個人再生は債務整理の一つです。
個人再生のメリットは借金を減額することができることです。
借金が高額なほど減額幅が大きくなるため、再建の道筋が見えてきます。
この記事を読めば、個人再生の「減額される金額」を知ることができます。
個人再生における債務の減額基準
個人再生手続で借金が減額(圧縮)される基準は下記のとおりです。
①個人再生手続きにおける債務の減額基準
債務額が100万円未満の場合…債務全額(減額なし)
債務額が100万円以上500万円以下の場合…100万円
債務額が500万円を超え1,500万円以下の場合…5分の1
債務額が1,500万円を超え3,000万円以下の場合…300万円
債務額が3,000万円を超え5,000万円以下の場合…10分の1
債務減額の例
債務総額 | 減額後の総額 | 月の返済予定額 (返済期間が3年の場合) |
100万円 | 100万円 | 約28,000円 |
300万円 | 100万円 | 約28,000円 |
500万円 | 100万円 | 約28,000円 |
700万円 | 140万円 | 約39,000円 |
1,000万円 | 200万円 | 約56,000円 |
1,500万円 | 300万円 | 約84,000円 |
2,000万円 | 300万円 | 約84,000円 |
したがって、たとえば総債務額(借入額の総額)300万円の人が個人再生をした場合、100万円だけを返済すればよいことになります。
個人再生では、原則として3年間の分割払いで支払うことになるので、月28,000円程度が支払額になるということです。
借金の総額が300万円の方だと、個人再生手続きに入る前の返済総額が月額3万円以下ということはないでしょうから、月の返済総額を抑えることができるというのも、個人再生の大きなメリットの一つといえます。
なお、給与所得者等再生手続では、上記の表(①)の基準により減額された債務額と、
②自分の可処分所得額(自分の収入の合計額から税金や生活費用として政令で定められた費用を控除した残額)の2年分の金額
を比較して、どちらか高いほうの額を支払うことになります。
②は、①よりも高額になってしまうことが多いため、給与所得者等再生手続を選択すると、小規模個人再生手続と比べて返済総額が大きくなってしまいがちです。
そこで、サラリーマンの方でも、債権者が借金の減額について文句を言ってきそうにないと判断できる場合には、給与所得者等再生手続ではなく、小規模個人再生手続を選択することも十分に考えられるところです。
清算価値保障原則とは
さらに、小規模個人再生手続でも給与所得者等再生手続でも、
③自分の財産をすべて処分した場合に得られる金額
と①・②で触れた基準で減額された借金総額と比較して③の額の方が大きい場合、③の額を36回分割して支払うことになります。
これを「清算価値保障原則」といいます。
清算価値保障原則とは、「個人再生手続では、自己名義の財産をすべて処分した場合に得られる以上の金額を返済しなければならない」という原則です。
先の例でいうと、総債務額が300万円である方が50万円の価値をもつ車を所有し、70万円の生命保険の解約返戻金がある場合に個人再生をすると、返済しなければならない借金の総額は、100万円ではなく、120万円(50万円+70万円)になるということです。
この原則は、「破産手続では、自己名義の財産をすべて処分した場合にのみ借金をゼロにすることが認められているにもかかわらず、個人再生手続を選択した場合に、自己名義の財産の総額を下回る額の返済しかしないでよいということになれば、破産手続きと個人再生手続との間の公平が保てなくなる」ということを理由とします。
2つの手続きにおける返済総額の決め方
Aさん | Bさん | Cさん | |
借金総額 | 500万円➝100万円 | 700万円➝140万円 (小) | 1,000万円➝200万円 |
自己名義の財産 の価値の総額 |
120万円 (小) | 120万円 | 250万円 (小・給) |
可処分所得の 2年分の額 |
150万円 (給) | 150万円 (給) | 170万円 |
(小):小規模個人再生手続における返済総額
(給):給与所得者等再生手続における返済総額
AさんとBさんは、小規模個人再生手続を選択したほうが、返済総額が小さくて済むことになります(しかし、再生計画に反対してきそうな債権者が含まれる場合には、給与所得者等再生手続を選択することになります)。
Cさんについては、自己名義の財産の総額が大きく、どちらの手続きを選択しても総返済額は変わらないため、再生計画が認可されやすいように、給与所得者等再生手続を選択すべきであるといえます。
個人再生手続は弁護士等に依頼しなければ駄目なのか
個人再生手続は裁判所を通して行うため、複雑な手続きが必要となり、限られた期間に数多くの書類を提出することが求められます。
しかし、個人再生手続は、申立人が主体となって進めていかなければならない制度ですので、裁判所が手続きについて積極的にアドバイスをしてくれるわけではありません。
裁判所から求められる手続きにタイミングよく対応できなければ、それまでの手続きそのものが無駄になってしまうこともあり得ます。
一般的に、弁護士等に依頼せずに自身で個人再生手続を利用することは、極めて難しいと思われます。
自己破産、個人再生、任意整理、特定調停等のどの手続きを選択するかも含めて、弁護士や司法書士などに相談したり、書類作成のアドバイスを求めたりすることをお勧めします。
また、裁判所によっては、弁護士に依頼すれば個人再生委員(申立人の財産等を調査し、申立人が作成する「再生計画案」についアドバイス等を行う者)が選任されず、結果として裁判所に納めなければならない手続き費用が安くなるところもあります。
費用面についても、必ずしも「弁護士に頼んだ分だけ費用が余計にかかる」というわけではありません。
まずは、費用の面も含めて、最寄りの弁護士会に相談するなどしてみましょう。
ちなみに、札幌地方裁判所はホームページ上で、「弁護士に依頼せずに個人再生を申し立てた場合には、原則として個人再生委員を選任し、その報酬は30万円である」と明記しています。