防衛省はミサイル防衛の立て直しに乗り出しました。
電磁力で砲弾を発射してミサイルを迎撃する技術を中核に据えます。
中国などが研究を進める変則軌道で飛ぶ極超音速兵器を打ち落とせるようにするのが目的です。
相手の発射基地まで届く長射程ミサイルなどの開発とあわせ、2030年までに体制を刷新します。
日本がレールガンの開発に着手
レールガンと呼ぶ技術を20年代後半に実用化する計画です。
これが実現すれば、リニアモーターカーのように電磁力を使って弾を発射することが可能になります。
実用に近い試作機をつくる費用として22年度予算案に65億円を計上しました。
火薬の燃焼を利用するミサイルより高速なうえ、理論上はもっと低いコストで連射もできます。
一般的なミサイルの初速は秒速1700メートル程度ですが、研究段階で同2300メートル近くを達成しました。
念頭にあるのは音速の5倍超で軌道を変える極超音速兵器です。
従来の弾道ミサイルが放物線を描いて飛び、経路が予測しやすいのと比べて迎撃が難しいです。中ロや北朝鮮が開発で先行しています。
既存のミサイルも同時に複数が飛来すると守るのが困難です。
防衛省はミサイルでミサイルを撃ち落とす現在の体制は限界があると判断したのです。
レールガンとは
火薬を使わずに電磁力の原理で弾を高速で撃つ技術
レールガンは、火薬を使わずに電磁力の原理で弾を高速で撃つことが可能です。
電気を通しやすい素材で作ったレールの間に弾を置き、電流と磁界を発生させて発射します。
磁場のなかで電気を流すと力が発生する「フレミングの法則」で弾を動かします。
モーターや発電機など身近に使われる技術が基礎になっています。
リニアモーターカーとは別の仕組み
電力と磁力を使ってものを動かす技術にはリニアモーターカーがあります。
リニアは電流をコイルに流して磁力を発生させ、磁石の反発力で車両を動かします。
一方、レールガンは磁界の中を電気が流れると物体が動くという別の仕組みを応用します。
中国や北朝鮮、ロシアが開発を進める極超音速ミサイルを迎撃するための技術
音速の5倍超の極超音速兵器と比べると、音速の6倍近い秒速2000メートル以上で飛ばせます。
砲の内部の磁界が強くなるようレールの配置を工夫し、電気を通しやすく頑丈な金属素材を選定する必要があります。
日本の敵ミサイルからの防衛体制
(1)現行システムの強化
(2)レールガン
(3)離れた位置から反撃できる長射程ミサイル
以上の3段階で防ぐ体制にしたい考えです。
相手のミサイルを探知する能力を上げるため小型衛星網の整備も検討します。
長射程ミサイルは攻撃を受けた際に相手拠点をたたく「敵基地攻撃能力」として保有を検討します。
迎撃用ではなく相手に攻撃を思いとどまらせる目的です。
いずれも22年末につくる国家安全保障戦略などに記す案があります。
いまはミサイルをミサイルで陸海から撃ち落とす体制をとっています。
発射まで時間がかかり1発の単価が高いです。
短時間で迎撃弾を連射して撃墜の確率を上げる装備が必要だです。
中国の国防費は日本の6倍
中国は21年の国防費が1兆3553億元(24兆7千億円)に上ります。
10年で2・3倍に増え日本に届くミサイルも大量に配備しています。
日本の防衛費は補正予算込みで初の6兆円台に乗せるが圧倒的な差があります。
厳しい財政下で選択と集中も不可欠なため、最も手薄になるミサイル防衛を重視します。
レールガンは各国が研究するが配備例はありません。
実用化には電気を通しやすく丈夫な材料が必要です。耐久性や大電力の制御が課題です。
防衛省は素材産業が強い日本が優位に立つ可能性もあるとみています。
まとめ
防衛省はミサイル防衛の立て直しに乗り出しました。
レールガンと呼ぶ技術を20年代後半に実用化する計画です。
実用に近い試作機をつくる費用として22年度予算案に65億円を計上しました。
中国などが研究を進める変則軌道で飛ぶ極超音速兵器を打ち落とせるようにするのが目的です。
念頭にあるのは音速の5倍超で軌道を変える極超音速兵器です。
従来の弾道ミサイルが放物線を描いて飛び、経路が予測しやすいのと比べて迎撃が難しいです。中ロや北朝鮮が開発で先行しています。
中国は21年の国防費が1兆3553億元(24兆7千億円)に上ります。
10年で2・3倍に増え日本に届くミサイルも大量に配備しています。
日本の防衛費は補正予算込みで初の6兆円台に乗せるが圧倒的な差があります。
厳しい財政下で選択と集中も不可欠なため、最も手薄になるミサイル防衛を重視します。