2022年1月の貿易収支は2・1兆円の赤字と6カ月連続の赤字となりました。
原油高を背景に、赤字額は14年1月(2・7兆円)に次ぐ過去2番目の大きさに膨らみました。
アベノミクスで内需が底堅かった14年と異なり、長引く新型コロナウイルス禍からの回復力は力強さを欠いています。
一段の資源高を起点に、赤字が長期化する可能性が高まっています。
2022年1月の貿易収支は2兆1910億円の赤字
財務省が2022年2月17日発表した貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆1910億円の赤字でした。
赤字額が2兆円を超えるのは14年1月以来、8年ぶりです。
主因は原油などエネルギー価格の高騰を背景にした輸入額の増加で、1月は前年同月比39・6%増の8・5兆円。
3カ月連続で過去最高を更新しました。
エネルギー関連以外でも、鉄鋼や半導体電子部品、医薬品といった幅広い品目で輸入額は増えました。
日銀によると、1月の輸入物価の上昇率は円ベースで前年同月比37・5%と、ドルをはじめとした契約通貨ベースの28・0%を上回ります。
円安も輸入額を押し上げる要因になりました。
中国からの輸入額は23・7%増の2・1兆円で、過去最高
国別でみると中国からの輸入額は23・7%増の2・1兆円で、過去最高を更新しました。
2月1日の春節(旧正月)を挟む大型連休を前に、日本企業が在庫確保を急いだことが背景にあるようです。
中国からの輸入増に伴って、対アジアの貿易収支も6051億円の赤字と20カ月ぶりの赤字に転落しました。
貿易赤字が原油高で定着する可能性
農林中金総合研究所は「貿易赤字の拡大は、為替の影響以上に原油など第1次産品の高止まりの影響が大きい」と指摘しています。
ウクライナ情勢次第で「貿易赤字は今年いっぱい続いてもおかしくない」と話します。
SMBC日興証券も「原油は脱炭素の動きもあって供給が伸びていかず、価格の高止まりが続く公算が大きい」。貿易赤字は「22年前半まで続く可能性がある」としています。
輸出の先行きにも不透明感が漂ってきた
22年1月の自動車輸出は金額ベースでは1・0%減でしたが、数量ベースでは11・7%減りました。
車輸出は新型コロナ禍に伴うサプライチェーン(供給網)混乱が一服し、21年後半にかけて回復傾向にありました。
しかしオミクロン型の感染拡大に伴い、部品供給が国内外で再び停滞し始めた恐れがあります。
ゼロコロナ政策で中国の消費が低迷しており、日本からの輸入吸収力が弱くなっています。
車以外で中国向け輸出の鈍化もあるとみられています。
日本国内の消費は回復していない
オミクロン型の感染拡大などで日本国内の消費の戻りは鈍いです。
日銀によると、21年12月の実質消費活動指数(2015年=100、季節調整値)は95で、貿易赤字が最大だった14年1月の103を下回っています。
消費増税前で消費財の輸入が活発だった14年1月と異なり、外的要因で赤字が拡大しているのがいまの構図といえます。
みずほ証券は「企業は資源など輸入価格の上昇を輸出価格に転嫁できていない。輸出価格の上昇のしにくさが14年当時との違いだ」と話します。
輸出入両面で、日本の交易条件が悪化しているのが足元の実態といえそうです。
まとめ
財務省が2022年2月17日発表した貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆1910億円の赤字でした。
赤字額が2兆円を超えるのは14年1月以来、8年ぶりです。
主因は原油などエネルギー価格の高騰を背景にした輸入額の増加で、1月は前年同月比39・6%増の8・5兆円。
国別でみると中国からの輸入額は23・7%増の2・1兆円で、過去最高を更新しました。