日本の原油の中東依存度が95%前後と1970年代に起きた石油危機前を上回る水準で推移しています。
輸入元の多様化に向けて重視してきたロシア産原油でしたが、2022年12月5日から主要7カ国(G7)で上限価格を設けた輸入制限に踏み切りました。
世界的な脱炭素化で中東以外の企業の原油開発投資は縮小しており、政情が不安定な中東への依存の見直しは簡単ではありません。
詳しく解説していきます。
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日本は原油の多くを中東に依存している
近年は90%前後だった中東依存度は8カ月連続で前年を上回り、現在は95%前後で推移しています。
経済産業省の石油統計速報で2022年10月は94.7%でした。
石油危機前の1967年度の91.2%を上回っています。
日本は原油の多くをアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアから輸入し、他国と比べ中東依存度が突出して高いです。
英BPの統計データをもとに計算すると、2021年は米国が原油輸入の8.9%、欧州主要国が16.5%でした。
アジアでは中国が49.0%、インドが61.0%となっています。
ロシアのウクライナ侵攻で中東依存度が加速
日本は1970年代に起きた2度の石油危機を受け、輸入元を多角化させてきました。
1987年度に中東依存度は67.9%まで下がりました。
冷戦後に新興国の原油需要が急増し、アジアの産油国も輸入国に転じ、日本はロシアからの調達を重視するようになりました。
政府や商社がサハリンでの開発事業に参画し、東シベリアなどからの調達を増やしたところにウクライナ侵攻が起きました。
G7はウクライナ侵攻を続けるロシアの収入を減らす目的で、原油の輸入価格の上限を1バレル60ドルとする制裁を決めました。
ロシアでの資源開発事業「サハリン2」からの日本への輸入は対象外となっています。
日本に送られるのは主に天然ガスで、付随して原油が産出されます。
日本のロシア産原油の輸入は、財務省の貿易統計速報によると2022年10月はゼロでした。
石油火力の割合を2%程度まで縮小させたい考え
日本の1次エネルギー供給に占める石油の依存度は2021年度に36.3%(速報値)でした。
1967年度の61.7%から大きく下がっています。
経産省は電源構成に占める石油火力の割合を2030年度に2%程度まで縮小させたい考えです。
そうは言っても、自動車の燃料や寒冷地の灯油といった石油製品の需要は底堅いです。
日本が電動車以外の新車販売を禁止するのは35年と先の話で、電動車にはガソリンを燃料とするハイブリッド車も含まれます。
欧米メジャーが再生可能エネルギーにシフト
国際エネルギー機関(IEA)によると、石油・ガスの開発など上流部門への世界の投資は2022年に4170億ドル(約56兆円)と2019年に比べて16%減少しています。
欧米メジャーが再生可能エネルギーにシフトし、中国の国有石油会社も石油・ガスへの投資を減らしています。
中東の国営石油会社だけが19年の水準を10%上回る見込みです。
まとめ
中東は生産コストが低いうえに、生産を拡大する余力を残しています。
今後も中東への世界的な依存が強まる可能性は高いです。
しかし、ウクライナ戦争が長引く陰で、イランで民主化を求める抗議デモが活発になるなど中東も不安定さを増しています。
日本は歴史的水準にまで高まった中東依存度を下げる必要がありますが、多角化への道は簡単ではありません。
中長期的には脱炭素に合わせた原油の利用低減が欠かせません。