日本でも人気の高級ぶどう「シャインマスカット」。
日本の研究機関が30年かけて開発した品種ですが、困ったことに韓国で無断栽培されています。
この事実は数年前から言われていましたが、輸出額が日本の5倍超になってしまいました。
対応策はあるのでしょうか。
日本発のブランド品種の海外流出が深刻
高級ブドウ「シャインマスカット」をはじめ、日本発のブランド品種の海外流出が深刻さを増しています。
流出先の韓国では、もともとのシャインマスカットが今や輸出の主力となり、輸出額は日本の5倍超に膨らんでいます。
中国国内での栽培面積は日本の40倍超に及びます。
海外への持ち出しを禁止する改正法が4月に施行しましたが、実効性には課題を残したままです。
農林水産省によると、シャインマスカットは2016年ごろから海外流出を確認しています。
法規制が追いついていなかった経緯もあり、韓国などへの持ち出しと現地栽培、輸出が膨らんでいきました。
日韓のブドウの輸出数量が逆転
2019年には日韓のブドウの輸出数量が逆転しました。
2021年1~4月の韓国産ブドウの輸出額は約8億円と前年同期比で1・5倍に増えました。
このうちシャインマスカットが約9割を占めています。
日本の輸出額は1億4700万円にとどまり、量では7倍の差がついています。
ブランド果実の流出先は中国、韓国が中心
農林水産・食品産業技術振興協会によれば、ブランド果実の流出先は中国、韓国が中心だそうです。
シャインマスカットのケースで、栽培面積は日本が1200ヘクタールなのに対し、韓国は1800ヘクタール、中国では5万3000ヘクタールと規模は桁違いです。
30以上の品種の海外流通が確認されている
ブドウ以外でも同協会の20年の調査で、30以上の品種の海外流通が確認されています。
静岡県のイチゴ「紅ほっぺ」や高級かんきつ「紅まどんな」などが標的になっています。
日本政府の対策
政府は登録品種の海外持ち出しを禁じる改正種苗法を2021年4月に施行しました。
違法持ち出しに罰金や懲役を設けましたが、違反事案は絶えません。
意図的かどうかにかかわらず、一度流出すると種苗や苗木の追跡は難しくなります。
農林水産物輸出額の増加を目指しているが
日本政府はブランド品種を中核にし農林水産物輸出額について2025年に2兆円、2030年に5兆円に増やす目標を掲げています。
2020年の輸出額は9217億円。
当初目標の「19年に1兆円」には届きませんでした。
海外流出に歯止めをかけられず、さらに流出先で輸出まで膨らむ状況が続けば、一連の目標に黄信号がともります。