日本の個人株主比率が低下しています。
東京証券取引所が7日発表した2021年度の株主分布調査によると、個人の保有比率は金額ベースで16.6%と50年前から半減しました。
個人投資家の底上げは戦後から続く日本の課題です。
「貯蓄から投資」を問われるなか、少額投資非課税制度(NISA)の見直しなど若者の投資を後押しする仕組みが不可欠になっています。
日本の個人株主数は人口の9人に1人
日本では戦後、財閥や政府が保有する株式を個人に持ってもらう「証券民主化運動」が起き、70年度には個人株主の保有比率が4割近くありました。
しかし、その後、外資から経営権を守るため企業が銀行などとの株式持ち合いを加速。
バブル崩壊で日本企業の成長期待も崩れ、11年度以降は個人比率がじりじりと下がり、直近は2割を切る水準が続いています。
個人株主数は6460万人と8年連続で増えましたが、この数字は各上場企業の株主数を単純合算した延べ人数です。
実態は1400万人台といわれ、人口の9人に1人にとどまっています。
韓国は4人に1人の計算です。
米国は金額ベースで個人が株の約4割を持っています。
家計の金融資産に占める株や投資信託の比率も、日本は欧米に比べ低いです。
日本の個人で株を持つのは高齢者に偏っている
背景にあるのは高齢化です。
日本の個人で株を持つのは高齢者に偏っており、年齢別では60歳以上が金額ベースで67%を保有しています。
高齢者が相続を意識するようになると、保有株を売却して現金化し不動産を購入するケースが少なくないです。
株式と不動産で異なる相続税の評価制度が背景にあります。
上場株は取引所で付いた時価がそのまま評価額になるのに対し、不動産は時価の80%を目安にする路線価を基に評価額を決めています。
富裕層の最大の関心事は節税です。
相続コンサルタントは、株を売る証券会社なども高齢者に不動産への転換を勧めています。
日本の若者が買うのは外国株
一方、若者層はどうでしょうか。
30歳未満の個人が持つ株は全体の1%にとどまりますが、投資意欲は旺盛です。
楽天証券は新規口座を開設した人のうち20~30代が7割弱を占めています。
マネックス証券は30代の口座開設が最多です。
賃金が上がらないなど将来への不安が強まり、積み立てでコツコツと投資する需要が伸びています。
こうした日本の若者が向かうのは外国株です。
1~6月の公募投信(上場投信除く)の純資金流入額は約4兆円と過去4番目の大きさで、資産別では外国株で運用する投信には4兆2000億円が流入。
6月の資金流入が最も多かったのは米S&P500種株価指数に連動する投信でした。
日本の若者が国内株を買わない理由
海外株を中心に若者などの株式への関心は強いです。
それなのに若者を中心に日本株の個人投資家が増えにくいのは最低売買単位などの壁があります。
例えば、1株6万8000円のファーストリテイリングの単元株は100株で、最低680万円ないと購入できません。
米国株は1株単位で購入でき、直近の米アップル株だと1株140ドル程度(約1万9000円)です。
日本でも株式分割で投資家が買いやすいようにする企業は増えてきました。
トヨタ自動車は21年9月末を基準に1株を5株に分割し、投資に必要な最低金額が約20万円と5分の1になりました。
その結果、22年3月末の個人株主は74万5000人と前年比7割増えました。
企業が自ら動けば個人マネーを呼び寄せることは可能です。
NISAの見直しが求められる
株の売却益や配当にかかる税金をなくすNISAも見直しの余地があります。
NISAの非課税枠は120万円で、参考にした英国のISAは320万円と開きがあります。
投資期間を限定するNISAに対し、ISAは期間の制限を設けていません。
岸田文雄首相はNISA拡充に言及しています。
個人がさらに株式を購入しやすくなるように制度を見直せるかが焦点になります。
個人の裾野を広げていくには日本企業が自ら成長するだけでなく、税制や売買制度、金融教育を含めた幅広い議論が必要になっています。
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