1%を下回っています。
日経平均株価の予想配当利回りも1.75%とインフレに負けています。
円安要因は新NISAの他に貿易赤字もある
これまで、日本経済の構造的な円売り要因の一つとして、貿易赤字が指摘されてきました。
原油などの輸入が巨額なためで、1~5月の貿易赤字は3兆4540億円。
6月上・中旬分を合わせても3兆8307億円です。
家計による海外投資はこの金額を上回っており、貿易赤字と並ぶ円売り要因となっています。
日本国内の金融商品の投資妙味を高めることが欠かせない
家計の外国資産への投資は新NISAの影響もあり増えています。
これ自体が悪いというわけではないが、収支上は懸念材料となります。
月1兆円ペースの円売り圧力が和らぐためには株式など国内の金融商品の投資妙味を高めることが欠かせません。