イタリアは中国の広域経済圏構想「一帯一路」からの離脱を中国に通知しました。
権威主義的な中国への警戒が広がり、経済面の恩恵の乏しさへの不満も強まったことが原因です。
イタリアは中国側の反発による経済への悪影響を避けるため、正式発表を控えるなど配慮をみせました。
詳しく解説していきます。
イタリア、「一帯一路」離脱を中国に通知
イタリアは2019年、主要7カ国(G7)として唯一、一帯一路への協力の覚書を結びました。
覚書の期限は2024年3月で、3カ月前までに離脱を表明しなければ自動更新されることになっていました。
伊主要紙コリエレ・デラ・セラ(電子版)の6日の報道によると、イタリアは3日前に中国側に書簡で離脱の意思を通知したようです。
イタリアは2024年にG7の議長国を務めます。
メローニ政権にとっては一帯一路に参加したままでは、中国やロシアなど権威主義陣営への対応が主要議題になるG7サミットで指導力を示すのが難しくなるという事情がありました。
中国からの輸入額81%増、輸出額の伸びは26%にとどまる
一帯一路には経済面の恩恵の少なさから政権支持層の不満も強まっていました。
イタリア政府によると、2019年から2022年の間に中国からの輸入額が81%増えた一方、輸出額の伸びは26%にとどまっています。
イタリアから中国への書簡には「2国間の戦略的パートナーシップを最大限に再活性化するよう努める」意思が明示されていたようです。
離脱については両国政府の合意で記者会見などによる正式発表は見送ることになりました。
「一帯一路」離脱の正式発表は見送りは中国への配慮
中国の反発を最小限に抑えるための配慮だったのは間違いありません。
タヤーニ副首相兼外務・国際協力相は、「世界レベルでは我々の競争相手であっても(中国とは)引き続き最良の関係にある」と強調した。
2024年にイタリアの北部ベローナで政府間協議を開くとも明かしました。
イタリアメディアによると、同年にマッタレッラ大統領が訪中する準備も進めているそうです。
中国が不買運動を起こす可能性がある
イタリアにとって中国は主要輸出先の一つで、2022年の対中輸出額は約2兆6千億円にのぼります。
G7のメンバーであるフランスやドイツが同年に対中輸出を急拡大させたこともあり、離脱による通商関係への悪影響を避けたいのが本音です。
中国国内でイタリアへの反発が広がれば同国製のブランド品などの消費に影響が出る可能性があります。
イタリアメディアは「中国当局が問題を起こす可能性のあるカテゴリーは(イタリア製の)高級品だ」と指摘しています。
中国「一帯一路の協力を侮辱し、破壊することには反対」
中国は今のところイタリアへの対抗措置などを発表していません。
中国外務省の汪文斌副報道局長は12月7日の記者会見でイタリア離脱の事実確認を避け、「一帯一路の共同建設における協力を侮辱し、破壊することには断固反対する」とのみ述べました。
米中対立の激化に伴い、一帯一路は米国に対抗する勢力圏づくりの場という側面が強まっています。
こうした位置づけを敬遠する国もあり、10月に北京で開いた首脳会議に首脳級が参加した国は前回の2019年より13少ない24カ国でした。
イタリアも派遣を見合わせています。
中国は離脱の動きが加速しないよう欧州のつなぎ留めを図る
中国の習近平国家主席は12月7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京で会談しました。
習氏は会談で一帯一路について「150カ国以上に具体的な利益をもたらした」と強調。
EUが進めるインフラ投資戦略との融合も含め「一帯一路の質の高い共同建設を推進し、発展途上国の成長を支援したい」と語り、EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示しました。
一帯一路を巡っては、イタリアが経済的恩恵が乏しいと判断し中国側に離脱を通知しており、中国は離脱の動きが加速しないよう欧州のつなぎ留めを図りたいところです。
一帯一路の公式サイトによると、EU加盟国はイタリアを除くとオーストリアやハンガリー、ポーランドなど17カ国が参加しています。
EUの2022年の対中貿易赤字は約63兆円
会談では双方の貿易不均衡を巡っても話し合ったとみられています。
EUの2022年の対中貿易赤字は約63兆円にのぼります。