中国の華為技術(ファーウェイ)がスマートフォンで自国産の部品調達を増やしています。
8月発売の新機種では中国製部品の比率が金額ベースで47%となり、3年前の機種から18ポイント上昇しました。
回路線幅7ナノメートル世代の半導体を搭載するなど、米政府の輸出規制下で急速に技術力を高めています。
詳しく解説していきます。
60Proのシェア1位は47%で中国
ファーウェイが8月に中国で発売した上位機種「Mate60Pro」を分解して部品コストを分析したところ、部品原価の総額は422ドル(約6万円)だったことが分かりました。
国別シェアでは判明したものだけで中国製が47%と最も高いです。
米国の規制の影響がまだ小さかった2020年秋にファーウェイが発売した同価格帯のスマホ「Mate40Pro」に比べて中国製部品の比率は18ポイント上昇しています。
有機ELディスプレー「韓国⇒中国」
最も単価が高い有機ELディスプレーの調達先が、40Proの韓国LGディスプレーから60Proでは中国・京東方科技集団(BOE)に切り替わった影響が大きいです。
BOEは品質への評価を高めることでスマホ用ディスプレー市場におけるLGとサムスン電子の寡占を崩しつつあるものの、量産能力では韓国勢に劣っています。
ファーウェイの出荷台数が回復した時、どこまで供給できるかが今後の課題です。
タッチパネル関連「米国⇒中国」
40Proで米シナプティクス製だったタッチパネル関連品も、60Proでは中国製に置き換わりました。
こうした中国製部品の増加や高機能化に伴って60Proの中国製部品は金額ベースで計198ドルとなり、40Proに比べ約9割増加しています。
半導体には中国製の7ナノ世代品が使われている
60Proは発売直後から高速通信規格「5G」に対応し、メイン半導体には中国製の7ナノ世代品が使われているとの見方が広がっていました。
台湾や韓国、米国の大手にしかつくれない半導体で、中国勢による開発は難しいとされていたからです。
実際、20年発売の40Proのメイン半導体に使われた5ナノ世代品はファーウェイ子会社の海思半導体(ハイシリコン)が設計したものの、生産は台湾積体電路製造(TSMC)に委託していました。
今回の分解調査で60Proのメイン半導体はハイシリコンが設計した7ナノ世代品で、製造は中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)が担ったとみられています。
旧型装置を使ったとみられている
SMICは製造プロセスの要となる半導体露光装置に、米国の輸出規制の対象に含まれない旧型装置を使ったとみられています。
基板の位置をわずかにずらしながら複数回重ねて光を照射することで、旧型装置でも7ナノ世代品に相当する回路をシリコンウエハーの上に形成したようです。
通常の半導体露光装置の使い方とは異なるため製造効率や歩留まりは悪くなります。
中国の製造能力を国内外に見せつけるため、採算を度外視したようです。
中国の半導体製造は5年遅れ
最先端技術が搭載されることが多い米アップルのiPhoneに7ナノ世代品が初めて搭載されたのは2018年でした。
中国の自前技術だと7年は遅れると言われていましたが、5年で追いついたことになります。
日本のシェアが低下し、韓国のシェアが上昇
60Proの分解調査では、日本勢の金額ベースの部品シェアが1%となり、40Proの19%から大きく低下したことも判明しました。
カメラのイメージセンサーがソニーグループ製からサムスン製に切り替わった影響が大きいです。
一方、韓国勢のシェアは36%と3年前の機種に比べ5ポイント上昇しました。
まとめ
ファーウェイが8月に中国で発売した上位機種「Mate60Pro」を分解して部品コストを分析したところ、国別シェアでは判明したものだけで中国製が47%と最も高いことが分かりました。
米国の規制の影響がまだ小さかった2020年秋にファーウェイが発売した同価格帯のスマホ「Mate40Pro」に比べて中国製部品の比率は18ポイント上昇しました。
有機ELディスプレーは「韓国⇒中国」、タッチパネル関連は「米国⇒中国」とそれぞれ置き換わっています。
60Proは発売直後から高速通信規格「5G」に対応し、メイン半導体には中国製の7ナノ世代品が使われているとの見方が広がっていました。
今回の分解調査で60Proのメイン半導体はハイシリコンが設計した7ナノ世代品で、製造は中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)が担ったとみられています。
米国の輸出規制で落ち込んだファーウェイのスマホ事業は回復基調にあります。
米調査会社IDCによると2023年4~6月の中国スマホ出荷台数に占めるシェアは13%となり、前年同期から6ポイント回復しました。
先端半導体の調達に道筋をつけたことで、同社のスマホ事業は中国国内で勢いを取り戻す可能性があります。