「アクティブ」と呼ばれる銘柄選別型の上場投資信託(ETF)への資金の流れが加速しています。
米国を中心とした世界の純資産残高は5年で約6倍に増え、100兆円に迫っています。
売買のしやすさやコストの低さなどで人気を集め、運用会社も非上場投信からの転換を急いでいます。
市場に占める金融派生商品(デリバティブ)を使った商品の割合も拡大しているため、マーケットへの不安材料にもなっています。
詳しく解説していきます。
アクティブ運用型ETFとは
アクティブ運用型ETFとは、株価指数など特定の指標に連動した投資成果を目指すパッシブ運用型ETFとは異なり、連動対象となる指標が存在しないETFのことをいいます。
アクティブ運用型ETFは、運用会社やファンドマネージャーが、予め定められた運用方針に沿って、その専門知識を生かしながら組入銘柄や資産配分を選択することで、ベンチマークを上回る投資成果を得ることを目指します。
リアルタイムで動く価格で取引でき、1日に1回算出される基準価格で売買する非上場のアクティブ投信に比べ利便性も高いです。
世界のアクティブETFの純資産残高は約97兆円
米調査会社モーニングスターによると、世界のアクティブETFの純資産残高は11月時点で6870億ドル(約97兆円)と過去最高を更新しました。
11月の純流入額は269億ドルと月間ベースで最高でした。
アクティブETFの魅力は信託報酬の低さ
アクティブETFへ資金が集まっている理由の一つが運用手数料に相当する信託報酬の低さです。
最大市場である米国のアクティブETFの信託報酬は10月末時点で0.4%です。
市場で取引できるため販売会社に支払う手数料がかからず、非上場のアクティブ投信の0.6%に対して一貫して低コストを維持しています。
種類が豊富で、どのような相場でも受け皿となるアクティブETFがある
2020~2021年にかけては世界的な金融緩和を背景に、米テック株に集中投資する米資産運用会社アーク・インベストメント・マネジメントのETFが人気を集めました。
2022年以降の金融引き締めでテック株相場が崩れると、マネーの受け皿となったのがオプション取引を使ったETFでした。
種類が豊富で、どのような相場でも受け皿となるアクティブETFがあることが残高増を勢いづかせる要因となっています。
アクティブETFはパッシブETFの約3倍
モーニングスターによると、今年新規設定した米アクティブETFは374本と、パッシブETF(138本)の約3倍ほどあります。
2019年に米証券取引委員会が非上場投信からETFへの転換を容易にしたことも追い風となっています。
当初は新興運用会社が多かったですが、足元ではJPモルガンAMといった老舗でも転換が相次いでいます。
バンガードの運用構造の特許が切れ、さらに拡大が見込まれる
2023年5月には運用大手バンガードが20年以上保有していたETFの運用構造の特許が切れました。
これによりライセンス料を払う必要がなくなり、他社も運用コストが低い同手法を使いやすくなります。
フィデリティなどが同手法によるアクティブETFの上場を申請中で、今後さらに拡大が見込まれます。
アクティブETFに資金が集中しすぎる弊害
もっとも、特定のアクティブETFに資金が集中しすぎると、相場全体に与える影響も大きくなります。
新型コロナウイルス禍ではアークの動向に注目した個人が保有銘柄に殺到し、株価が乱高下しました。
懸念されているのはカバードコールETFによる影響です。
コールの売りが増えるとオプション価格の下落を通じて株価の予想変動率が下がります。
S&P500の予想変動率を示すVIX指数、ナスダック100株価指数版のVXN指数は12月中旬に約4年ぶりの低水準を付けました。
「恐怖指数」とも呼ばれるこれらの指標が投資家心理からかけ離れれば、相場の波乱要因になりかねません。