財務省が2022年8月17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4367億円の赤字でした。
赤字は12カ月連続となり、赤字額は7月としては最大です。
エネルギー価格の高騰や円安のため輸入額が前年同月比47.2%増の10兆1895億円となり、5カ月連続で過去最大を更新しました。
12カ月連続の赤字は過去2番目の長さ
赤字額は比較可能な1979年以降で7番目に大きい額となります。
12カ月連続の赤字は、2015年2月までの32カ月に次ぐ過去2番目の長さです。
15年2月までの赤字は東日本大震災後の原子力発電所停止に伴い、火力発電所用の燃料輸入が急増したことが影響しています。
輸入はアラブ首長国連邦(UAE)からを中心に原油を含む原粗油が2倍に増えました。
オーストラリアからを中心とする液化天然ガス(LNG)と石炭もそれぞれ2.2倍、3.7倍となりました。
原粗油の輸入額は16カ月連続の増加、数量ベースでも9カ月連続の増加となります。
通関での円建て輸入単価は1キロリットル当たり9万9667円と、前年同月からほぼ倍増しました。
石炭とLNGの輸入量は前年同月から減っており、エネルギー全般での単価高騰が貿易赤字の拡大につながりました。
輸出額は8兆7528億円で、2カ月連続で過去最大を更新
輸出額は19.0%増の8兆7528億円で、2カ月連続で過去最大を更新しました。
米国向けを中心に自動車が13.7%伸びたほか、鉱物性燃料が2.4倍、半導体等製造装置が4割弱増えました。
地域別では、対米国の黒字が22.4%減の5127億円と2カ月ぶりに減りました。
自動車などの輸出が伸び輸出額が過去最高となった一方で、LNGや石炭の輸入増で輸入額も最高となりました。
対中国の貿易収支は4240億円の赤字で、16カ月連続の赤字
対アジアと対中国の輸出入額もそれぞれ過去最高を更新しました。
対中国の貿易収支は4240億円の赤字で、16カ月連続の赤字です。
赤字幅は前年同月から7倍に拡大した。パソコンや衣類などの輸入が膨らみました。
対中国貿易は輸出額が6月から2カ月連続、輸入額が5月から3カ月連続で前年同月を上回りました。
新型コロナウイルス禍を受けた上海市のロックダウン(都市封鎖)が6月から解除された影響とみられ、7月は日本からの自動車輸出額も2割弱伸びました。
対ロシアの貿易収支は1333億円の赤字
対ロシアの貿易収支は1333億円の赤字で、赤字額は約2.5倍に膨らみました。
ウクライナ侵攻による物流の混乱や日本政府の輸出禁止措置により、輸出額は407億円と49.5%減少。
輸入額は31%増の1740億円でした。
LNGや石炭の輸入量は3~4割減少しましたが、価格高騰により金額ベースではLNGは3割増、石炭は2.3倍に増えました。
ロシアからの原粗油輸入は6月はゼロでしたが、7月は前年同月比34%減の112億円でした。
主要7カ国(G7)が輸入禁止で合意し、民間企業は輸入を止めていますが、通関手続きの関係で6月以前に到着したものが計上されたもようです。
貿易赤字が続く原因は、円安を活かせていない
貿易赤字が続く背景に、円安にもかかわらず輸出量の伸びが小さいことがあります。
7月の輸出数量指数(2015年=100)は103.5と前年同月に比べて2%下がり、5カ月連続で前年を下回りました。
円安と海外のインフレにより円建ての輸出額は膨らんでいるが、数量は伸びていません。
まとめ
財務省が2022年8月17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4367億円の赤字でした。
赤字は12カ月連続となり、赤字額は7月としては最大です。
輸入はアラブ首長国連邦(UAE)からを中心に原油を含む原粗油が2倍に増えました。
オーストラリアからを中心とする液化天然ガス(LNG)と石炭もそれぞれ2.2倍、3.7倍となりました。
輸出額は19.0%増の8兆7528億円で、2カ月連続で過去最大を更新しました。
米国向けを中心に自動車が13.7%伸びたほか、鉱物性燃料が2.4倍、半導体等製造装置が4割弱増えました。
国際通貨基金(IMF)は7月、米欧での利上げなどを背景に、世界の貿易額の見通しを下げました。
農林中金総合研究所は、「輸出量は1年ほど伸び悩み、貿易赤字が続きやすい状況だ」と指摘しています。