日銀のマイナス金利政策解除を受けて、影響が大きい住宅ローンが心配されています。
住宅ローンは大きく分けて、返済中の金利が一定期間や完済まで変わらない固定型と半年ごとなどに金利を見直される変動型があります。
特に注意が必要なのが、変動型を借りている世帯です。
金利が今後上昇した場合に返済負担が増えて家計が行き詰まるリスクに備えて、「固定型に借り換えること」や「繰り上げ返済」を視野に入れる必要がありそうです。
詳しく解説していきます。
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住宅ローンの貸出残高のうち7割近くが変動型
マイナス金利政策が2016年2月に導入されて以降、変動型の金利は低下してきました。
2024年3月は大手銀行で年0.3~0.4%台、ネット銀行では様々な割引を利用すると年0.1%台まで下がる商品もあります。
金利の低下とともに変動型を選ぶ人は増加しました。
国土交通省の直近の調査によると、貸出残高のうち7割近くを変動型が占めています。
変動金利は日銀の政策金利の影響を受けやすい
変動型の金利は各銀行が決める短期プライムレート(優良企業向けの1年未満の貸出金利)に一定幅を上乗せした「基準金利」から、借りる人の収入や購入物件などに応じて「優遇幅」を差し引いて決まることが多いです。
短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を受けやすいです。
日銀は当面緩和的な環境が続くとしており、政策金利が急ピッチで上がらなければ変動型への影響は限られそうです。
毎月の返済額の見直しは原則5年ごと、返済額を引き上げる際は上限を25%増までとする「5年・125%ルール」がある銀行も多いです。
仮に変動金利が上昇しても、月の返済額がすぐに増えることは考えにくいとの見方もあります。
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対策の1つ目 金利タイプを変動型から固定型に変更
ただ住宅ローンの返済は20年、30年といった長期にわたります。
物価上昇率2%の状態が持続し、日銀が金融緩和を徐々に縮小すれば変動金利も上昇に向かいます。
物価上昇率が2%なら変動金利も2%程度の上昇があり得ると想定し、家計のリスク管理をする必要があります。
変動金利が現在の水準から2%程度上昇すると、ここ数年内に借りた人の適用金利はおおむね2%台前半から半ばになります。
毎月の返済が厳しくなる世帯は、金利タイプを変動型から固定型に変更することも選択肢に入れる必要があります
全期間固定型「フラット35」の3月の金利は年1.84%
固定型は金利が完済まで一定の全期間固定型、当初10年などは一定の固定期間選択型があります。
住宅金融支援機構が手掛ける全期間固定型「フラット35」の3月の金利は年1.84%(融資率9割以下)が最も多く、2%を下回っています。
民間の商品にも同水準の金利があります。
全期間固定型を利用できるのは一般に新たに借りる場合なので、変更するにはローンを借り換える必要があります。
具体的には別の銀行で全期間固定型を借り、変動型を全額返済することです。
固定型は通常、変動型より金利が高いため借り換えで返済額は増えますが、金利上昇時の返済額の増加幅を抑えられるメリットがあります。
ローン残高が多く、残りの返済期間が長いほど借り換え効果は大きい
ローン残高が多く、残りの返済期間が長いほど借り換え効果は大きくなります。
逆に返済期間が10年以下の場合は、借換費用の負担が相対的に重くなります。
残りの期間が約20年以下なら、全期間固定型より金利が低い10年などの固定期間選択型が選択肢になります。
固定期間終了後の返済期間が短ければ金利変動の影響は小さいからです。
変動型から固定期間選択型への変更は同じ金融機関でも一般に可能で、その場合は費用も少なく済みます。
対策の2つ目 繰り上げ返済
住宅ローンの金利上昇に対して個人が取れるもう一つの対策は繰り上げ返済です。
毎月の返済とは別に元金の一定額を前倒しで返済することです。
返済した分の利息がなくなるため、金利上昇時の返済額の増加幅を抑えることができます。
実際に金利が上がってから対応しても、一定の効果は出ます。
ただ繰り上げ返済で効果を得るには一定規模の資金が必要になります。
2023年6月に全国の男女を対象に実施したオンライン調査で、住宅ローンがある人に預貯金額とローン残高を聞いたところ、ローン残高に対して預貯金が1割未満の人が50%強を占めました。
金利上昇局面に繰り上げ返済で対応できる人は限られそうです。
変動型で借り続けるなら、早めに準備することが大切です。
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