上場企業の2022年の自社株買いが過去最高になりました。
11月中旬までの取得枠の設定は9兆円を超え、年間ベースの過去最高(06年の8兆5000億円)をすでに上回りました。
世界的な景気後退懸念やインフレによる米金利の上昇を背景に日経平均株価は21年の高値から2割弱安いものの、企業収益はなお高い水準にあります。
株価の割安感をアピールすると共に、厚い自己資金を株主に積極的に配分し資本効率の改善を目指しています。
詳しく解説していきます。
上場企業の自社株買い、過去最高の9兆2100億円
上場企業の自己株式(優先株は除く)の取得枠設定の開示を日本経済新聞が集計したところ、11月中旬までに延べ990社超が約9兆2100億円設定していました。
取得枠の設定額は前年の同時期と比べると3割多く、新型コロナウイルス禍前の19年の同時期との比較でも1割強多いです。
10月以降でも約190社が開示し、合計額は1兆8000億円を超えました。
NTTの自社株買い
NTTは今期2度目の取得枠を11月に設定し、総額は約5000億円超となります。
総還元性向は「ここ数年で一番大きく77%ぐらいになる」(島田明社長)といっています。
三菱地所の自社株買い
不動産では三菱地所が「今後の利益成長の見通しが立っており、株価水準など総合的に判断した」として1000億円の取得枠を設定しました。
川崎汽船の自社株買い
大株主から自社株を取得する企業もあります。
1000億円の自社株買いを実施する川崎汽船の明珍幸一社長は「大株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントとみずほ銀行に打診し、おおむね持ち分割合に相当する株数について応じる意向を確認した。それ以外の株主にも市場での売却機会を提供することが望ましいと判断した」と説明。
大株主から立会外取引で取得し残りは市場で買い付けます。
自社株買いを進めているのは、手元資金が潤沢だから
企業が積極的に自社株買いを進めているのは、手元資金が潤沢で自己資本の厚みが増していることも要因です。
3月期決算の東証プライム企業(金融と日本郵政など除く)の9月末時点の手元資金は1年前に比べ10%増の102兆円と過去最高でした。
自己株式は自己資本から控除されるため、手元資金を使って自社株を買えば純利益は変わらなくても自己資本利益率(ROE)は高くなります。
最終減益の予想でも自社株買いに踏み切る企業が少なくない
今期が最終減益の予想でも自社株買いに踏み切る企業が少なくありません。
10月以降に自社株買いを発表した約190社のうち、通期の純利益予想を開示した175社の4割にあたる66社が減益の見通しです。
14%の最終減益を見込むカルビーは、取得枠上限の120億円まで買い付けると今期の総還元性向は119%になります。
自社株買いは株価が割安だと示す「シグナリング効果」
自社株買いには、投資家に現状の株価が割安だと示す「シグナリング効果」もあるとされています。
東証プライム市場の予想平均PER(株価収益率)は9月末に初めて13倍を下回るなど割安感が強まっています。
10月以降に自社株買いを発表した約190社の6割弱で株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回っており、「株価水準等を踏まえた機動的な取得枠」(トヨタ自動車)の設定が相次いでいます。
足元では日本企業の業績は底堅い
世界的な景気後退に伴う収益悪化の懸念もありますが、足元では日本企業の業績は底堅いです。
日本経済新聞の集計では23年3月期の純利益は前期比7%増と最高益になる見通しです。
ニッセイ基礎研究所は「通期業績の着地が見えてくる4~12月期の決算発表のタイミングでの自社株買い発表も期待できる」と指摘しています。
-
株式投資の始め方が分かる初心者におすすめの本7選
老後2000万円問題などによって、株に興味を持っている人は少なくありません。しかし、実際にどのように始めたらよいのか分からない人も多いでしょう。この記事では、株式投資の始め方が分かる初心者におすすめの ...
続きを見る
-
株式投資で勝てるようになる中級者におすすめの本7選
株式投資で利益を上げたいと思う方も少ないくないのではないでしょうか?この記事では、株式投資で利益を上げられるようになる中級者におすすめの本を紹介していきます。どのようにすれば利益を上げられるのか・・・ ...
続きを見る