日本経済研究センターは2022年12月14日、中国の名目国内総生産(GDP)が米国を逆転しないとの試算を発表しました。
昨年までは2033年に逆転すると予測していました。
新型コロナウイルスの封じ込めを狙うゼロコロナ政策の失敗や、米国の対中輸出規制強化で中国の成長率が伸び悩むとして見直しました。
すでに人口減少も始まっており、米中逆転は起きそうにありません。
詳しく解説していきます。
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米国と中国のGDP、逆転不可能に
日本経済研究センターは毎年12月をメドに、直近の政策や経済情勢を織り込んだ推計値を公表しています。
アジア・太平洋18カ国・地域の2035年までの経済成長見通しをまとめました。
新型コロナ流行初期の2020年の予測では、中国が感染の早期封じ込めでいち早く経済の正常化に着手した結果、2028年にも米中逆転が起こると推計していました。
それが、2021年の予測では中国政府によるIT(情報技術)規制の強化が技術革新を阻むと想定、逆転時期は2033年にずれ込むと変更しました。
2022年の最新予測は、中国経済の成長率がさらに下振れする内容となりました。
2030年代の実質成長率は3%を割り込み、2035年は2.2%まで鈍る予測です。
名目GDPでみた経済規模は米国に少しずつ接近しますが、2035年時点でも米国の87%にとどまる予測です。
中国経済が下振れする要因は2つ
中国経済が下振れする要因は主に2つあります。
1.厳格な移動制限などを敷いたゼロコロナ政策
1つ目は厳格な移動制限などを敷いたゼロコロナ政策です。
政府は12月7日に緩和策を発表しましたが、北京市などで感染が広がっています。
日本経済研究センターは規制が事実上なくなるのは2025年に入ってからと想定していました。
ゼロコロナ政策の後遺症もあります。
中国政府が発表する消費者マインドを示す指数は4月に過去最低を記録。
直近もほぼ同水準にとどまっています。
家計の節約志向は常態化しつつあり、先行き不安を拭うのは簡単ではありません。
2.米国の対中輸出規制の強化
2つ目の要因は、米国の対中輸出規制の強化です。
バイデン米政権は10月、先端半導体などをめぐる中国企業との取引を許可制としました。
2023年1月に下院の多数派となる共和党も、中国に対して強硬な政策を促すとしています。
長期的には、人口減少が中国経済の足かせになる
日本経済研究センターは、この2つの要因が中国の生産性向上のペースを鈍らせると分析しています。
台湾有事の懸念が強まるリスクシナリオでは海外企業の「中国離れ」が加速し、対中投資の減少がさらに成長を下押しするとみています。
長期的には、人口減少が中国経済の足かせになります。
国連の最新推計では、中国の総人口は2022年7月1日時点で減少に転じました。
労働力不足も加わり、2036年以降は米中逆転は起きそうにありません。
中国共産党の目標
中国共産党は10月に改正した党規約に2035年と今世紀半ばに向けた2つの長期目標を明記しました。
1.1人当たり名目GDPを「中程度の先進国並み」
1つ目が、2035年目標の軸は1人当たり名目GDPを「中程度の先進国並み」に引き上げることです。
具体的な数値は示していませんが、同3万ドル前後のイタリアやスペインが念頭にあるとされています。
日経センターの予測では2035年時点で2万5745ドル(約349万円)。
2年前の予測より8.6%減っています。
2.米国に並ぶ「社会主義現代化強国」を構築する
2つ目が、共産党規約は今世紀半ばには経済から軍事まで米国に並ぶ「社会主義現代化強国」を構築することです。
しかし、肝心の経済で米国との差が埋め切れない可能性が出てきました。
ゼロコロナ政策やIT企業などへの統制強化、不動産市場の調整など自らまいた種が長期的に響きかねません。
まとめ
日本経済研究センターは中国の名目国内総生産(GDP)が米国を逆転しないとの試算を発表しました。
新型コロナ流行初期の2020年の予測では、中国が感染の早期封じ込めでいち早く経済の正常化に着手した結果、2028年にも米中逆転が起こると推計していました。
中国経済が下振れする要因は主に2つあります。
1つ目は厳格な移動制限などを敷いたゼロコロナ政策です。
2つ目の要因は、米国の対中輸出規制の強化です。
長期的には、人口減少が中国経済の足かせになります。
国連の最新推計では、中国の総人口は2022年7月1日時点で減少に転じました。
労働力不足も加わり、2036年以降は米中逆転は起きそうにありません。
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