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エネルギーとしての水素とは?水素と炭素の違い【水素の覇権争い】

エネルギーとしての水素とは?水素と炭素の違い【水素の覇権争い】

出典:浸みわたる水素水


この記事では、「エネルギーとしての水素」について解説していきます。


次世代エネルギーとして注目を浴びている水素ですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

また、現在使用されている炭素との違いは?


この記事を読めば、それらの疑問を解消することができるでしょう。


水素とは?

水素とは?

出典:日本経済新聞社


水素(H)は全宇宙の元素の9割以上を占める、最もありふれた物質です。

地球上にも多く存在していますが、水素そのままではなく、酸素(O)と結びついた水(H2O)の状態であることがほとんどです。


水素に火を近づけて燃やすと大きなエネルギーと水が生まれます。

エネルギーを発するが、燃焼した時に二酸化炭素を排出しないことで大きな注目を浴びています。


自然界では炭素(C)と結びついた炭化水素としても存在しています。

燃料として広く使われているメタンも炭化水素の一種です。

炭化水素は天然ガスや石油、石炭などに多く含まれています。

メタンを燃やすときには、メタンのなかにある炭素と水素が同時に燃えています。


水素のライバル「炭素」

水素を語るには、まず燃料としてのライバルである炭素のことを知る必要があります。

人類の歴史上、最も身近な燃料は炭素でした。

炭素を含む化合物のことを有機物といいますが、生物の体をつくるたんぱく質や炭水化物、脂肪は全て有機物です。つまり炭素を含みます。


動物や植物といった生物の遺骸が地中に閉じ込められ、そこに含まれる炭素は長い時間をかけて濃縮されていきます。

その結果生まれるのが天然ガスや石油、石炭というのが一般的な学説です。

生物の体が地層内でおし固められたものを化石というが、化石が変化し石油などになります。よって「化石燃料」と総称されるわけです。


化石燃料は木材よりエネルギー効率が良く、18世紀から始まる産業革命を支えました。

炭素は燃えるとCO2になる。大気中のCO2は地球表面から発せられる熱を吸収し、地球を温めてしまいます。

これによって問題となっているのが地球温暖化です。

環境を激変させ、生物の生存を脅かす可能性もあるのです。


水素と炭素の違い

水素   炭素
ほとんどが水 地球上の分布 生物の体や化石燃料など
約3万
(気体で1万1000リットル、液体で14リットル)
1キログラム
あたりの発熱量
約8000
燃焼時の排出物 ・二酸化炭素
・一酸化炭素
・水を電気分解
・化石燃料に含まれる炭化水素から分離
取得方法 ・木を切る
・化石燃料を地下から掘る
・電気分解に大量のエネルギーが必要
・炭化水素から分離する際の副産物である二酸化炭素の処理
燃料としての課題 燃やした後の二酸化炭素や一酸化炭素
・水を電気分解する時の電源を再生可能エネルギーで賄う「グリーン水素」に
・すく産物の二酸化炭素を回収し、貯蓄するか再利用して製造過程で二酸化炭素を排出しない「ブルー水素」に
今後 燃焼後の二酸化炭素排出に忌避感が高まる。発電燃料としては石炭・石油から二酸化炭素排出量の比較的少ない天然ガスにシフト




水素の発熱効率は炭素の約4倍

水素は燃えても水しか排出しません。

さらに、1キログラム当たりの発熱量は炭素が約8000キロカロリーなのに対し、水素は約3万キロカロリーと発熱効率もいいです。

水素が夢の燃料と呼ばれる理由はここにあります。


水素普及の課題

水素普及の課題となるのが価格です。現在の流通価格は1キログラム当たり約1100円です。

政府は輸入価格を2030年に330円、将来的には220円に引き下げる目標を掲げています。

安価な生成・輸入方法の開発など、本格普及には技術革新が必要となります。


水素覇権争い~4つの分野~

水素覇権争い~4つの分野~

脱炭素時代の「夢の燃料」として期待されるのが水素です。

石油製品のように世界中で使われるようになるには、サプライチェーン(供給網)づくりが欠かせません。


供給網とは下記の4つの目的をつなげる大きな商流のことです。

  1. つくる
  2. 運ぶ・ためる
  3. 売る
  4. 使う


米国、欧州、中国、そして日本の4軸を中心に水素の供給網を広く、太くする試みが始まっています。


それぞれわかりやすく解説していきます。


1.水素を「つくる」

水素を「つくる」

出典:日本経済新聞社


「つくる」の世界3強は米エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、仏エア・リキード、独リンデです。

いずれも産業ガス大手で、水素を成長分野とみて海外展開にも積極的です。さらに中国勢が3強に続きます。


東華エネルギー(江蘇省)はプロパンガスから、美錦エネルギー(山西省)は石炭をガスに加工して水素を取り出す技術に力を注いでいます。


水素は製造過程によって大きく3つに色分けされます。

天然ガスなどの化石燃料から取り出してつくる水素のうち、製造過程で出る二酸化炭素(CO2)を大気中に放出するものを「グレー水素」と呼びます。

CO2を回収・貯蔵すると「ブルー水素」、再生エネルギー由来の電気で水を分解してつくるのが「グリーン水素」です。

グリーン、ブルー、グレーの順番で環境に優しく生成コストは高くなります。


3強や中国勢など、多くの水素関連企業はまずグレーやブルーを使って水素の需要を増やし、市場をつくりながら技術開発を進める絵を描いています。


グリーン水素の開発競争も活発になってきました。ここには技術で先行した日本勢が多くからんでいます。


旭化成エンジニアリングは福島県浪江町の水素関連施設向けに、世界最大級の製造装置を開発しました。

日立造船や東芝エネルギーシステムズも既存設備を増強しています。

欧州勢では独シーメンス・エナジーやノルウェーのネルなどが装置の大型化を進めています。

英ITMパワーは住友商事と提携し、市場開拓へタッグを組んでいます。


2.水素を「運ぶ・ためる」

水素を「運ぶ・ためる」

出典:日本経済新聞社


製造拠点から「運ぶ・ためる」のにも技術が必要です。

水素は気体の中でも軽く、一度に運べる量が少ないのが特徴です。

貯蔵しやすいように液化するにはマイナス253度まで下げた状態を長時間維持しないといけません。


川崎重工業はオーストラリアから日本に水素を運ぶ世界初の液化水素運搬船を開発しました。

2030年までに大型化して商用化を目指しています。

千代田化工建設は水素とトルエンを化学反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)という液体にして運ぶ技術を開発しました。

MCHにすれば既存の石油タンクやタンカーを使え、安全性も高いです。


3.水素を「売る」

水素を「売る」

出典:日本経済新聞社


運んだ水素は「売る」企業に渡されます。

販売場所の代表格は水素ステーションです。水素を動力源にする燃料電池車(FCV)の普及をにらみ、水素ステーションを建てる動きが国内外で広がってきました。

ENEOSホールディングスは20年10月時点で44カ所の水素ステーションを持ちます。

岩谷産業は20年度末で約50カ所に展開しています。


韓国SKグループは1兆6000億ウォン(約1550億円)で水素関連企業の米プラグパワーの株式9・9%を取得しました。

プラグパワーは1997年に設立。液化水素プラントや水素ステーションといった水素燃料の供給網の構築でノウハウを持っています。

これを取り込み、25年までに水素ステーションを100カ所整備する予定です。


4.水素を「使う」

水素を「使う」

出典:日本経済新聞社


「使う」先は主にFCVです。

水素と酸素の反応で発生する電気で走り、走行時に出るのは水だけです。


技術の先頭をトヨタ自動車が走っています。14年に世界初のFCV「ミライ」を世に送り出しました。

ホンダは16年に「クラリティ フューエル セル」を発売しました。欧米や中国メーカーが電気自動車(EV)に注力する中、日本勢は実用化で一歩先を行きます。



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