貿易赤字が長期化する恐れが高まっています。
3月の貿易収支は4124億円の赤字で、8カ月連続の赤字でした。
2021年度も5兆3749億円の赤字と2年ぶりに赤字に転落しました。
供給制約で輸出の回復が進まない中、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格は高止まりしています。
収支が赤字になりやすい傾向は当面続く可能性が高いです。
2021年度の貿易収支は5兆3749億円の赤字
2022年4月20日に財務省が発表した21年度の輸出額は、韓国向けの鉄鋼や中国向け半導体製造装置などが伸び、前年度比23.6%増の85兆8786億円でした。
一方で輸入額はエネルギー価格の上昇で33.3%増の91兆2534億円でした。
原粗油の輸入通関単価は円建てで88.8%上昇。貿易赤字額は過去4番目に大きくなりました。
貿易統計をもとに内閣府が試算した輸出数量指数の季節調整値(15年=100)をみると、3月は101.9でした。
新型コロナウイルス流行前の19年12月(103.1)を1.2%下回ります。
円安という追い風があるにもかかわらず、日本の輸出はコロナ後の世界経済の成長をうまく取り込めていません。
オランダ経済政策分析局がまとめた世界貿易数量指数は22年1月にコロナ前(19年12月)と比べ9.1%上昇。
同指数は20年4月に大きく落ち込みましたが、その後は回復が続いています。
自動車の輸出が振るわない
日本は主力の自動車輸出が伸びていません。
トヨタ自動車の21年4月~22年2月までの輸出台数は前年同期比0.5%増の155万5千台とほぼ横ばいでした。
ほかの大手でもマツダは1%減の54万台、日産自動車は17%減の21万台と振いません。
供給が需要に追いついていません。
新型コロナのオミクロン型感染拡大や、東南アジアからの部品調達難により国内工場で生産を増やせませんでした。
トヨタの国内生産は9、10月に半減し、21年4月~22年2月では前年同期比4%減の249万9千台でした。
22年度に入っても部品不足の状況は改善していません。
マツダは4月、中国のゼロコロナ政策による都市封鎖の影響で国内2工場の稼働を計8日間止めます。
トヨタも半導体不足などにより、5月の世界生産台数を約75万台とこれまでの計画から1割程度引き下げます。
ホンダの倉石誠司会長は「22年度も半導体不足とオミクロン型の一定の影響が残るが、年度後半に改善することを見込んでいる」と語っています。
ただ先行きの不透明感は強いです。
輸出拡大を実現するのは容易ではない
需要面でも不安があるります。
国際通貨基金(IMF)は19日に世界経済見通しを改定し、22年の実質成長率を3.6%と1月の前回予測から0.8ポイント引き下げました。
米国は0.3ポイント下げ3.7%に、ユーロ圏も1.1ポイント引き下げ2.8%としました。
海外経済の回復の遅れは日本の輸出の足かせとなりそうです。
中国も下振れリスクが強いです。
成長率見通しは0.4ポイント下げ4.4%と予測しました。
自動車の電動化需要などで輸出が好調だった工作機械メーカーからも「中国のゼロコロナ政策による混乱で、部品調達や出荷に影響が出る懸念がある」(自動旋盤大手のツガミ)との声が出ています。
大和総研の岸川和馬氏は「輸出は今後も伸び悩むだろう。とくに感染拡大が続く中国向けは振るわない可能性が高い」と話しています。
資源高を打ち消すだけの輸出拡大を実現するのは容易ではありません。
まとめ
貿易赤字が長期化する恐れが高まっています。
2021年度も5兆3749億円の赤字と2年ぶりに赤字に転落しました。
2022年4月20日に財務省が発表した21年度の輸出額は、韓国向けの鉄鋼や中国向け半導体製造装置などが伸び、前年度比23.6%増の85兆8786億円でした。
一方で輸入額はエネルギー価格の上昇で33.3%増の91兆2534億円でした。