借金・債務整理

自己破産の手続きの流れをわかりやすく解説

自己破産の手続きの流れをわかりやすく解説

自己破産手続きには、「管財事件」と「同時廃止」の2つが存在します。

当然、それぞれ手続きの流れが異なります。


この記事では、管財事件と同時廃止が共通する「破産申立までに準備する物」と「管財事件の手続きの流れ」、「同時廃止の手続きの流れ」を解説していきます。





破産申立までに準備する物

破産申立までに準備する物

自己破産の手続きには、管財事件と同時廃止の2つがあります。

もちろんこの2つでは、裁判所へ「自己破産したい」と破産申立てを行った後の流れが異なります。


しかし、破産申立までの準備等については共通する部分があるため、ここでまとめて解説していきます。

「管財事件の場合」と「同時廃止の場合」の手続きの流れについては後述します。


裁判所にいきなり出向いて「自己破産をしたい」と申し出ても受け付けてもらえるものではなく、事前にかなりの準備が必要です。


弁護士等に相談するメリット

まず、自己破産の手続きを「弁護士等に依頼するのか」、それとも「自身で申立てをするのか」を、最初に考えなければなりません。

もちろん、弁護士等に依頼せずに自身で破産申し立てをすることは可能です。

しかし、最終的に申立て自体を依頼するかどうかは別にしても、弁護士等への相談はしておいた方がいいです。


先述したように、破産の手続きだけでも大きく分けて2つの方法があります。

「どちらの手続きで申立てをすべきなのか」、また「どのような点が問題になりそうなのか」について、専門家の意見を聞いておくべきです。


また、自己破産以外にも債務整理の方法はありますので、自身に最適な債務整理の方法が何かについても、専門家の意見を聞くべきでしょう。



債権の調査

破産手続きは債権者のための手続きでもあるため、「どれだけ債権者がいて、それぞれどれだけの債権があるのか」を調べなければなりません。


通常、弁護士に依頼した場合には、弁護士は依頼主から債権者名を教えてもらった後、「受任通知」を債権者に送付します。

この受任通知には、債権者に対し、債権額やどのような理由で生じた債権なのかについて開示するよう求める記載がされています。


そのため、債権者から「どのような債権が、いくら残っているのか」という情報を手に入れることになります。

申立てにあたっては、「債権者一覧表」を作成することになります。



財産の調査

破産手続きは債権者のために財産等を清算する手続きですから、清算すべき財産がどれだけあるのかも調べなければなりません。


「不動産」や「自動車」など目につきやすい財産はもちろんのこと、すべての財産の調査には多くの資料を準備しなくてはなりません。

「預貯金」も財産ですから、預貯金通帳は申立てまでの2年分を記帳し、用意する必要があります。


また、「退職金」も財産として扱われるため、どれだけ支払われるのかを勤務先に問い合わせて計算書・証明書を作成してもらう必要があります。

ほかにも、「生命保険の解約返戻金」も財産として扱われるため、解約返戻金がある生命保険については、その計算書や保険証券も用意する必要があります。


もちろん、個々の財産状況に応じて必要となる資料は異なります。財産として思い当たるものは一応、弁護士等に相談してみるべきです。

弁護士が代理人として申立てを行うのであれば、必要なものについては弁護士から指示があります。


財産についても、債権者一覧表と同様に、「財産目録」を作成することになります。



過払い金の調査

見落としがちな財産として、「過払い金」があります。

過払い金とは、消費者金融やクレジット会社等の貸金業者からお金を借りていた人が、本来支払わなければいけない利率以上の利息を支払っていた場合に、貸金業者から取り返せるお金のことです。


相談時には現金として存在しなくても、本来は自身の手元に戻ってくるべきお金ですから、これも財産として扱われます。

そして、過払い金が財産としていくらになるのかを確定するため、破産手続きの前に、取り戻す手続きをとることも多いです。


財産として扱われるものの例

  • 不動産
  • 自動車
  • 預貯金(申立てまでの2年分を記帳する)
  • 退職金(勤務先から計算書・証明書を作成してもらう)
  • 生命保険の解約返戻金(計算書や保険証券を用意する)
  • 過払い金
    など


家計の調査

家計の状況についても、資料としてまとめる必要があります。

具体的には「家計簿」をつけ、収入と支出の流れをわかるようにします。


免責不許可事由には、「浪費」や「債権者隠し」といったものがあります。

家計の状況や支出先を確認することで、「浪費していないか、隠している債権者がいないか」等を確認することになるものです。



住民票・陳述書・報告書の用意

ほかにも、住民票や破産に至った経緯自身でまとめる「陳述書」、あるいは弁護士がまとめる「報告書」等も準備する必要があります。

借入れや財産の状況に応じて必要書類も変わってくるので、自身で破産申立てをしようとする場合には、注意しましょう。


また、破産を申し立てる一番の目的は、債務をなくす決定である「免責不許可決定」を得ることです。

そのため、準備段階でも免責不許可事由がないことをしっかりと確認する視点で、これらの準備をしておく必要があります。



破産申立書の作成

調査を踏まえて、「破産申立書」を作成することになります。

破産申立書の書式自体は、裁判所のホームページなどで入手することができるため、自身で申立てをするのであれば、これを利用します。

弁護士が申立てをするのであれば、弁護士が作成することになります。


そして、「同時廃止が利用できるのか」「管財事件となるのか」「管財事件になるにしても少額管財が利用できるのか」というはっきりとした見通しを立てることができます。



管財事件の場合の手続きの流れ

管財事件の場合の手続きの流れ

破産手続きの開始

破産手続きを開始するには、まず「申立て」をして、「破産手続開始決定」がされます。


申立て

まずは、裁判所に対して「破産をしたい」と申立てを行わなければなりません。

先述した「破産申立までに準備する物」を裁判所に提出することになります。


この際、下記の2つの申立てを同時に行います。

  1. 破産手続開始の申立て
  2. 免責許可の申立て


1つ目の「破産手続開始の申立て」は、債権者のために財産等を清算する手続き(破産手続)の開始を求めるものです。

2つ目の「免責許可の申立て」は、債務者のために債務をなくす手続き(免責手続き)の開始を求めるものです。


破産手続開始決定

破産手続開始の申立てに対して、裁判所は破産手続きを開始する決定をします。

そして、管財事件とされた場合には、この時点で「破産管財人」が選ばれることになります。

選ばれた破産管財人の主導のもと、破産手続きは終了せず、継続することになります(管財事件ではなく同時廃止の場合、破産手続きに関してはこの時点で終了します)。


1.破産手続きの続き

破産手続きでは、破産管財人による破産者の財産の調査や管理、免責不許可事由の有無などが行われます。

破産者に財産があれば、これを債権者に配当(分け与える)するために、お金に換えなければなりません。


こうした破産管財人の業務遂行のために、一定の制限(郵便物等の転送や住居の制限など)が課せられます。

そして、破産者自身が参加しなければならない手続きも存在します。


破産管財人との打ち合わせ

まず、破産手続にあたって、破産管財人との打ち合わせの機会が設けられます。

これは、破産管財人となった弁護士の事務所等で行われますので、指定された場所へ赴く必要があります。


破産に至った経緯や、財産に関する事情等について説明を求められることもあれば、追加で必要な書類の準備・提出を求められることもあります。

また、破産管財人は、破産者に免責不許可事由がないかの調査もしますから、破産手続だけでなく、免責手続きに関しての打ち合わせも兼ねていると考えてください。


債権者集会

破産手続きの最終段階では、裁判所で行われる「債権者集会」に出頭しなければなりません。

債権者集会は、まず破産管財人が裁判所や債権者に対し、管財業務の結果を報告・説明するのが中心です。

具体的には、債権者への配当の有無などが報告されることになります。


債権者集会といっても、実際には債権者である貸金業者等が参加することはありません。

他方で、債権者に個人が含まれる場合、個人債権者が参加し、意見を述べるというケースはそれなりにあります。


多くの場合、債権者集会は1回で終わりますが、財産の処分中であるようなケース(不動産の売却や過払い金の請求中など)等には、2回目以降の債権者集会が設定されることもあります。


破産手続きの終了

債権者集会における破産管財人の報告、債権者の意見等を経て、裁判所は破産手続きを修了する決定をします。

配当がされて終了する場合を「破産手続終結決定」といい、配当すべき財産がないため配当されずに終了する場合を「破産手続廃止決定」といいます。


2.免責手続き

管財手続の場合には、免責手続きも破産手続と並行して行われます。


免責審尋

破産管財人との打ち合わせで、免責不許可事由の有無についても調査されることになります。

これをふまえて、債権者集会中に、破産管財人が免責についての意見も述べ、免責審尋も行われることになります。

そのため、免責審尋のためだけの期日が、別で設けられるわけではありません。


免責許可決定 or 免責不許可決定

債権者の意見者免責審尋の結果をふまえ、裁判所は免責を許可するか否かの決定を行います。

免責許可が決定され、これが確定すれば、債務の支払責務が免除されることになります。


※裁判所の免責許可決定に対して、債権者が不服を申し立てる手続き(即時抗告)が用意されているため、すぐに確定するわけではありません。


以上が、同時廃止手続の大まかな流れとなります。


債権者本人が参加する手続きは?

これまで解説した管財事件の手続きのなかで、債務者本人が参加しなければならないのは、「破産申立時の審尋」「破産管財人との打ち合わせ」「債権者集会」です。

代理人が申立てを行う場合、破産申立時の審尋は行われないことが多いのは、同時廃止の場合と同様です。

もっとも、同時廃止の場合と異なり、破産管財人との打ち合わせや債権者集会は、いずれも複数回になる可能性もあります。


また、破産管財人との打ち合わせは、比較的時間がかかるケースが多いです。

債権者集会も、債権者が参加した場合などある程度時間を要することもあります。

この点で時間や負担は、同時廃止の場合よりも大きいといえます。


同時廃止の場合の手続きの流れ

同時廃止の場合の手続きの流れ

破産手続きの開始

破産手続きを開始するには、まず「申立て」をして、「破産手続開始決定」がされます。


申立て

まずは、裁判所に対して「破産をしたい」と申立てを行わなければなりません。

先述した「破産申立までに準備する物」を裁判所に提出することになります。


この際、下記の2つの申立てを同時に行います。

  1. 破産手続開始の申立て
  2. 免責許可の申立て


1つ目の「破産手続開始の申立て」は、債権者のために財産等を清算する手続き(破産手続)の開始を求めるものです。

2つ目の「免責許可の申立て」は、債務者のために債務をなくす手続き(免責手続き)の開始を求めるものです。


破産手続開始決定

上記の「破産手続開始の申立て」に対して、裁判所は、破産手続きを開始する決定をします。

この決定は、裁判官が破産申立書を読んだり、本人あるいは申立て代理人から事情を聴取したりして、破産に至った事情を把握したうえで行われます。

そのため、自身で申立てをされる場合、ケースによっては裁判所で裁判官からの質問に答える(審尋:しんじん)必要があります。


弁護士が代理人として申立てをする場合には、審尋そのものがなかったり、破産申立書の提出時に代理人が裁判官と面接し、質問を受けたりします。

運用方法は裁判所によって変わりますし、代理人弁護士による申立てかどうかでも変わってきますから、注意が必要です。


同時廃止するのか、管財事件とするかの決定も、この時に行われます。


1.破産手続きの終了(同時廃止決定)

同時廃止の場合、債権者に清算すべき財産がないので、破産手続きを行う必要はありません。

そのため、破産手続きの開始決定と同時に、破産手続きの廃止(破産手続きを終わらせること)も決定されます。


この時点で1つ目の破産手続きは終了します。


2.免責手続き

ここからは2つ目の「免責許可の申立て」部分について解説していきます。


免責許可の申立て手続きは、「免責審尋」を行い、免責許可決定(または、免責不許可決定)が決まります。


免責審尋

免責の手続きは、まず、債務者の債務をなくす免責という決定を行うために、債権者の意見を聞いたり、債務者自身から事情を聴取したりします。

この、債務者から事情を聞く手続きを「免責審尋」といいます。


免責審尋は、代理人による申立てであったとしても、債務者本人が裁判所に出頭し、裁判官から直接質問を受けることが多いです。

事情を事細かに聞かれることはなく、破産申立書に間違いないかどうかなどの確認にとどまり、数分程度で終了する場合も多いですが、裁判所が免責の可否を判断するための大切な手続きです。


弁護士も同行することも多いですから、不安でしたら相談してみましょう。


免責許可決定 or 免責不許可決定

債権者の意見者免責審尋の結果をふまえ、裁判所は免責を許可するか否かの決定を行います。

免責許可が決定され、これが確定すれば、債務の支払責務が免除されることになります。


※裁判所の免責許可決定に対して、債権者が不服を申し立てる手続き(即時抗告)が用意されているため、すぐに確定するわけではありません。


以上が、同時廃止手続の大まかな流れとなります。


債務者本人が参加する手続きは?

これまで解説した同時廃止の手続きのなかで、債務者本人が参加しなければならないのは、「破産申立時の審尋」と「免責審尋」の2つです。


もっとも、弁護士に依頼して代理人が申立てを行う場合、破産申立時の審尋が行われないのが原則的な流れです。

そのため、実際には免責審尋のみ参加することになるのが多いです。


すでに述べたとおり、免責審尋が数分程度で終了する場合も多いですから、自身が直接対応しなければならない手続きは管財事件と比べて少なく、負担は小さくなります。






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