トレンドを利用して投資する場合、トレンドの方向だけでなく、トレンドが強い時に投資することも大切です。
同じ上昇トレンドでも、トレンドが強ければ短期間で利益を上げられますが、トレンドが弱ければ投資期間を長くしてもなかなか利益が上げられないからです。
トレンドの強さはトレンドの角度で表され、垂直に近いほどトレンドが強く、水平に近いほど弱いとされます。
この角度は、単位時間当たり価格の変化率と言い換えることもできます。
大きな変化率で長時間推移する場面が強いトレンドで、小さな変化率で推移する場面が弱いトレンドといえます。
強いトレンドでは、トレンドの初期と末期の価格差が大きくなるので、市場に参加するタイミングが少々遅くても収益を上げることができます。
一方、弱いトレンドでは、トレンドの初期と末期の価格差が小さいので、最初から最後まで投資したとしても十分な収益が上げられるとは限りません。
トレンドの強さを知るためのツールはいろいろあります。
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ランダムウォーク指数(RWI:Random Walk Index)
出典:ForexNihon.com
ランダムウォーク指数(RWI)は、ミッチェル・パウロスが1991年に発表した指数です。
過去一定期間における最高値(最低値)と日々の安値(高値)との差と、日々の高値と安値の平均値(Average Range という)を比較することで、価格推移からランダムに近いのか、上昇、下降どちらのトレンドが発生しているのか、またその強弱を判断します。
当日高値に注目したものをRWI-H(高値RWI)、当日安値に注目したものをRWI-L(安値RWI)といいます。
また、計算期間nを2~7で計算したものをSRWI(Short RWI、短期RWI)、8~64で計算したものをLRWI(Long RWI、長期RWI)といいます。
計算の仕方
$$RWI-H=(当日高値-n日間の最安値)÷{(日中高値-日中安値)のn日平均×(nの平方根)}$$
$$RWI-L=(n日間の最高値-当日安値)÷{(日中高値-日中安値)のn日平均×(nの平方根)}$$
上昇と下降のどちらの勢いが強いか
上昇トレンドでは、RWI-HがRWI-Lを上回り、高値の更新が続く強い上昇トレンドではRWI-Hの上昇が続きます。
しかし、高値の更新ができなくなるとRWI-Hの値は急速に低下し、場合によってはトレンドが下降に転じるよりも早く下げ始めることがあります。
反対に、下降トレンドではRWI-LがRWI-Hを上回り、安値の更新が続いている強い下降トレンドではRWI-Lの上昇が続きます。
安値の更新ができなくなるとRWI-Lの値は急速に低下し、場合によってはトレンドが上昇に転じるよりも早く下げ始めることがあります。
また、RWI-HとRWI-Lが同じくらいの水準で頻繁に交互するような場合には、横ばいトレンドと判断します。
RWI-Hが上昇して、下降するRWI-Lを上回るタイミングを買いシグナル、RWI-Lが上昇して、下降するRWI-Hを上回るタイミングを売りシグナルとします。
RWIは敏感に上下する傾向があり、価格推移の天井とRWI-Hが天井をつけるタイミング、価格推移の底とRWI-Lが天井をつけるタイミングをつけるタイミングは必ずしも一致しません。
それぞれおおむね合致するよう、投資対象ごとに計算期間を調節する必要があります。
トレンド・インテンシティ指数(Tll:Trend Intensity Index)
出典:TRADING TECHNOLOGIES
トレンド・インテンシティ指数(Tll)は、M.H.ピーが2002年に発表した指標です。
インテンシティとは強さや激しさのことで、一定期間における価格の移動平均乖離幅のうち、プラス乖離の割合がどのくらいかを見るものです。
価格が移動平均からどのくらい離れたか、その乖離に注目する指標はいろいろありますが、理論的な上限値や下限値を持たないものがほとんどです。
TIIは0~100の間で移行し、この範囲から逸脱することはありません。
計算の仕方
$$TII=(SD)÷{(SD+)+(SD-)}×100$$
D:終値-m日単純平均
SD+=n-1日前から当日までのDのうち、プラスだった値の合計
SD-=n-1日前から当日までのDのうち、マイナスだった値の合計絶対値
n、mは任意ですが、考案者はn=30、m=60を標準値としていました。
Dを終値の前日比騰落幅に置き換えるとRSI(相対力指数)と同じになります。
したがってTIIは移動平均乖離幅で計算したRSIといい換えることもできます。
どちらかと言うと長期投資向きのテクニカル分析
上昇トレンドでは、価格は基本的に移動平均を上回る水準で推移するので、上昇が続くとTIIは100%に接近します。
反対に、下降トレンドでは、価格は基本的に移動平均を下回る水準で推移するので、下落が続くとTIIは0に接近します。
もみ合い相場ではトレンドが横ばいになると、TIIは50近辺で推移します。
同様に、TIIが50%を超えて上昇すれば、価格推移は上昇トレンドに入った、TIIが50%を下回って下落すれば、価格推移は下落トレンドに入ったと判断することができます。
考案者によれば、売買シグナルはTIIが80%を上回るときに買い建て、20%を下回るときに空売りするとしています。
しかし、このタイミングだとトレンドが確定してから投資をすることになり、十分に長いトレンドでないと収益機会が得られない可能性があります。
場合によっては、20%を超えるときに買い建て、80%を下回るときに空売りする方がよいかもしれません。
価格トレンド指数(PTI:Price Trend Index)
価格トレンド指数(PTI)は、時間と価格の相関を見るものです。
PTIは、順位相関係数(RCI)とほぼ同じ数値になります。
RCIが時間の順位と価格の順位を使って複雑な計算をしなけらばならないのに対して、PTIはExcelで簡単に計算できます。
計算方法
週足や月足で計算する場合は、時間のデータとして日付で代用してもかまいません。
しかし、日足の場合は土日や祝日の休みが入り、時間が等間隔ではありません。
そこで、1,2,3・・・nという時間の代わりとなる数列を用意します。
$$PTI=CORREL(価格の範囲:時間の範囲)×100$$
計算期間nは任意ですが、標準値は20です。
価格は中値(高値と安値の平均)を用いる方が正確ですが、終値でもかまいません。
PTIはトレンドの有無を示している
PTIは-100から100の間で推移します。
50を超えて100に近づくほど、価格推移は時間の経過とともに上昇する傾向が強いことを意味します。
つまり、上昇トレンドにあります。
逆に、-50を下回り、-100に近づくほど、価格推移は時間の経過とともに下落する傾向が強いことを意味します。
つまり、下降トレンドになります。
±50の間にあるときは横ばいトレンドにあると判断します。
使い道は複数あります。
買いシグナル、PTIが上昇して-50を超えたタイミング、PTIが上昇して0を超えたタイミング、PTIが上昇して50を超えたタイミングの3通りがあります。
順番に、下落トレンドが終わったとき、トレンドが中心となったとき、上昇トレンドが明確になったときに相当します。
売りシグナルはその反対で、PTIが下降して50を下回ったタイミング、PTIが下降して0を下回ったタイミング、PTIが下降して-50を下回ったタイミングの3種類です。
順番に上昇トレンドが終わったとき、トレンドが中立になったとき、下降トレンドが明確になったときに相当します。
どの組み合わせがよいかは、分析対象ごとに長期間のPTIと価格推移を観察して決めるのがよいでしょう。