夫婦仲が悪くなり、一緒にいるのが嫌になると「今すぐにでも離婚したい」と思うでしょうが、ちょっと待ってください。
民法には「互いに協力し扶助しなければならない」義務があり、お金をもらい続けることが出来るかもしれないのです。
この記事では、婚姻費用の「相場」や「請求方法」、「もらい続ける方法」について解説しています。
-
離婚を考えたら読むべきおすすめの本7選【2024年版】
夫婦生活に不満を募らせ、離婚を考えたことのある人もいるでしょう。しかし、離婚というとなんとなく悪いイメージを持ち、誰かに相談できずに一人で抱え込む人が多いです。この記事では、離婚を考えたら読むべきおす ...
続きを見る
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が別居する際などに、収入が少ない側が収入の多い側に支払いを求めることができる生活費のことです。
婚姻費用には、日用品の購入代金、衣料費、交通費、交際費、住居費、食費、光熱費、子供の養育費、医療費などが含まれます。
婚姻費用は、たとえ別居して離婚協議中であっても、離婚が成立するまでは法律上の夫婦ですので、協力扶助義務は消滅しません。
そのため、婚姻費用を分担して負担する義務も続いています。
婚姻費用が発生するケース
婚姻費用が発生することの多いのは以下のようなケースです。
- 収入の多い側が生活費を家にいれない場合
- 別居した場合・別居して子供を育てている場合
詳しく解説していきます。
1.収入の多い側が生活費を家庭にいれない場合
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。(民法752条)
したがって、夫婦のうち、収入の多い側は少ない側へ生活費を払う必要があるのです。
同居中しているだけでは義務を果たしていることにはなりません。
生活費を受け取っておらず、生活ができない場合は、収入の少ない側は収入が多い側に対して婚姻費用の請求が可能です。
2.別居した場合・別居して子供を育てている場合
別居中であっても収入が多い側は、収入が少ない側を扶助する義務があるため、婚姻費用が発生します。
離婚をしない限り、夫婦の扶養義務はなくならないためです。
また、婚姻費用には子供を養育するための費用も含まれます。
婚姻費用の請求が認められないケース
婚姻費用の請求が認められないのは以下のようなケースです。
- 自分から勝手に別居した場合
- 自分が別居する原因を作った場合
- 相手よりも収入が高い場合
- 相手に支払い能力がない場合
詳しく解説していきます。
1.自分から勝手に別居した場合
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない義務があります。(民法第752条)
相手が別居する原因を作ったわけでもなく、自分から勝手に出て行った場合は婚姻費用分担請求をしても認められません。
自分から義務に違反しておきながら、権利を主張しても、身勝手な人だと判断されてしまいます。
調停を申し立てても婚姻費用を支払ってもらえない可能性が高いです。
2.自分が別居する原因を作った場合
不倫やDV、モラハラなどにより自ら夫婦関係を破綻させてしまった場合も、婚姻費用の請求は認められません。
夫婦関係が破綻に至る原因を作った「有責配偶者」でありながら、婚姻費用の分担を請求することは正当な理由とは認められないからです。
たとえ請求が認められたとしても、金額は少なくなります。
3.相手よりも収入が高い場合
請求相手よりも自分の収入が高ければ、基本的に婚姻費用の請求は認められません。
婚姻費用とは、夫婦のうち収入の少ない側が収入の高い側に対して請求できる費用だからです。
ただし、子どもがいる場合は子どもの生活費について、いくらかの分担が認められるケースが多いです。
4.相手に支払い能力がない場合
請求相手が病気や介護などによって働けないために収入がなかったり、生活保護を受けていたりするなど、支払い能力がなければ婚姻費用の分担請求はできません。
支払い能力がないとをわかりながら請求が認められても、実際に支払われる可能性は極めて低くいです。
婚姻費用の相場
収入や収入格差、家庭環境によって異なりますが、月額6万~10万円が相場です。
しかし、双方が合意すれば相場にこだわる必要はなく、いくらにしてもかまいません。
話し合いで決められない場合には、家庭裁判所で婚姻費用分担請求調停を申し立て、調停委員に間に入ってもらって取り決めます。
話し合いで解決できなければ、審判に移行し、審判官が婚姻費用の金額を決定します。
婚姻費用の支払い期間
婚姻費用の支払い期間は、婚姻費用を請求した時点から、離婚が成立するまでです。
離婚成立までは夫婦関係は続き、扶養義務も続くため、婚姻費用の支払い義務もあり続けます。
婚姻費用の支払い義務は遡っては発生しません。
請求時点でしか発生しないため、できるだけ速やかに請求した方がいいです。
婚姻費用の注意点
婚姻費用の支払い義務は請求して初めて発生するものです。
別居すれば自動的に発生するものではなく、請求しない限り相手に支払い義務はありません。
婚姻費用を支払ってもらうためにも、必ず相手に請求しましょう。
相手が応じなければ、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てましょう。
すでに離婚調停を申し立てていても、別に申し立てる必要があります。
婚姻費用の請求方法
婚姻費用の請求方法は主に下記の3つです。
- 話し合って請求する
- 内容証明を送付して請求する
- 婚姻費用分担請求調停を申し立てる
詳しく解説していきます。
1.話し合って請求する
婚姻費用を請求する場合、一番最初に行うのが話し合いによる請求でしょう。
この時、月額を決め、「合意書」を作成することをお勧めします。
また合意書を「公正証書」にしておくと後に役立つかもしれません。
公正証書とは、公正証書とは、私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことです。
離婚協議書などをより証拠力の強い公文書にすることができます。
この公正証書に「強制執行認諾条項」を入れておくと、相手が不払いを起こしたときにすぐに給料などの差押えを行うことが可能です。
2.内容証明を送付して請求する
相手が話し合いに応じず、すでに別居しているような場合には内容証明郵便を送付して請求する方法が有力です。
ただし、内容証明郵便そのものには強制力がないので、相手が無視するケースも有ると思います。
その場合、婚姻費用分担請求調停を申し立てなければなりません。
3.婚姻費用分担請求調停を申し立てる
相手が婚姻費用の支払いに応じない場合、相手の居住地を管轄する家庭裁判所で婚姻費用分担請求調停を申し立てましょう。
調停では、男女2名の調停委員が間に入って婚姻費用の支払いについて話し合いをすることになります。
お互いの収入証明書を提出して相場の金額を決めていきます。
婚姻費用分担請求調停の申し立て方法と流れ
調停は通常、以下の流れで進みます。
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 複数回の調停
- 調停成立
詳しく解説していきます。
1.家庭裁判所に調停を申し立てる
婚姻費用減額調停は家庭裁判所に申し立てます。
申し立てる裁判所は、自分の所在地ではなく、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」となります。
メモ
2.複数回の調停
婚姻費用分担請求調停の申し立てから調停成立までは、平均して3~4か月かかります。
調停で解決せず、審判に移行した場合、更なる手続きが必要になるため、半年以上の時間がかかる可能性もあります。
婚姻費用は調停申立時から支払い対象となるため、調停が長引いても受け取れる婚姻費用が減ってしまうという事はありません。
3.調停成立
双方が合意できる条件が整えば、調停成立です。
調停で決まった内容は調停調書に記載され、それぞれに交付されます。
調停調書があれば、万が一相手方が支払いを拒否した場合でも強制執行をおこなうことができます。
婚姻費用をもらい続ける方法
婚姻費用を受け取る側は、なるべく長い期間もらい続けて得をしたいと思う方も多いのではないでしょうか?
ここからは婚姻費用をなるべく長期でもらい続ける方法を紹介していきます。
婚姻費用をもらい続ける具体的な方法は主に下記の4つです。
- 別居期間を引き延ばす
- 離婚に応じない
- 離婚協議を長引かせる
- 夫婦としての実態を作る
詳しく解説していきます。
1.別居期間を引き延ばす
別居期間を引き延ばすと、その分婚姻費用も長くもらい続けることができます。
婚姻費用を求めるケースの多くが、夫婦が別居して家計がそれぞれに分かれてしまったときだからです。
再び同居して家計が一つになれば、婚姻費用は受け取ることができなくなります。
離婚する予定でも、別居が続く限りは婚姻費用の分担義務は発生し続けます。
2.離婚に応じない
頑なに離婚に応じないのも、婚姻費用をもらい続ける方法の一つです。
別居が長期に及ぶと、婚姻費用を拠出している方が「これ以上支払い続けるのは厳しい」と感じ、離婚を求めてくる場合があります。
しかしそこで離婚を認めてしまうと、婚姻費用の受け取る権利は終了してしまいます。
ただし別居が長期に及ぶと、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と判断されて裁判で離婚が認められる可能性があります。
しかし、具体的な別居期間には明確な基準はありません。
3.離婚協議を長引かせる
離婚協議を長引かせるのも婚姻費用をもらい続けるのに有効です。
離婚が成立しないかぎり、婚姻費用を受け取り続けることができるからです。
婚姻費用を受け取る側からすれば、早期に離婚を成立させたい事情がない限りは、離婚協議を早く終わらせたいメリットはありません。
4.夫婦としての実態を作る
婚姻費用をもらい続けるには、夫婦としての実態があることを証明する必要があります。
婚姻費用を受け取るには「婚姻関係はまだ破綻していない」という状態でなければならないためです。
定期的に配偶者と連絡を取るなど、関係修復のための努力を形だけでもとっておくことをお勧めします。