さまざまな国のユーチューバーが源泉徴収されることになりました。
総収益の最大24%が源泉徴収されることになり、大きな変更となります。
インドなど一部の国からは、反発の声が上がっています。
日本のユーチューバーへの影響はないのでしょうか?
ユーチューバーが源泉徴収されることに
出典:日本経済新聞社
動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営する米グーグルは近く、米国外のユーチューバーへの支払いについて、米国分の税金を天引きする源泉徴収を始めます。
条約により日本居住者への影響は少ないが、インドなどユーザーの手取りが減りそうな国では反発も出ています。
ネットサービスの実態に合った税務処理の変更として注目されています。
総収益の最大24%が源泉徴収される
「米国政府が収益を吸い上げようとしている。税金はグーグルから取るべきで、私たちからではない」。
2021年3月、インドのユーチューバーがネット上で怒りの声を上げました。
きっかけはグーグルが各国のユーチューバーに送った「重要な変更」の通知です。
ユーチューバーへの支払いについて6月にも、米国での税金分を源泉徴収するとの内容でした。
税務情報の提出などの手続きを取らなければ「総収益の最大24%が源泉徴収される場合がある」と説明しました。
ロイヤルティーとみなされるよう利用規約が更新される
ユーチューバーは、投稿した動画についた広告の再生数などに応じグーグルからお金を受け取ります。
同社は変更理由を「ユーチューブからの収益が米国税法の観点からロイヤルティーとみなされるよう利用規約が更新される」としました。
ロイヤルティーとは、著作物などに対する使用料のことだ。ユーチューバーが著作物(動画)を提供し、グーグルが使用料を払うという整理になるとみられます。
日本への影響はない
変更の影響はユーチューバーの居住国によって異なります。
日本は米国と結ぶ租税条約によって免税となるため、規約変更前と受け取る額は変わりません。
一方、米国と条約が未締結のブラジルや条約があっても免税にならないインドなどでは、各自が受け取るお金が減る可能性があります。
グーグルは理由を公表していない
グーグルが税務処理の手法を変えたのでしょうか?
同社は詳しい理由を公表していません。
国際税務に詳しい木村浩之弁護士は「日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)が指導したか、グーグルが自主的に納税方法を変更したかのどちらかだろう」と説明しています。
今回の変更で最も得をするのは米国政府です。
グーグルは源泉徴収分をそのまま納税するため収益は増えず、むしろ事務コストがかさむ可能性があります。
逆にIRSはグーグルを通じて効率的に税金が集められます。
デジタル課税の流れに沿った変更
ユーチューバーらが動揺する一方、「ネットサービスの実態に合った税務処理だ」と評価する声もあります。
アーンスト・アンド・ヤング(EY)の秦正彦米国弁護士は「今回の変更は、動画が見られサービスが消費された場所(米国)で得られた利益について課税するというものだ。近年、世界的な議論となっているデジタル課税の流れに沿っている」と指摘しています。
日本経済新聞はグーグルとIRSに今回の変更理由などを尋ねましたが、グーグルは「米国税法に基づき税金を源泉徴収する義務がある」などと回答。
IRSは期限までに答えませんでした。