テクニカル分析

値動きの荒さが分かるテクニカル分析3選

値動きの荒さが分かるテクニカル分析3選

ボラティリティとは、値動きの荒さのことで、略して「ボラ」ということもあります。

値動きが荒い場合は、「ボラティリティが大きい」または「高い」といいます。

反対に、値動きが少ない場合は、「ボラティリティが小さい」または「低い」といいます。

このほか、単純に「値動き」の意味で使うこともあり「ボラがある(ない)などといったりします。


株式などに投資をする場合、価格が上昇しないと値上がり益は得られません。

したがって、ある程度のボラティリティは必要です。

しかし、ボラティリティが大きすぎると、トレンドがどちらの方向を向いているのかも判別しにくくなります。


1日で損益を計算する(日計り)デイトレーダーにとっては、日々のボラティリティが大きくないと、収益機会がありませんが、中長期のボラティリティは少なくてもかまいません。

一方、中長期の投資家にとっては、週足や月足ベースのボラティリティは小さい方が、トレンドがわかりやすいということになります。


このように、ボラティリティの大小、好悪は立場によって変わるので、一概にどちらが良いとはいえません。

自分自身にとってどちらが有利か、ということが一番大切になります。


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チャイキン・ボラティリティ指標(CVI:Chaikin Volatility Indicator)

チャイキン・ボラティリティ指標(CVI:Chaikin Volatility Indicator)

出典:TRSDING TECHNOLOGIES


チャイキン・ボラティリティ指標(CVI)は、マーク・チャイキンが考案した指標です。

日中高低差、つまり日々の高値と安値の差が、過去に比べてどのように変化しているのかを計算したものです。

日中高低差は、日々のばらつきが大きいので、指数平滑移動平均を取り、一定期間過去の値を基準として変化率を求めています。


計算方法

$$日中高低=(高値-安値)$$

$$高安平均=日中高安×α+前日の高安平均×(1-α)$$

$$CVI=(高安平均-n日前の高安平均)÷n日前の高安平均×100$$

$$α=2÷(n+1)$$


考案者はn=10で計算していました。


CVIの値が大きくなるときは、過去に比べて値動きが大きくなっており、騰落の勢いが強まっていることを意味しています。

相場が上昇している場合には、好材料を背景として買い人気が高まっていることが想定され、下降している場合には、悪材料が出て投げ売りが続いていることが想定されます。

このようなときは相場の流れに逆らわず、順張りで臨む方が無難です。


急上昇する場面は注意が必要

CVIが急上昇する場合は、相場の流れが急変していることが多いので、注意が必要です。


一方、CVIの値が小さくなるときは、値動きが小さくなって勢いが弱く、相場が膠着(こうちゃく)していることを意味しています。

相場が上昇しているか下降しているかに関係なく、積極的に売り買いする好材料がなく、先行きの見通しも不透明で人気が離散している状態です。

このようなときには、売買をしてもなかなか収益に結びつかないことが多く、方向感が出るまで、少し様子を見た方がよいでしょう。


また、価格が上昇しているにもかかわらず、CVIが低下する場合には、高値警戒感が広がって買手の勢いが弱くなっている可能性があります。

その後、反落に転じる場合もありますから、注意が必要です。


反対に、価格が大幅に下落した後、CVIが低下する場合には、売り物が出尽くしたものの悪材料は払拭されず、長い底練り相場に入る場合があります。


相対ボラティリティ指標(RVI:Relative Volatility Index)

相対ボラティリティ指標(RVI:Relative Volatility Index)

出典:TRSDING TECHNOLOGIES


相対ボラティリティ指数(RVI)は、ドナルド・ドーシーが1993年に発表した指標です。

バラティリティの大きさは、標準偏差で表すことができます。


標準偏差とは、データや確率変数の平均値からの散らばり具合を表す指標の一つです。

偏差ベクトルと、値が標準偏差のみであるベクトルは、ユークリッドノルムが等しくなります。

標準偏差を2乗したのが分散であり、従って、標準偏差は分散の非負の平方根です。

標準偏差が 0 であることは、データの値が全て等しいことと同値です。


標準偏差が大きければボラティリティが大きく、標準偏差が小さければボラティリティも小さいことになります。


計算方法

前日比

$$u=前日比で終値が上昇した日の10日間の終値の標準偏差$$

$$d=前日比で終値が下落した日の10日間の終値の標準偏差$$

$$U=(前日U×13+u)÷14$$

$$D=(前日D×13+d)÷14$$

$$RVI=100×U÷(U+D)$$


Excelで標準偏差を計算する関数には、STDEV.PとSTDEV.Sがありますが、RVIの計算ではどちらを用いても大きな違いは出ないようです。


UとDの計算方法は、RSIを開発したワイルダーが考案した計算方法で、平均値の近似値を求める簡便法です。

14日間のuやdを合計して14で割ると、平均値を求めるのに14回計算しなければなりません。

しかし、前日のU(uの平均の近似値)やD(dの平均の近似値)を13倍したものに当日のuやdを加えて14で割ると、計算は3日で済みます。

コンピューターがなかった時代には、正確さよりも計算労力の節約の方が重要課題だったようです。


50超なら強気、50未満なら弱気

RVIが50以上ならボラティリティは増大傾向に、50未満ならボラティリティは縮小傾向にあります。


一般には、RVIが50超の場面で他の指標が買いシグナルを出したときを買い、RVIが50未満のときに他の指標が売りシグナルを出したときを売りとされます。

しかし、RVIと価格の推移を見ると、RVIが増加傾向の場面で他の指標が買いシグナルを出したときに買い、RVIが減少傾向の場面で他の指標が売りシグナルを出したときに売るという方法もありそうです。


アルサー指標(UI:Ulcer Index)

アルサー指標(UI:Ulcer Index)

出典:TRSDING TECHNOLOGIES


アルサー指標(UI)は、ピーター・マーチンとバイロン・マッキャンが1989年に発表した指標です。


Ulcerとは英語で「墜落」という意味です。

価格変動リスクを表す値としてよく標準偏差を用いますが、標準偏差は価格が上昇しても下落しても、変化が大きければ大きくなります。


しかし、投資家の感覚としては価格の下落がリスクであって、価格の上昇リスクではありません。

そこで最高値からの下落率だけを使って、下落リスクだけを計算する指標が考案されました。


計算方法

Max Value:当日からn-1日前までの間の最高値

$$SumSq={100×(当日終値÷Max Value-1)}の自乗のn日合計$$

$$UI=(SumSq÷n)の平方根$$


計算期間nは任意ですが、考案者は週足終値とn=21で計算していました。


SumSqの計算式の中にある「100×(当日終値÷Max Value-1)」は「(当日終値-Max Value)÷Max Value×100」と同じ意味なので、下落率を元に計算していることになります。

しかし、自乗してから合計しているのでSumSqの値はプラスになり、指数の値もプラスになります。


下落リスクを指標化

UIが0に近い低位で推移する場面は、価格が高値追いを続けていることを意味します。

反対に、UIの値が高水準で推移する場面は、価格の下落が続いていることを意味します。

価格が横ばいのときも、UIの水準は低くなります。


したがって、UIの使い方は、指標が高い水準から下落に転じるか、低位で推移している場面で他の指標が買いシグナルを出したときに買い、低い水準から上昇に転じる場面で他の指標が売りシグナルを出したときに売るのが基本です。


また、UIの平均的な水準が高い銘柄は、低い銘柄に比べて下落局面が多いことを意味し、値動きが荒いことが予想されます。

つまり、UIの平均的水準が低い銘柄の方が、高い銘柄より投資リスクが低いことになります。


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