ネット証券最大手のSBI証券と2位の楽天証券は2023年8月31日、日本株の売買手数料を無料にすると正式に発表しました。
無料化は国内証券会社で初めてのことです。
2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるのを前に個人の投資を呼び込みたい思惑があります。
これによって証券各社に手数料の下げ圧力がかかるのは必至です。
業界の再編につながる可能性もあります。
詳しく解説していきます。
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SBI証券が取引手数料を無料に 楽天証券も追随
SBI証券では9月30日の注文分から日本株の現物取引と信用取引の売買手数料がゼロになります。
現物取引の場合、これまでは一部取引を除いて1注文あたり55~1070円かかっていました。
2021年から25歳以下の若年層を対象に日本株の売買手数料をゼロにしていましたが、一律で無料になります。
SBI証券は今回の取り組みを「ゼロ革命」と名付けています。
楽天証券も10月1日の注文分から現物取引と信用取引の手数料をゼロにします。
現在の現物株取引の手数料はSBI証券と同じ1注文あたり55~1070円です。
証券口座数はSBI証券が約1000万、楽天証券が約900万で3位のマネックス証券(約200万)に大きく差をつけています。
完全無料化でさらなる囲い込みを狙っています。
SBIと楽天はそれぞれ1~2割の収益源を失う
SBI証券は2019年に将来の手数料ゼロ化を宣言していました。
想定外だったのが楽天証券です。
持ち株会社の楽天証券ホールディングスは東京証券取引所への上場準備中で、日本株取引という収益源がなくなれば上場時の株式評価額が下がる恐れがあります。
上場の主な目的が携帯電話事業で苦戦する親会社、楽天グループの資金調達であることをふまえると、今回ばかりは追随しないと思われていました。
SBIと楽天はそれぞれ1~2割の収益源を失うことになり、競合他社へ「消耗戦」を仕掛けたかっこうです。
SBI証券では日本株取引の手数料収入は年200億円程度で営業収益の1割程度を占めています。
SBI証券は新規顧客を獲得し、手数料無料化の影響を外国為替証拠金(FX)取引や暗号資産(仮想通貨)取引、法人営業などで補う方針のようです。
マネックス証券・松井証券は追随しないと表明
今後、他のネット証券や大手総合証券が追随するかが焦点になりますが、マネックス証券は8月31日、無料化には追随しないと表明しました。
資産管理ツールや銘柄分析サービスなど、投資家の資産運用を手助けする機能を継続的に提供していく方針です。
松井証券は新しい少額投資非課税制度(NISA)口座での米国株などの売買手数料を無料化するほか、投信残高の最大1%をポイントとして還元するサービスを始めます。
大手証券は、対面でのコンサルティング営業を重視しており、手数料勝負には巻き込まれないと発言しています。
手数料無料化で米国では業界再編が起きた
2社が無料化に踏み切ることで、個人投資家の手数料に対する見方は一段と厳しくなる公算が大きいです。
業界全体として手数料の下げ圧力が強まる可能性があります。
業界の先行きを占ううえで参考になるのが米国です。
2019年10月、ネット証券大手のチャールズ・シュワブが手数料無料化を発表すると、競合他社もすぐさま追随しました。
翌11月にはシュワブが同業大手TDアメリトレード・ホールディングの買収を決めるという大型再編が起きました。
米国のネット証券各社は信用取引の金利収入などを主な収益源としています。
証券会社は収益が振れやすく利益率も低いため、株式市場での評価は低いです。
PBR(株価純資産倍率)は解散価値の目安となる1倍を軒並み下回り、SBIホールディングスも0.7倍台です。
業界再編の余地は大きいです。