中国の債務が急速に膨らんでいます。
国際決済銀行(BIS)によると、経済規模と比べた債務残高の比率は2022年6月末に過去最高を更新しました。
新型コロナウイルス対策の移動制限で景気が悪化し、地方政府がインフラ建設のため債券の発行を増やしているためです。
一方で、民間企業や家計は投資や住宅購入に及び腰です。
2022年7月には人口減少が確認されました。
今後、急速に少子高齢化を迎えるなかでどうやって債務を減らしていくのか、難しい問題に直面しています。
詳しく解説していきます。
動画でも解説しています
中国の債務、約7100兆円 GDP比で過去最高
国際決済銀行が2022年12月5日公表した金融機関を除く債務残高は6月末時点で、51兆8744億ドル(約7100兆円)でした。
国内総生産(GDP)比で295%となり比較が可能な1995年末以降で最高となりました。
今の中国の債務比率は98年3月末の日本(296%)に近い数値です。
当時の日本の1人あたり名目GDPは3万2000ドル台でした。
対照的に2021年の中国は1万2000ドル台にとどまっています。
今後は急速な少子高齢化で、財政に占める社会保障費の負担が高まっていくことは確実です。
財政支出の硬直化が進めば、景気対策のために債務を拡大する余地は乏しくなります。
債務増加の要因
債務増加の要因は主に下記の2つです。
- 景気の悪化
- 政府債務の増加
1.景気の悪化
1つ目は景気の悪化です。
感染力が強い変異型のオミクロン型がまん延し、上海市などがロックダウン(都市封鎖)に踏み切りました。
その影響で4~6月の実質GDPは前年同期比0.4%増にとどまりました。
2.政府債務の増加
2つ目は政府債務の増加です。
中央政府である国務院はインフラ建設を景気対策の柱に位置づけ、地方政府にインフラ債の発行を加速させました。
22年の新規発行額は過去最大の4兆元(約78兆円)を突破しています。
政府や国有企業の債務が膨らんでいる
債務膨張が突出して際立っているのが、政府部門です。
6月末時点の比率は、これまでピークだった20年末より6ポイント上がりました。
対照的に企業や家計の債務比率は同期間に低下しています。
中国人民銀行(中央銀行)によると、銀行から見た企業の資金調達需要を示す指数は4~6月に、5年9カ月ぶりの水準に悪化しました。
7~9月も戻りは鈍いです。
なかでも民間企業は投資に弱気です。
1~10月の固定資産投資は前年同期比2%増にとどまっています。
国有企業が11%増と大幅に伸びているのとは対照的です。
政府が景気のテコ入れへ国有銀行を動員して、国有企業向け融資を積み増しているとみられます。
民間企業や家計は慎重姿勢
家計も住宅ローンなどの借金をしようとはしていません。
政府の不動産向け金融規制の強化や景気の悪化で住宅市場の低迷が長期化しているためです。
人民銀行の預金者向けアンケート調査をみると、7~9月の住宅に対する値上がり期待は確認できる09年以降で最小を記録しました。
新型コロナを徹底して封じ込めようとする「ゼロコロナ」政策などで景気の先行きが読めないことで、民間企業や家計が投資や消費に積極的になれないのです。
さらには人口減少など中長期的な不安も慎重さを増幅させている可能性があります。
中国の人口減少は始まっている
国連は7月に公表した最新の人口予測で、中国の7月1日時点の総人口は前年比で減少したと推計しました。
過去の産児制限の影響で今後は減少が加速します。
25年後の47年までの減少幅は、総人口の6%に当たる約9000万人に上ります。
高齢化も急ピッチで進み、今は38.5歳の平均年齢も47年には50歳を超える予測です。
人口減少は中国経済が成長を続ける余地を狭めるリスクがあります。
まとめ
国際決済銀行が2022年12月5日公表した金融機関を除く債務残高は6月末時点で、51兆8744億ドル(約7100兆円)でした。
国内総生産(GDP)比で295%となり比較が可能な1995年末以降で最高となりました。
新型コロナウイルス対策の移動制限で景気が悪化し、地方政府がインフラ建設のため債券の発行を増やしているためです。
国連は7月に公表した最新の人口予測で、中国の7月1日時点の総人口は前年比で減少したと推計しました。
今後は急速な少子高齢化で、財政に占める社会保障費の負担が高まっていくことは確実です。
「共同富裕」を推進する習近平指導部ですが、豊かになる前に老いてしまう未来がやってきそうです。
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