オーストラリアの資源・エネルギー輸出が拡大を続けている。液化天然ガス(LNG)や石炭の価格が上昇し、2021会計年度(21年7月~22年6月)の輸出額は過去最高を更新する見通しです。
豪州との外交関係が悪化している中国は豪産石炭の輸入を制限していますが、その効果は足元では薄いようです。
中国のオーストラリアへの制裁が不発に終わる
豪産業・科学・エネルギー・資源省が発表した報告書によると、21年度の資源・エネ輸出額は20年度を22%上回る3791億豪ドル(約31兆円)になる見通しです。
16年度から6年連続での最高更新となる。中国は20年秋ごろから豪産石炭の輸入を制限しており、21年度の資源輸出の動向が注目されていました。
LNGや石炭など化石燃料が好調
成長をけん引するのはLNGや石炭など化石燃料です。
LNGは新型コロナウイルスからの経済回復に伴い需要が急増して価格が上昇、21年度の輸出額は630億豪ドルと20年度の2・1倍に跳ね上がりました。
石炭輸出額も2倍以上に膨らむ見込みです。
中国は外交関係の悪化を受けて20年に豪産石炭の輸入を止めました。
しかし、21年は自国内の炭鉱事故やモンゴルなど近隣国の供給制約を受けて北米産などを欧州勢と奪い合う結果となり、豪産石炭も価格が上昇しました。
発電に使う石炭「一般炭」は主要輸出国のインドネシアで悪天候が続いたことなどから需給が逼迫しました。
同省は石炭について「中国が増産に動いているが、(新型コロナからの)経済再開に加え北半球が冬を迎え、各国の電力会社が在庫確保に動いている」と分析しています。
石炭価格は今後も「比較的堅調に推移する」とみています。
石炭火力発電は段階的に削減される
21年11月に開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、合意文書に石炭火力発電の段階的削減を盛り込みました。
報告書は「COP26の結果は、短期的な一般炭の利用には影響を及ぼさないだろう」と指摘。「石炭企業が炭鉱の新規開発や拡張計画を見直すことで、中長期的には供給に影響が出るかもしれない」との見方も示しました。
豪州最大の輸出品である鉄鉱石の輸出は芳しくない
現在は好調な資源・エネ輸出ですが、懸念も残ります。
豪州最大の輸出品である鉄鉱石の輸出は21年度、前年度比23%減少する見通しです。
豪産鉄鉱石の約8割が向かう中国が温暖化ガス排出削減のため鉄鋼生産を減らし、鉄鉱石価格は調整局面に入っています。
供給サイドではブラジルが鉱山ダム事故による減産から回復する見通しで、需給は一層緩む可能性があります。
加えて、世界の鉄鉱石や石炭の過半を消費する中国の動向は豪州を揺さぶります。
中国の鉄鉱石や石炭の使用量が落ちれば価格下落は避けられません。
報告書は「中国の経済成長がどの程度鈍化するかが、資源・エネルギーの需給に影響を与える」と指摘しています。
まとめ
豪産業・科学・エネルギー・資源省が発表した報告書によると、21年度の資源・エネ輸出額は20年度を22%上回る3791億豪ドル(約31兆円)になる見通しです。
豪州との外交関係が悪化している中国は豪産石炭の輸入を制限していますが、その効果は足元では薄いようです。
成長をけん引するのはLNGや石炭など化石燃料です。
LNGは新型コロナウイルスからの経済回復に伴い需要が急増して価格が上昇、21年度の輸出額は630億豪ドルと20年度の2・1倍に跳ね上がりました。
石炭輸出額も2倍以上に膨らむ見込みです。
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