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免責不許可事由とは?自己破産しても借金が免責にならない具体例

免責不許可事由とは?自己破産しても借金が免責にならない具体例

この記事では、「免責不許可事由」について解説していきます。


身の丈に合わない多額の借金を背負ったことにより、毎月返済に充てられる金額よりも大きな利子が発生してしまうことがあります。

こうなってしまうと完済は難しく、自己破産などの手続きを検討しなくてはなりません。


しかし、自己破産してもすべての借金を帳消しにできるとは限らないのです。


この記事を読めば、免責不許可事由の「詳細」「具体例」「過去の判例」を知ることができます。





もくじ
  1. 免責不許可事由とは
  2. 免責不許可事由になる具体例
  3. 免責不許可事由があっても免責されることがある
  4. 免責不許可事由の判例

免責不許可事由とは

免責不許可事由とは

自己破産の最大のメリットは免責を得られることです。つまり、借金(債務)を帳消しにしてもらえることです。

しかし、自己破産を申し立てれば、必ず免責が許可されるというわけではありません。


破産手続が開始されると、破産者が負っていた借金について法律上の支払義務を免除するかどうかを決める手続に入ります。これを免責手続といいます。

この手続で、裁判所が免責許可決定を出しますと、借金の支払義務が免除されます。


しかし、ギャンブルや浪費によって多額の借金を作ったなど、不誠実な破産者であることを示す事情があるときには、免責許可決定がもらえない(免責が許可されない)ことがあります。

このように、免責が許可されなくなってしまう事情のことを「免責不許可事由」といい、この免責不許可事由は、法律で決められています。


免責不許可事由の読み方は=めんせきふきょかじゆうです。


免責不許可事由になる具体例

免責不許可事由になる具体例

法律で決められた免責不許可事由のうち、実際によく問題になるものは、下記のとおりです。

  1. ギャンブルや浪費
  2. 転売行為
  3. 破産管財人に協力しない
  4. 財産を隠す
  5. 債権者を明かさない
  6. 債権者を平等に扱わない
  7. 7年以内に免責を受けたことがある


それぞれわかりやすく解説していきます。


ギャンブルや浪費

免責不許可事由の代表例ともいえるのが、ギャンブルや浪費による借金です。

ギャンブルといっても、競馬やパチンコだけでなく、不動産投資やFX、株式投資なども含まれます。


また、多額の借金を遊興補(遊びや趣味・娯楽、宴会等の飲食に使った金銭)に充てていたような場合も、免責不許可事由に該当します。


転売行為

ローンやクレジットカードで購入した商品を、ローン返済中に転売し、現金化するような行為も免責不許可事由に該当します。


破産管財人に協力しない

免責は、誰よりも破産者にメリットがある制度です。


そして、免責のための手続きの多くを行うのが破産管財人です。

この破産管財人に協力しない破産者の行為は、破産手続きを妨害するもののため、免責不許可事由に該当します。


財産を隠す

自己破産の手続きには、免責手続きだけでなく、債権者のために財産等を清算する手続き(破産手続き)も含まれます。


財産を隠す行為は、破産手続きを妨げるもののため、免責不許可事由に該当します。


債権者を明かさない

財産を隠す行為と同様に、債権者を明かさないのも、破産手続きを妨げる行為にあたるため、免責不許可事由に該当します。


債権者を平等に扱わない

破産手続きは、債権者間に不公平が生じないよう、公正に清算を行わなければなりません。

そのため、たとえば、一部の債権者にだけ全額返済してしまうなど、不公平を生じるさせる行為は禁止されています。


これを破るのも免責不許可事由に該当します。


7年以内に免責を受けたことがある

一度免責を受けたり、それに匹敵するような強力な法律上の保護を受けたことがある場合には、それが7年以内になされたものである場合は、免責は認められません。


免責不許可事由があっても免責されることがある

免責不許可事由があっても免責されることがある

もしも、免責不許可事由に該当する心当たりがあった場合、正直に事情を話すべきです。

免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所は諸事情を考慮して、免責許可の決定を出すことができるのです。


つまり、ギャンブルや浪費によってつくられた借金であっても、その後の態度等の事情によっては、十分、免責が得られる可能性があるのです。

むしろ、これらの事情を隠し、これが裁判所や破産管財にばれてしまうと大変です。


破産管財人や裁判所に対して嘘をつくこととなり、手続きを害しているものとして、免責不許可事由を強固にしてしまう可能性が高まります。

弁護士に相談するときは、免責不許可事由に該当してしまうかもしれない事情をきちんと説明し、対応を相談しましょう。


免責不許可事由の判例

免責不許可事由の判例

免責不許可事由があっても反省の程度を考慮され裁量免責が認められた裁判例

破産者に免責不許可事由があっても、破産者の不誠実性が顕著でない上、免責の申立てに対し債権者が異議を申立てず、かつ破産者が過去を反省して生活態度を改め、社会人として更生できる見込みが十分にあったため、免責が許可された(大阪高裁:平成元年8月2日)


借入れの際に債権者に嘘をついて借入れをした場合であっても免責を認めた裁判例

サラ金からの借入の際の詐術の程度が軽微であるとし、免責が認められた(札幌高裁:昭和61年3月28日)


免責不許可事由があっても不誠実性の程度が著しいものではないので裁量免責を認めた裁判例

破産免責申立人の行為は軽微とはいい難いが、不誠実性の程度は著しいものではなく、免責につき関係者から異議申立のないことなど判示の事情のもとで、裁量により免責が認められた(東京高裁:平成元年8月22日)


借金の原因が住宅購入の為の多額の借入れの場合であっても免責を認めた裁判例

住宅購入のための多額の借入れは浪費に当たるが、判示の事情のもとで不誠実性が顕著とは言い難いとして裁量により免責が認められた(福岡高裁:平成9年2月25日)


借入れの際に職業を偽った場合であっても免責を認めた裁判例

サラ金業者からの借入れに際し職業を偽ったことのある破産者に対し免責が認められた(大阪高裁:昭和58年10月3日)


借金の原因が自動車の買替えの場合であっても免責を認めた裁判例

プロ野球選手による4台の自動車の買替えは、浪費に該当するが、判示の事情の下では、裁量により免責が認められた(福岡高裁:平成9年8月22日)


浪費の事実を認めながらも免責を認めた裁判例

クレジット会社等に対し合計4,100万円の債務があり、そのほとんどは特定の販売店と共謀した着物などの売買の架空契約によって発生した事案について、裁判所は浪費の事実を認めながらも、販売店に利用された側面があることは否定できない等の事情を考慮して免責された(岡山地裁:平成8年4月5日)


すでに支払不能状態で借入れをした場合であっても免責を認めた裁判例

民宿を経営する個人事業者が支払不能の状態に陥った後に事実を隠して知人等から借入れをした行為は免責不許可事由に該当する。破産債権のうち、関連する破産事件において配当を受ける機会のあった債権について全部免責を認め、残余の債権についてはいわゆる割合的一部免責が認められた(高知地裁:平成7年5月31日)


借金の原因が飲酒行為及び競輪にあった場合に免責を認めた裁判例

借金の原因が飲酒行為及び競輪にあった場合でも、本人が病気で労働能力がなく、将来も労働できる見込みがないこと、生活保護を受けていること等を考慮し、裁量による免責が認められた(静岡地裁:平成7年3月6)


借入れの際に支払不能等の破産原因について告知しない場合であっても免責を認めた裁判例

破産者が単に支払不能等の破産原因事実があることを黙秘して相手方に進んで告知しなかったことのみでは「詐術ヲ用ヒ」た場合に当らないと免責が認められた(大阪高裁:平成2年6月11日)


借金の原因が株式投資の場合であっても免責を認めた裁判例

株式投資で損失を被った者がその損失填補のために更に株式投資をした結果多大な債務を負担した場合には、破産法375条1号所定の浪費行為に該当する。浪費行為に該当する場合においても、破産者が自宅を売却してその代金を債務の支払に充てるなど誠実に債務の支払に努めてきたこと等判示の事情の下においては、裁量免責が認められた(東京高裁:平成8年2月7日)


特定の債権者だけに返済の事実を認めながらも免責を認めた裁判例

競艇のための出費により浪費をし、更に破産申立ての際、同僚に対する負債を告知せず、宣告後に取得した退職金のほとんどを債務の支払に充てた破産者に対し、親族が財団に贈与したこと等を考慮して、いわゆる割合的一部免責が認められた(東京地裁:平成6年2月10日)


免責決定後10年以内の免責を認めた裁判例

2回目の破産宣告後の免責申立てで前回の免責決定後10年以内で免責不許可事由が存在する場合であるが、債務者負担の背景には子供や夫の病気、予想外の夫の失職等の事情があること、前回の免責から10年近く経過していることから免責を許可した(宇都宮地足利支決:平成8年1月26日)


会社代表者が業務及び財産の状況に関する帳簿、書類を適正に作成されていなかった場合でも免責を認めた裁判例

破産宣告を受けた株式会社とその代表者との間に経済的一体関係があり、会社の破産について、商業帳簿が適正に作成されていないなど破産法375条4号所定の事由が認められる場合であっても、代表者個人の破産については、事由をもって同法366条ノ9第1号により破産免責を不許可とすることはできない(東京高裁:平成2年12月21日)






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