2024年1月から始まった新たな少額投資非課税制度(NISA)をきっかけに投資を始める人が増えています。
日本証券業協会によると証券会社10社で1~3月の新規口座開設数は170万件と前年同期比3.2倍です。
しかし、ネット証券でのNISAでは日米株や投信の手数料がゼロになっており、ただ顧客を獲得しているだけでは収益につながりません。
詳しく解説していきます。
新NISAで「貯蓄から投資へ」の動き
新しいNISAでは非課税期間が無期限となり、1年間に投資できる額も大幅に増加しました。
上限額は主にインデックス型の投資信託が対象の「つみたて投資枠」が年120万円、個別株なども買える「成長投資枠」は年240万円です。
生涯の投資枠は最大1800万円で、うち成長枠は1200万円まで利用できます。
初心者を含めて長年、現預金に滞留していた資金を投資に振り向ける動きが出てきました。
1~3月の累計の買い付け額は4兆6822億円
日本証券業協会は対面証券大手5社とネット証券大手5社それぞれのNISA口座の増減を調べました。
2023年末で新規買い付けが終わったジュニアNISAの口座数は除いています。
1~3月の累計の買い付け額は4兆6822億円と、前年同期比2.9倍に達しています。
首位は楽天証券の520万口座 割合は約35%
大手10社のうち首位は楽天証券でした。
3月末時点で520万程度の口座を獲得し、全体に占める割合は約35%です。
2位はSBI証券が約477万口座で、ネット証券大手2社が口座数で突出しています。
3位以降は野村、SMBC日興、大和と対面証券が続きます。
新NISA口座の半数以上を30歳代以下、性別では女性が5割を超えている
楽天証券は新NISA口座の半数以上を30歳代以下の若者が占め、性別では女性が5割を超えています。
これまで投資に関心のなかった初心者の入り口として新NISAを活用し、他の取引につなげて長期顧客になってもらうことを狙っています。
新NISAの買付対象は投信に50%、国内株に47%
日本証券業協会の調査では新NISAを使った買い付けの傾向も明らかになっています。
金額ベースでは成長投資枠が83%、つみたて投資枠が17%です。
商品別でみると投信に50%、国内株に47%です。
投資枠は広がりましたがフル活用している人は少ないです。
既にNISA口座を持っている約1200人に24年の年間投資計画を聞いたところ、新NISAで可能になった年120万円超を投じる人は16%程度にとどまっています。
新NISAでは証券会社の収益押し上げ効果は限られている
NISAを使った投資額が増えても証券会社の収益押し上げ効果は限られています。
ネット証券でのNISAでは日米株や投信の手数料がゼロになっており、ただ顧客を獲得しているだけではビジネスにならないからです。
新NISAで投資の入り口に立った個人をいかに他の金融サービスに誘導できるかがカギになります。