中国のスマートフォンメーカーが急速充電技術の開発を競っています。
世界シェア3位の小米(シャオミ)は今秋発売の旗艦モデルに独自技術を搭載し、米アップルの「iPhone」などに比べ充電速度を5倍に高めました。
カメラやディスプレーなどこれまで重視してきた機能が成熟に向かうなか、中国勢は新たな競争の軸である充電速度で存在感を高め、アップルに対抗しようとしているようです。
アップル(iPhone)を超える中国の充電技術
2021年9月、小米がオンラインで開いた新製品発表会でプロダクトマーケティング責任者のアビ・ゴー氏は「充電速度は新時代に突入する」と強調しました。
11月初めに日本でも発売された旗艦モデル「Xiaomi 11T Pro」は、市販のスマホで最大級となる5000ミリアンペア時のバッテリーを搭載し、わずか17分でフル充電できます。
付属品の充電器と組み合わせて最大出力120ワットの充電に対応しました。
アップルは近年、iPhoneに充電器を付属していないが、付属のあった19年までの最大出力は5~18ワットでした。
最新のiPhone13シリーズは「20ワット以上」の充電器を用いた高速充電に対応するとしています。
調査会社によると、実際の充電時間は上位モデルで90~100分ほどです。
小米の従来の充電器の最大出力は67ワットあり、最新モデルはさらにフル充電までの時間を半分以下に縮めました。
充電速度は測定時の環境など多くの要因に左右されるため単純比較できませんが、仕様を基に比較すればiPhone13シリーズに比べて5倍以上速く充電できる計算になります。
バッテリーの劣化を防ぐ新技術
小米は最新技術を組み合わせて17分の急速充電を実現しました。
本体バッテリーは2つのリチウムイオン電池で構成し、それぞれが同時に充電することで速度を上げているのです。
並列することでバッテリー本体が熱を持ちやすくなりますが、液体を使った素材で放熱性を高めています。
バッテリー劣化への対応も進めています。
iPhoneなどが採用する仕様では、充電時に負担がかかって劣化するのを防ぐため、充電容量が約80%を超えると充電速度が低下するようになっています。
小米は独自の管理システムで高電流を流す時間を延ばし、充電時間の短縮を実現。充放電を800回繰り返しても8割以上のバッテリー容量を保持できるといいます。
スマホの充電技術は新時代に突入
カメラ機能に力を入れてきた中国のOPPOも、近年は充電関連の研究を加速しています。
同社の一部のスマホに付属する最新の充電器は独自部品の採用などで充電時の電力ロスを1%程度に抑えました。
最大出力は65ワット。今後は125ワットの充電器も開発する計画です。
フル充電にかかる時間は現行の40分程度から20分程度に短縮できるといいます。
125ワットの充電器は試作品を発表済みだが「対応バッテリーの設計などで課題が残る」(同社担当者)。
急速充電に耐えられるように安全かつ頑丈にすると、バッテリーは厚くなり重量も増えてしまいます。
使い勝手を損なわないよう、実用化に向けてバランスのとれた設計開発を急がれます。
世界のスマホ出荷台数は年間で約13億台にのぼりますが、普及が一巡し、近年は市場の頭打ちが鮮明です。
高精細な有機ELディスプレー、複数のレンズを搭載したカメラ、高速通信規格「5G」といった高機能は中位機種にも搭載するようになり、新たに差別化できる機能が求められています。その一つが急速充電技術なのです。
バッテリーの大容量化、急速充電の需要が高まっている
世界のデータ通信量は増え続けています。
スウェーデン通信機器大手エリクソンによると、モバイル機器を経由したデータ通信量は、21年に10年前(11年)に比べ280倍以上の月65・8エクサ(エクサは100京)バイトに増加する見込です。
処理するデータ量や利用時間も増加しこれに対応するためにバッテリーも大容量化。急速充電の需要を高めています。
汎用の充電器メーカーも急速充電対応を進めています。
アマゾンなどのネット通販で高いシェアを持つ中国の安克創新科技(アンカー・イノベーションズ・テクノロジー)は、スマホやパソコンなど接続する端末に合わせて出力を最適にする技術を導入しています。
市販する端末の大半に対応します。
規格の統一も進んでいる
各社が独自技術を競う一方、標準規格も対応が進んでいます。
端末メーカーなどで構成するUSBの推進団体は5月、新しい充電規格「PD3・1」を発表しました。
最大給電能力を100ワットから240ワットに引き上げ、より高速な充電や、高性能パソコンなど消費電力の大きい端末に対応しやすくなります。
急速充電の進化を支える半導体の技術進歩
急速充電を技術面で支えるのが半導体の技術進歩です。
最新の充電器では電力の変換効率が高い窒化ガリウム(GaN)素材を使ったパワー半導体の採用が相次いでいます。
台湾の調査会社トレンドフォースによると、急速充電器の世界市場は22年に20年比2・6倍の773億ドル(約8兆8000億円)と急成長しGaN採用率は全体の約3割に達する見込みです。
GaN半導体でシェア3割弱を占める大手の米ナビタスセミコンダクターは10月に米ナスダック市場に上場。シャオミやOPPO、レノボ・グループなど中国大手を含む端末各社に半導体を供給しています。
中国ではGaN半導体の国産化も進んでいます。
新興の英諾賽科(イノサイエンステクノロジー)は6月に江蘇省蘇州市で8インチのウエハー基板を使う大規模工場を稼働。トレンドフォースの予測では21年に業界3位に浮上する見込みです。
国内では半導体商社の菱洋エレクトロが家電メーカーなど向けに拡販を進めています。
まとめ
中国のスマートフォンメーカーが急速充電技術の開発を競っています。
11月初めに日本でも発売された旗艦モデル「Xiaomi 11T Pro」は、市販のスマホで最大級となる5000ミリアンペア時のバッテリーを搭載し、わずか17分でフル充電できます。
付属品の充電器と組み合わせて最大出力120ワットの充電に対応しました。
アップルは近年、iPhoneに充電器を付属していないが、付属のあった19年までの最大出力は5~18ワットでした。
最新のiPhone13シリーズは「20ワット以上」の充電器を用いた高速充電に対応するとしています。
調査会社によると、実際の充電時間は上位モデルで90~100分ほどです。
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