2023年提出分(令和4年分)の確定申告の申告期間は、2023年2月16日(木)から3月15日(水)です。
給与所得者が税金を取り戻す還付申告はすでに受け付けが始まっています。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
多くの人にとって関係があるのが医療費控除です。
2022年10月から所得が一定以上の75歳以上の自己負担割合が2割に引き上げられるなど、医療費が家計に与える影響は大きくなっています。
医療費控除には通常のものと特例の「セルフメディケーション税制」があり、使い分け方などわかりにくい点もあります。
詳しく解説していきます。
医療費控除とは
医療費控除はその年に支払った医療費の一定額を超えた分を、所得税の対象となる所得から差し引ける制度です。
控除できる金額は200万円が上限になります。
給与所得のみの会社員などは確定申告で前年分の手続きをすれば還付されるので、医療費の負担を補えます。
医療費控除が認められているのは、医療費がまとまった金額を超えると家計への負担が大きいためです。
総所得金額等が200万円以上なら、10万円を超えた分が対象となります。
例えば医療費の合計が20万円なら控除額は10万円で、所得税率が20%の人なら2万円分が還付される計算です。
収入が公的年金のみなどで総所得金額等が200万円未満なら、その5%を超えた分が対象なので、10万円以下でも医療費控除を受けられる可能性があります。
医療費控除の対象になる支出の内容
医療費控除で知っておきたいのは、対象となる支出の内容です。
医療費といえば一般的に公的医療保険の対象となるかどうかを想像しがちですが、医療費控除の対象と必ずしも重複するわけではありません。
例えば視力を矯正する「レーシック手術」の費用は全額自己負担ですが、医療費控除の対象になります。
他にも、インプラントも費用は全額自己負担ですが、医療費控除の対象になります。
医療費控除の対象かどうかは、医師などによる診療や治療の対価が基本です。
例えば健康診断や人間ドックの費用は原則として対象外ですが、検査の結果、異常が見つかり引き続き治療した場合は対象になります。
鍼灸(しんきゅう)師や柔道整復師などによる施術は、疲労軽減や体調維持などが目的なら対象外です。
医療費控除の注意点
医療費控除では民間医療保険の保険金や公的医療保険の高額療養費など、あとから補填された金額を控除額から差し引く必要があります。
注意したいのは、給付の目的となった医療費からのみ差し引く点です。
例えば家族で合計30万円の医療費がかかり、そのうち夫の医療費として20万円を自己負担したが民間医療保険から25万円の保険金を受け取った場合。差額の5万円を他の支出から差し引く必要はないので医療費の合計は5万円でなく10万円になります。
わからないことがあれば、税理士会が無料で開催する相談会などを利用しましょう。
セルフメディケーション税制とは
控除の対象を、医療用医薬品から転用した市販薬である「スイッチOTC医薬品」などに限定したうえで、控除額を「1万2000円を超えた分」とした特例が「セルフメディケーション税制」です。
通常の医療費控除より少額で利用できる制度として2017年1月に始まりました。
当初は2021年分までの予定でしたが、2026年まで延長となりました。
延長と同時に対象となる医薬品もスイッチOTC医薬品と同種の効能や効果を有する医薬品に広がりました。
購入したドラッグストアや薬局のレシートに星印がついていたり、製品のパッケージに識別マークが印刷されていたりして確認できます。
スイッチOTC医薬品とは
薬局やドラッグストアで購入できる市販薬を「OTC医薬品」といいます。
また、医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬(OTC医薬品)に転用(スイッチ)したものを「スイッチOTC医薬品」といいます。
セルフメディケーション税制と医療費控除は併用できない
セルフメディケーション税制は通常の医療費控除とは併用できず、いずれか一方を選択する必要があります。
控除額が大きくなる方を選ぶべきでしょう。
例えば医療費控除の対象が13万円、うちセルフメディケーション税制が5万円の場合。
医療費控除なら差し引けるのは3万円ですが、セルフメディケーション税制なら3万8000円なのでお得になります。
セルフメディケーション税制は親族の支払い分も合算できる
医療費控除もセルフメディケーション税制も生計を一にする配偶者や親族のための支払分を合算できます。
同居だけでなく、単身赴任していたり、進学のためにひとり暮らしする子に仕送りしていたりする場合も認められます。
ただし、セルフメディケーション税制の場合は、確定申告する人が定期健康診断やインフルエンザワクチンの予防接種といった健康のための一定の取り組みをしていることが条件です。
従来は結果通知表などの提出も必要でしたが、自宅で5年間保存すれば済むようになりました。