ウイスキーの値上がりが続いています。
海外を中心に国産ウイスキーの評価が高まり、一部の高級銘柄は過去5年で4割近くも高騰しました。
熟成の必要なウイスキーは品薄となっても急には供給量を増やせず、根強いブームが価格を押し上げています。
詳しく解説していきます。
国産ウイスキー値上がり 5年で2割ほど
全国のスーパーなどの販売データを集めた情報によると、ウイスキー・ブランデー類の店頭平均価格は2023年10月に1624円と5年前の2018年10月より2割ほど上がりました。
1人あたりの購入金額を銘柄別に分析すると、比較的高価な国産ウイスキーの上昇が目立ちます。
過去5年でサントリーの「響(ジャパニーズハーモニー)」は4割弱、「山崎」(700ミリリットル)は25%程度上がりました。
アサヒグループホールディングス(HD)傘下のニッカウヰスキーで高価格帯の「余市」や「宮城峡」なども値上がりしています。
サントリーは生産能力の増強などによるコスト増を理由に、2022年4月出荷分から山崎の希望小売価格を7%上げましたが、市場の平均価格はこれを上回って推移しています。
ウイスキーの輸出額は10年で22倍
背景には日本のウイスキーが国内外で脚光を浴び、人気銘柄で供給が需要に追いついていないことがあります。
国産ウイスキーは2000年代から10年代にかけて海外で評価を高めました。
国際的な品評会で日本勢が金賞を受賞するなど躍進し、品質の高いジャパニーズのブランドを世界で確立しました。
ブームのけん引役となったのが、サントリーの「響」や「山崎」、ニッカウヰスキーの「竹鶴」といった銘柄です。
財務省の貿易統計では、ウイスキーの輸出額は2022年に560億円と10年前比で22倍に膨らみました。
数量ベースでも同7倍です。
蒸留所の生産設備増強などに700億円を投じる
長期的な品薄は「中古品」のウイスキー市場にも波及しています。
人気銘柄の「山崎12年」のメーカーの希望小売価格は1万円(税別)ですが、販売価格は足元で1万8000円程度まで値上がりしています。
増える需要に対応するため、2013年以降は蒸留所の生産設備増強などに700億円を投じてきています。
ただ、ウイスキーを市場で販売するまでには熟成期間が欠かせず、工業製品のように簡単に生産量を増やせません。
2000年代前半まで国内のウイスキー市場は低迷し、各社がその時期に供給を絞ったことも希少性を高めています。
値上がりは高級品だけではなく多くの銘柄に広がっている
値上がりは高級品だけではなく多くの銘柄に広がってきています。
サントリーが原材料価格の高騰などを理由に7月出荷分から値上げした「角瓶」は2018年10月比で2割弱高くなりました。
スコッチなどの輸入ウイスキーも輸送費や原材料の高騰で1~2割程度高いです。
国内でもハイボール人気により、ウイスキーの需要は増え続けています。
焼酎類とウイスキー・ブランデー類をあわせた購入金額の推移をみると、ウイスキーやブランデーの占める割合は5年前の3割弱から足元で4割弱まで伸びています。
サントリーウイスキー 響30年 16万円から36万円
「サントリーウイスキー 響30年」はこれまでの税別16万円から36万円、「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年」や「同 白州12年」は1万円から1万5000円になります。
響、山崎、白州、知多は2022年4月以来2年ぶりの値上げになります。
足元では中国の景気減速などでウイスキー需要がやや縮小しているという見方もありますが、今のところ価格には反映されていません。